激しきこと過ぎたる小説
🖋趣旨
プロでもないワナビが創作論の類を書くなというプロの方もおられますけれども10年をゆうに超える長きにわたってワナビのままのこのわたしが左様でございますかと申し上げていては永遠に創作に関する文章は書けないだろうと思いますので書かせていただきます
そしてこれは創作論ではなく批評です
それもひとさまのお書きになった小説への批評ではなくわたし自身の小説への批評、更に申し上げれば『評する』部分はなくただひたすら批判のみの文章です
なぜか
今書いている小説をこれまでの小説に倍した意義ある小説とするためです
🖋🖋自己批判
悪逆女王
わたしが書いた小説の中では最も描写が過激と思います。甘さのカケラもなくし、『背中に不動明王の刺青を入れた暴力団組長の長女で高校生』という設定が現実離れしていると思われるでしょうがイコールでなくともこれに近い境遇の人間は事実存在するでしょうから暴力の描写もできる限りリアルにしようと努力したつもりでしたがまだ足りなかったと反省しています。
「主人公の物言いにリアリティがない」
そういうご意見を賜りました
ヒロインの紫炎は語尾に「クソが」をつける女子ではあり、追い込まれた境遇の人間はそういう物言いをする現実例、たとえば介護を押し付けられた人間がやり場のない怒りを態度を持って表す際に暴力に訴えずになんとか済ますために「クソが」とか「バカ」とかいう語尾をつけている卑近な実例を実際にこの目で観たものですからリアリティという観点からそうしたのですが、読者さまのことを考えない筆致だったと反省しています。
クソが、ではない静かな筆致でよりよい怒りと憎悪と諦観を表す物言いを模索しているところです。
ある少女のブログ
いじめと自殺がテーマの中編です。
筆致は静かに淡々と、途中までは主人公である高校生女子のブログの語り口のような形で進みます。
登場人物も高校生女子、その同級生の高校生男子、その後に登場するもうひとりの主要キャラも全員静かな行い、静かな語り口で、わたしはそういう言葉を決して使わないようにしているのですが、『エモい』という印象を持ってくださる方が多かったのでしょう。
小説の中で起こる現実はとてもつらいものであるにもかかわらず
お読みくださる方の反応としては一番コールアンドレスポンスのような読み方をしていただいたと思っています。
ただ、この小説には明確な目的がありました
いじめの根絶 です
この小説を書いた夏、夏休み最後の日に自殺する子をなんとかしてなくしたいという思いで夏の終わり少し前にある小説投稿サイトで完結させたのですが
8月31日
胸が苦しくて苦しくてその子とわたしはなんのつながりもないその子の自らの死をつたえるニュースによって
わたしの小説の無力さを思い知らされました
そうして今現在もいじめは根絶されていません
わたしの小説は負け続けているのです
シーズ・ザ・ロックンロール・バンド
主人公は14歳の中学生女子
その子を中心に『世界一のロックンロール・バンド』を作るべく力なきレーベルの女性プロデューサーが無き力の限りを尽くす小説です。
ロックンロールは本来反骨の芸術です
時代が締め付けに向かえば扉を開くための曲を奏で
反対に垂れ流しの方向に向かえばストイックさを志向する
聴衆が数千万、今の世では数十億に達しようとも
『これでよい』というところに収まるようなスタイルは既にロックンロールではなく
死に体です
そういう意識を持って書いたつもりだったのですが、徹底しきれなかったように思います
ヒロインたちを肯定するものとしていわゆるロックを奏でる人間の中での『大御所』的な権威を描いてしまった部分が一箇所だけありました。
けれどもその一箇所がエンディングに向けてとても重要なパーツであったため、再生回数が数億回で嬉々とするようなそういう甘さを残してしまいました。
何にたとえればよいかわからないのですが、おそらくゴッホが生前は人生も落ちに落ちた境遇でココロを病み、絵もまったく世に知られることなく生涯を終え、死後にようやくそれを食い物にするかのように価値を見出したひとたちのマネーゲームに晒されるようなそういう『ホンモノの芸術』として甘っちょろさを残さずに徹底すべきだったと反省しています。
🖋🖋🖋これでよいということはない
そもそも『よい』とも言われていないわたしの小説ですからひたすらよりよきものを目指して書き進めるしかありませんので、今ちょうど『ジャンププラス原作大賞』に先般の「悪逆女王」などを応募しておりますけれども、それも反省材料として踏まえた小説を書いております。
更に『群像新人文学賞』に応募して選考中の小説に関する反省も踏まえた上で書き進めております。
エピソードの一節だけ少しご覧いただけますでしょうか。エピソードのサブタイトルは
『いせかいなどいらぬわ』
です。
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ホンモノの地獄
「絵師さまはわたしの観た『ホンモノの地獄』は観なさらぬが この世の地獄は観て歩いてきなさった ひとを助け生き返るに倍した苦に負け痛みに負け死ぬひとたちを観なさって旅を続けてきなさった 飢饉も戦も現実ぞ 食い物も飲み物もなくなりて人肉を喰らう共食いも現実ぞ 実際に魔神が取り掛かって悪行をさしておる現実も死臭に鼻がひんまがるようなホンモノの地獄もあるにそこから視線をあさっての方向にやりよってからに」
おばあちゃんがめずらしく長いもの言いになっている
肝心の部分ということだろう
「娯楽ですらも夢想の世界にかかずらわる暇などないのじゃ」
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最後までお読みくださり、ありがとうございました。