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米大統領選まで1年 再び対決する「バイデンvs.トランプ」その情勢は

 こんにちは。雪だるま@選挙です。この記事では、2024年11月5日に実施されるアメリカ大統領選挙に向けて、現在の情勢を見通していきます。

 民主党からはバイデン大統領、共和党からはトランプ前大統領が出馬を表明しています。民主党はバイデン大統領が指名される見通しで、共和党は予備選を経てトランプ前大統領が指名される可能性が高まっています。

 この記事では、バイデン大統領とトランプ前大統領が再び対決するという想定で、来年11月の本選挙について分析します。


バイデンvs.トランプ 世論の反応は

前回より弱体化した支持基盤

 前回2020年の大統領選では、バイデン氏もトランプ氏も党内から強い支持を受けていました。次に示すのは、2020年に行われた世論調査の結果です。

 両氏とも、党内の好感度は9割を超えていることがわかります。2020年の大統領選は両党とも盤石の支持基盤を築いた総力戦で、投票した有権者の数も史上最高の水準となりました。
 これに対し、今年10月に行われた世論調査は、次のような結果となっています。

 3年前と比較すると、バイデン氏もトランプ氏も、党内からの支持が10ポイント程度低くなっています。求心力が低下し、無党派層を争う以前に党内の支持基盤が一部溶けていることが示されています。

 なぜ支持基盤は弱体化したのでしょうか。トランプ氏は、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件をはじめ、4度にわたる起訴など、大統領としての適性に疑問符がつけられています。
 また、トランプ氏が大統領に就任して以来、共和党は2018年、20年、22年と3度にわたって重要な国政選挙で連敗しています。このような状況を受け、トランプ政権を支持していた共和党支持者の一部も世代交代を求め、トランプ氏から離反しています。

 トランプ氏から離反した共和党支持者が一定数いることは、「反トランプ」の旗色を鮮明にするクリスティ元知事が選挙活動を継続できていることにも表れています。

 バイデン氏の支持率低下は、1つ目の要因として年齢が挙げられます。アメリカ大統領として最も高齢のバイデン氏は今年11月で81歳を迎え、2期目に入ってさらに大統領職を4年務めることには懸念が出ています。

 民主党内でも、半数以上がバイデン氏の年齢を懸念していると答えています。バイデン氏を候補としては支持しつつも、他の「より良い候補」を待望する声は、民主党内でも高まっています。

 さらに、バイデン政権の政策を支持しない民主党員も増加しています。経済やインフレの状況、南部国境から流入する移民をめぐる問題でもバイデン政権は厳しい評価を受けていて、党内で中道派と左派のバランスを保つことも難しくなっています。

厳しい無党派層からの評価

 支持基盤が弱体化する中、無党派層は2020年と同じ構図の対決をどのように見ているのでしょうか。先ほどの世論調査で、無党派層が両氏をどのように評価しているかに注目してみます。

 無党派層の支持動向からは、バイデン氏もトランプ氏も嫌われていることがわかります。このような情勢を背景として、独立系候補のロバート・ケネディ氏に支持が流れている調査結果も出ています。

 ケネディ氏が実際の選挙でどこまで影響を与えるかは、そもそも独立系候補は各州で候補者の名簿に載せるプロセスを通る必要があることや、民主・共和両党から厳しく批判されていることも踏まえると、未知数です。
 しかし、ケネディ氏に集まる一定の支持は、無党派層を中心にバイデン、トランプ両氏への強い不満が溜まっていることを示しています。

選挙まで1年 現在の情勢は

イスラエル=パレスチナ紛争の影響

 10月上旬に、ハマスがイスラエル側に越境攻撃したことを機に、パレスチナ南部のガザ地区では連日衝突が続いています。バイデン政権は、パレスチナ側への人道支援などは実施する姿勢を見せつつも、基本的にはイスラエルを支持する方針を維持しています。

 このバイデン政権の方針を、世論はどのように捉えているのでしょうか。次に示すのは、バイデン政権の戦争対応に賛成するかどうか尋ねた調査の結果です。

 全体では反対が大きく上回っていますが、民主党支持層の中でも賛成51%、反対41%と拮抗しています。「身内」の民主党内から反発が出ている理由は、民主党支持層には「親パレスチナ」とみられる勢力が一定数いるためです。

 イスラエルとパレスチナの「どちらにより共感するか」を尋ねた調査では、次のような結果となりました。

 共和党支持層では、圧倒的にイスラエル支持が強いのに対し、民主党支持層では拮抗する結果となりました。

 世代別で見ると、10代~20代の若年層でパレスチナへの共感が強いことがわかります。また人種でみると、黒人の間ではイスラエルへの共感が極めて低い水準になっていることがわかります。

 この結果からは、バイデン政権の支持層の一角を占め、強い民主党支持層だった若年層・黒人層でイスラエルへの反発が強まっていることが示されています。
 バイデン政権はイスラエル支持の原則を貫いていますが、若年層・黒人層が反発し、一部は支持層から離脱しているとみられます。バイデン政権の支持率は就任以来最低の水準に落ち込んでいますが、イスラエル=パレスチナ紛争が影響を与えているとみられます。

相次ぎ“トランプ優勢”に その背景

 選挙まで1年となり、各社の世論調査が相次いで公表されました。全体の傾向として、激戦州ではトランプ優勢の結果となっていて、日本のメディアでも報道されています。

 ここでは、エマーソン大学が公表した世論調査を分析し、トランプ優勢の背景を見ていきます。
 まず、エマーソン大学の世論調査では、激戦6州について次のような結果となりました。

 バイデン氏が上回っているのはミシガン州のみで、その他の5州ではトランプ氏が上回っています。
 この背景には、バイデン氏の支持率と同じく、民主党内から一部の支持者(特に黒人層や若年層)が離脱していることが挙げられます。

 州別の人口構成を見ていきます。今回の世論調査では、1000人のサンプルのうち人種別の構成は次のようになっています。

 ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州のラストベルト3州は、白人中心の州で他の人種グループの影響力が小さく、また高齢化が進んでいるため若年層の割合が低くなっています。
 イスラエル=パレスチナ紛争でバイデン支持から離脱した黒人層・若年層の影響が小さく、バイデン氏とトランプ氏が接戦となっています。

 これに対し、ネバダ州、ジョージア州の2州は、白人の割合が比較的低く人種的に多様であり、さらに若年層の割合も高いため、非白人層や若年層
の政治的な影響力が高まっています。
 この2州では、バイデン氏に対し、トランプ氏が大きくリードしています。特に、ジョージア州は黒人が3割を占める州で、黒人の支持離れがバイデン氏の苦戦に大きく影響しています。

 激戦州の世論調査としては異例の優勢となっていますが、これは「トランプ氏が支持を得ている」というよりも、むしろ「バイデン氏の支持層が崩れている」と評価すべきでしょう。

 これに対し、もちろん他の要因も考えられます。アリゾナ州とネバダ州では、人口構成上は顕著な違いが見られないものの、異なった結果となっています。
 明確な理由を分析するには他の調査などを待つ必要がありますが、ネバダ州では重視する争点として「犯罪対策」が上がっています。ネバダ州では、ラスベガス郊外に居住するヒスパニック系住民の間で、治安の悪化を懸念する声が高く、ネバダ州では特有の要因としてバイデン氏の支持率が下がっている可能性があります。

 このように、個別の州の状況を比較すると、広範な政治的争点や人種・年代以外の人口構成の影響が見えてきますが、全体のトレンドとして観測されている直近の「トランプ優勢」はイスラエル=パレスチナ紛争で、民主党支持層の一部が離脱したためだとみられます。

今後の見通し

 選挙まで1年となる中、現状はトランプ氏が優勢に選挙戦を進めています。しかし、この状況が今後も続くかは不透明です。
 ここまで分析したように、トランプ優勢の背景はイスラエル=パレスチナ紛争という特殊な要因の影響です。来年の選挙まで紛争の影響が継続するとは考えにくく、どこかで状況は通常に戻るでしょう。

 特殊要因を排除した「通常の」状況を推測すると、バイデン氏とトランプ氏は接戦を続けているといえます。比較的イスラエル=パレスチナ紛争の影響の小さかったラストベルト3州の情勢をみると、両氏は接戦となっています。
 紛争の影響が時間経過とともに小さくなると、状況は一旦接戦に戻る可能性が高いと考えられます。

 バイデン氏、トランプ氏の支持の固さについても分析する必要があるでしょう。次に示すのは、バイデン氏とトランプ氏の支持率推移です。

バイデン大統領の支持率(FiveThirtyEight集計)
トランプ前大統領の好感度(FiveThirtyEight集計)

 バイデン氏の支持率が、2022年夏以降でも、最大5~6ポイント上下しているのに対し、トランプ氏の支持率は40%前後でほとんど変化していません。
 NBCの世論調査でも、トランプ氏の支持率が一定の水準を保っているのに対し、バイデン氏の支持率が直近数ヶ月で減少していることがわかります。

 トランプ氏への評価は政界進出からの約8年でほぼ定まり、起訴や裁判などは好感度にもほとんど影響していません。今後も、トランプ氏をめぐる動向で支持態度を変更する人は少数だとみられています。
 これに対し、バイデン大統領の支持率は、現職であることも作用し、経済状況や政策動向によって変動の余地が大きくなっています。

 バイデン大統領が取り得る支持率の最大値は、トランプ氏の想定される支持率を上回っていますが、一方でバイデン氏の支持率がイスラエル=パレスチナ紛争のような要因で下落すると、トランプ氏の支持率を下回る状況になります。

 来年11月の大統領選時に、バイデン氏をめぐる政治状況が追い風なのか、逆風なのかを今から見通すことはできませんが、勝敗はバイデン氏が支持層をどこまで動員できるかによって決まる可能性が高いといえます。

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