2022年アメリカ中間選挙の情勢(10月21日)
こんにちは。雪だるま@選挙です。この記事では、11月8日(火曜日)に行われるアメリカ中間選挙の情勢を分析していきます。中間選挙まであと20日を切り、与党・民主党と野党・共和党の攻防も激しさを増しています。
中間選挙はバイデン政権にとっては2年間の「審判」となる選挙で、下院435議席、上院35議席が争われます。いずれも現在は民主党が多数派で、選挙後も維持できるかが焦点です。
バイデン大統領の支持率と“政党支持率”
バイデン大統領の支持率
バイデン大統領の支持率は、10月21日時点で次のようになっています。
バイデン大統領の支持率は、8月以降大きく回復しました。6月末に米最高裁が全米での中絶権を保障していた「ロー対ウェイド判決」を覆したことで、中絶権の保障を主張する民主党の支持率は7月以降回復傾向となりました。
この影響で、記録的インフレに苦しんでいたバイデン大統領の支持率も回復し始め、8月中旬以降にはインフレ抑制法の成立、奨学金返済免除などで民主党支持層からの支持率を回復させました。
一方、中絶問題や奨学金返済免除はいずれも民主党支持のリベラル層向けの政策であり、インフレ抑制法への評価も党派を超えたものにはなっていません。そのため支持の拡大には限界があり、9月以降は42%前後で上げ止まっています。
政党支持率(Generic ballot)
民主党と共和党の「政党支持率」に対応する指標として、一般投票(Genric ballot)があります。一般投票とは、世論調査で「(議会選挙で)民主党候補、あるいは共和党候補のどちらに投票するか」を問う調査で、特に定数がすべて改選される下院(小選挙区制、435議席)の選挙結果と関連があります。
一般投票の状況は、10月21日時点で次のようになっています。
共和党の支持率が、民主党の支持率を0.1ポイント上回っています。9月末から共和党の反転攻勢が始まり、共和党が支持率で民主党を逆転しました。民主党の支持率は横ばいであるため、これは共和党の勢いが増していると捉えるのが適切だと思われます。
9月末には、共和党が中間選挙に向けた公約「アメリカへの約束」(Commitment to America)を発表しました。共和党は争点を有利な経済や治安対策に引き戻すことを狙っていますが、この戦略がある程度成功していると考えられます。
上下両院の情勢
この反転攻勢により、上下両院の情勢も大きく変化しています。詳しくはこの後で分析していきますが、下院は共和党が過半数奪還の見通し、上院は多数派を巡って民主・共和両党が激しい攻防を続けています。
Generic ballot と関連が大きい下院の情勢から分析します。下院では、定数435議席がすべて改選されます。現在は民主党が221議席、共和党が212議席、欠員が2議席となっており、民主党が過半数を確保しています。
民主党は、支持率で2~3ポイント上回れば過半数を維持できると考えられていますが、民主党のリードは0.3ポイントに留まっています。
さらには現在共和党が反転攻勢に出ている状況であることからも、民主党の過半数維持は厳しく、共和党が下院の過半数を奪還する可能性が高くなっています。議席数は共和党が225議席程度~230議席台後半、民主党が190議席台後半から210議席程度になると考えています。
続いて上院情勢を見ていきます。上院の定数は100議席で、現在は民主党と共和党が50議席ずつを分け合っています。上院議長を兼ねる副大統領が民主党のカマラ・ハリス氏であることから、民主党が多数派となっています。今回の選挙では、上院は全体の1/3にあたる35議席が改選されます。
上院の激戦州でも、各地で共和党が猛追しています。ネバダ州、ウィスコンシン州といった激戦州で共和党候補が目立った追い上げを見せているほか、民主党優位と見られていたペンシルベニア州やアリゾナ州でも共和党候補が支持率を伸ばしています。
接戦州のうちウィスコンシン州やオハイオ州は共和党が勝利する見通しを立てつつあり、ネバダ州も共和党が上回っている可能性があります。
民主党はジョージア州などの接戦州で勝利することと、リードが縮小しているペンシルベニア州やアリゾナ州を守ることを両立する必要があり、民主党と共和党の上院過半数を巡る激しい攻防が続くことになります。
知事選の情勢
中間選挙では、各州の知事選挙も同時に行われます。
激戦州のネバダ州や、民主党が分裂選挙となっているオレゴン州では共和党が勝利する可能性があります。一方で、共和党地盤のオクラホマ州が接戦になっているという調査が発表されていることには留意が必要です。
今後の展開は
目下の関心は、共和党の反転攻勢がいつまで続くのかです。共和党の反転攻勢が長引くほど、民主党にとっては厳しい情勢となります。
この反転攻勢は公約の発表を機に、共和党支持層の引き締めに成功し、さらに態度を決めていなかった無党派層を大きく引き付けたことが要因だと筆者は分析しています。
ただし、中絶問題によって無党派層の女性を中心に共和党への支持が落ち込んでいること、態度未定層の割合が少なくなっていることを考えると、この反転攻勢が選挙当日まで続く可能性は高くなく、ある時点で情勢は膠着状態に入ると予測しています。
中間選挙の争点、両党の戦略については次の記事をご覧ください。
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