
Photo by
denwa_uranai1
物陰に隠れたお菓子ボックスからの窃盗は誰の罪か?
古い実験で、ドーナッツを机の上において、一つ1ドルの値段をつけ、近くにお金を入れる箱を用意して無人販売していた業者がある。こうした業者は、当然ながら支払わずにドーナッツを食べる人々の数を数えることができる。
そして、目玉のシールを貼っておくとただでドーナッツを食べる人の数が減るみたいなんだ。
僕はこの実験を聞くたびに、目玉のシールがあればドーナッツを盗まなかった人の罪について考える。
つまり、目玉のシールを見て、誰かに見られているかもしれないと思ってドーナッツを盗むのをやめた
この人は本当に悪人なんだろうか。
逆に、何の工夫もなく容易に窃盗を可能にする仕組みが、犯人にドーナッツを盗ませたと言えないだろうか。
これは生活保護や高齢者医療についても同じことが言える。
医療保険を無駄遣いしてしまうのは、後期高齢者や生活保護受給者が慎みを知らないからなのだろうか。
少なくとも、外来受診のデータはそうではないことを示している。

70歳になった瞬間に彼らは医療制度を使えるだけ使おうとするメンタリティーに変質するんだろうか。
僕はそうは思わない。
これは単に、自己負担額が減ることで受診のハードルが下がるのだろう。
「医療制度が受診者のモラルを69歳から70歳になる時に変質させている」
と言い換えることができる。
つまり、悪いのは生活保護受給者や後期高齢者ではなく、生活保護における医療費の補助制度や、後期高齢者における自己負担割合が1割かつ格安の高額療養費だ、ということだ。