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健康な人が新型コロナウイルスに感染すると、1年以上認知機能が低下するが、それを自覚できない。

2024年10月に出版予定のLancet論文が衝撃的だったので簡単に要約する。

要点


・34人の18歳から30歳の健康なボランティアで、ワクチン未接種もしくは感染歴がない人に、ウイルス培養液を鼻腔に接種することで、新型コロナウイルス感染症に感染させた。(武漢型)

・1人が無症状で、他は軽症だった。

感染後、1日2回PCR検査を受けた。PCR検査で2回連続して陽性だった群(18人)を持続感染群と定義した。残りの半数は非感染者と定義された(16人)

・検査前と、検査後30日、60日後、180日後、270日後、360日後に追加調査を受けた。

・持続感染群は、接種後30日までウイルス排出が持続した。

・認知機能障害は、物体の即時記憶、遅延再生、単純反応時間、ロンドン塔などだった。

・複合的な認知機能でも、統計学的に有意な差があった。

・これらは、記憶と遂行機能に関わる部位である。

・これらの結果は、感染後360日の時点でも持続していた。

・誰も主観的な認知機能障害を報告しなかった。

・新型コロナウイルスに暴露すると、半数が持続的な感染を引き起こす。

・持続的な感染を引き起こした群では、複合的な認知機能障害が1年以上持続するが、それを自覚できない。

この論文から示唆されること

ワクチン未接種で新型コロナウイルスに感染すると、若くて健康であっても、50%くらいで認知機能が低下して、それが1年以上続く。


新型コロナウイルス感染症による認知機能低下は何を起こすか



ワクチンを接種していれば、とかそういう議論はあるけど、現行のワクチンはどんどん増える変異株にはあまり効果がないから、多分10%から40%くらいで認知機能低下は起きるんじゃないか。

そして認知機能の低下は自覚できない。
コロナクラスタが職場で発生した後、なんとなく半分くらいの社員が忘れっぽくなって、仕事の段取りが組めなくなっている、ということは十分ありそうだ。

別の研究でも、4-12週で症状が改善した人はIQ3低下、12週以上持続でIQ6低下、集中治療室入室でIQ9低下、再感染でIQ2低下するという論文がある。
また、認知機能低下は少なくとも3年持続するというノルウェーの報告もある。

集団免疫は達成できない

ただ、この変異株の移り変わりだと年間1回新型コロナウイルス感染症を発症するのは多分、普通のことだ。

しかも感染後にT細胞が老化するという報告もある。
免疫の主体であるT細胞が、減少し、疲弊するのだ。
HIVと共通した免疫不全を引き起こす要因があるという報告もある。

つまり、感染を繰り返すごとにワクチンの効果が不十分になり、再感染しやすくなる、ということが示唆される。
急速に変異し、免疫を障害するウイルスでは、集団免疫達成は不可能だ。子免疫を障害するウイルスを例に出せば、1983年に発見されて41年が経つが、HIVの集団免疫はいまだに達成されていない。


繰り返しCOVID=19を発症することの帰結


新型コロナウイルスの蔓延に何の対処もとられなければ、1年に3回の感染を繰り返すこともありそうである。

そうすれば軽症であっても、IQは1年で6、10年で60減ることになる。

優秀な大学生(IQ 120)が、10年後、会社の中堅になるころには、IQが60まで低下して単純作業しかできなくなっている、ということがありえる。

感染拡大を妨げる、様々なレベルでの戦略

幸い日本は2019年の報告から感染者数をかなり抑え込んでいて、感染が蔓延するようになったのは2023年頃からだ。
だから僕らには、海外の流行状況や長期的影響を見て、行動を決める自由度がある。

これからは、諸外国の報告(特にデータをオープンに出す傾向のある、米国、英国、初期に感染対策を実施せず集団免疫を目指したスウェーデンなど)を見ながら、どうすべきかを決めていくことになるだろう。

とはいえ、ロックダウンや蔓延防止策は現実的ではないだろう。

社会で継続可能な感染予防戦略

・新規ワクチンの迅速な開発と広範な接種の推進

・ユニバーサルマスク戦略

職場・共同体レベルで実施可能な感染予防戦略

・教室やオフィスへの空気清浄機の導入

・教室やオフィスの換気

・リモートワークの推進

・感染後、しっかり休みを取る文化の醸成(これは後遺症予防にもつながる)

個人でできる対策

生理食塩水による鼻うがい(味覚嗅覚障害の発症率を下げるという報告がある。なお、味覚嗅覚障害はlong COVIDの発症率と関連している)

・マスク着用、ときにN95マスク

・ワクチンの半年から1年おきの接種


感染対策の意義

僕は対策から意図的に移動削減やロックダウンを除いた。経済への悪影響が大きいものだ。ここに述べたものは社会への悪影響が限定的なものだ。

社会で対策を行う利点


世界中の知的産業の集積地になるポテンシャルが生まれる。
つまり、日本が社会全体の知能の平均レベルが高い地域になれる可能性がある。そうすれば、日本でしか作れない複雑な製品やソフトウェア、というものが出てくるだろう。他の国で代替品が作れないのであれば、値段を下げる必要はないし、円高の悪影響も受けづらい。
 知的労働者は集まることでイノベーションを生み出す。そして一般的に知的労働者は治安を悪化させない。
ついでに言えば生産性が高ければ、社会保障制度も縮小の程度を減らせる。


共同体レベルの利点

会社の業績が相対的に高まる。

COVID-19に感染した回数が少ないほど、記憶力と遂行機能が保たれるから、連絡ミスが減り、事故が減り、業務がスムーズに遂行できる可能性が高まる。どれも損失を減らし、利益を増やすものだ。

進学成績が上がる。

記憶力が損なわれなければ、試験では有利だ。特に文系科目ではそうだ。
遂行機能は複雑な物事を順序だてて正確に実行する能力で、つまり制限時間内に数学や物理の問題を解く能力に繋がる。
 COVID-19予防は、受験のゲームチェンジャーになりえるだろうと考えている。

個人レベル

業務の成績が上がる。
結局勤務の評価は相対評価なので、自分が下がらなければ相対的な順位は上がる。

学校の成績が上がる。
これも同様だ。感染対策をして、いつも通りにしているだけで、周りの成績が落ちていくなら、自分の成績は上がる。特別な努力をする必要もない。

対策の利益は層別構造を持つ

ただ、個人レベルの利益は、共同体でしっかり対策されると薄まるし、共同体の利益は、社会全体で対策されると乏しくなる。それでも社会全体で対策が本当に可能なら、日本全体の生産性向上という計り知れない利益を確保できるポテンシャルがあると思う。

やれる人がやって、なんか社会の雰囲気が変わってきたらちょっとずつ広めよう

いまのところは個人レベルでしっかり1年くらい対策して、なんか差がついてるな?と周りが気づいたところで種明かしをして、集団で対策しているところが強いな?というのがあと2年くらいするとわかってくると思うから、そしたら社会全体で対策しましょうよと促すのがいいんじゃないかな。

こういうのって、急に論文とか持ち出されてもわからないことが多いから、実感が生まれた時にすっと証拠を持ち出せると一番強いんだ。
まあ、なんで早く言わなかったんだ、って言われるかもしれないけど、その時は、聞かれなかったので…と答えよう。

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