見出し画像

有権者の半数が生活保護受給者になった世界を考える、もしくは民主主義のバグ

氷河期世代は果たして年金で暮らしていけるのか、と疑問がある。
50代独身の貯蓄額の中央値は80万円持ち家率は33.6%である。
そして、50歳時の未婚率は男性 28.25%、女性18.81%である(2020年)

ここから何が言えるかというと
50代の独身者は同世代人口の25%くらいはいる。

このうち1/2くらいは、貯金が乏しくて、自宅も持っていない。
また、良いデータがみつからないが、少なからぬ割合が非正規雇用である。

この人たちは一回病気になって一か月入院したら貯金が尽きて家賃が払えなくなり仕事も失う可能性がある。

つまり、退院前に生活保護になる可能性がそこそこある。

ということだ。

ここで生活保護受給者が極めて多い国家を考えてみよう。
これは架空の国家だ。
生活保護受給者の割合が50%を超えた時、民主主義は変質する。
なにしろ国民の50%が生活保護だから、この立場を優遇する政策を掲げる政治家は、国民の50%から得票できる可能性が高い。
(それに、仕事をあまりしてないから投票に行きやすいし、政治活動も行いやすい)
一方、生活保護を縮小したり受給要件を厳しくする政治家は、50%から批判を受ける。
つまり、政治家としては国民に選挙権がある限り、生活保護を拡大する以外の選択肢を選んで当選し続けることが困難になる。

しかし、石油だってリン鉱石だっていつかは尽きる。
そうすれば、国民の半数(ひょっとしたら、もっと多いかもしれない)が路頭に迷うことになる。

こんなことが実際にあった。
ナウルという島国では、肥料として有用なリン鉱石の採掘が可能で、これにより1966年に自治以降、住民議会による政治が行われた。
医療費、学費、水道、光熱費は無料で住居も立てられ、公務員10%、無職90%という奇跡の国が誕生した。しかしリン鉱石が枯渇し、最終的にオーストラリアへの難民を受け止めることで財政援助を受けているようだ。

そして、多くの産油国は王室が統治している。
これは故無きことでなく、産油国は石油という、採掘に大して人的資源が必要ない手段でお金を稼ぎ輸入品を手に入れることができてしまうので、民主主義を導入すると国家に収入を依存する人が増えて、その人向けの政策を掲げる政治家が増え、国家の資源を使い果たしてしまうからだ。

実は日本も、これに近い状況が生まれている。
日本の有権者数は約1億人だが
2022年時点で生活保護受給者数は204万人、高齢者が多いことから、概ね選挙権ありと考えると2%が生活保護、ということになる。これは特に選挙に大きな影響を与える数字ではない。
しかし、年金受給者を65歳以上と考えると、この人口は3625万人
つまり、有権者のだいたい36%が、国家からお金をもらって、それを元に生活しているということになる。

そして、今の50代の窮状を見ると、彼らもこのお金をあてにして人生設計をしている可能性が高い。つまり、ここに50歳から64歳までが人口の21.2%にあたるので、この集団が年金をあてにする群として加わると、57.2%が年金制度の存続を強く望むことになり、この制度を民主的に縮小しようとすることは、最早政治的に困難となる。

もちろんナウルとは状況が違う。
しかし、今回立憲民主党が選挙で見せたむきだしの高齢者優遇は、高齢化が進む今後ますます政権をとるための有効な政治手法になっていく。高齢化の進み具合は都道府県によって異なる

しかし、民主主義は、年金制度、生活保護など政府に収入を依存する人間の割合が一定を超えると、バラマキのスイッチが入って止まらなくなる可能性には留意すべきだ。


いいなと思ったら応援しよう!