【2024年大統領選】予備選まで1年 民主・共和両党の支持動向(2023年2月)
こんにちは。雪だるま@選挙です。この記事では、スタートまで1年となった2024年の予備選に向け、現在の民主・共和両党ではどの候補がどのような支持を獲得しているのかについて、世論調査をベースに分析していきます。
これまでに出馬を正式に表明した候補は、共和党のトランプ前大統領のみです。その他、出馬を検討したり、待望論が出ている候補については次の記事で詳しくまとめています。
この記事では、上記の内容をベースに、実際の予備選を想定した世論調査でどのような支持動向が見られるか、民主・共和両党の党内世論について分析していきます。
民主党予備選
民主党予備選は、現職のバイデン大統領が出馬した場合は、例外的な局面(バイデン氏の支持率が急落して党内からも交代を求める声が高まるなど)を除き、挑戦者が現れずにバイデン氏が指名候補となる見通しです。
この記事では、バイデン氏が不出馬だった場合、あるいはバイデン氏の対抗馬を模索せざるを得なくなった場合を想定し、他の候補に対する支持動向がどのように働くかを分析します。
ハリス副大統領 根強い党内人気も本選に不安
バイデン氏の後継・代替候補としては、ハリス副大統領が最有力です。2020年の予備選でも有力候補として浮上し、バイデン政権下でもホワイトハウスでバイデン氏を支え続けています。
ハリス副大統領が民主党予備選で最大の強みとするのは、黒人からの圧倒的な支持です。黒人の9割程度は民主党支持で、党内予備選では支持者の数で大きな影響力を持っています。
ハリス副大統領は、黒人とインド系移民にルーツを持ち、黒人からの支持率は高い水準です。バイデン大統領、サンダース上院議員など複数回出馬した経験をもつ大物政治家と並ぶ水準で、ライバルのブティジェッジ氏やニューサム氏を上回っています。
ハリス副大統領は、黒人からの強い支持を背景に民主党内で本命視されていますが、本選まで見据えると不安要素が見えてきます。
以下に示すのは、民主党と無党派層におけるバイデン大統領とハリス副大統領の好感度比較です。ハリス副大統領は民主党支持層、無党派層ともにバイデン大統領と比較しても支持率が低い水準です。
特に、民主党支持層からの好感度が7割に留まっているのは懸念すべきことだと思われます。
岩盤支持層からの強固な支持を背景に、予備選レベルでは優位な戦いを進める見通しですが、本選を射程に入れると一転して「支持の広がりが限定的」という弱点が浮かび上がります。
ブティジェッジ氏 厳しい予備選、白人からの強い人気
ブティジェッジ運輸長官は、2020年の予備選にも出馬しました。2020年からの一貫した傾向ですが、ブティジェッジ氏は白人の支持層から強い人気を得ていますが、黒人層からの支持率は極端に低くなっています。
以下に示すのが、ブティジェッジ氏を含む主要4候補の白人・黒人からの支持率です。黒人の支持率が極端に低いのが読み取れますが、白人からは比較的高い支持を得ています。
白人の割合が9割を占めるニューハンプシャー州では、ブティジェッジ氏がバイデン大統領と戦っても勝利するという世論調査結果が示されています。ただし、サンプル数が346人で少なく、誤差が大きいことには注意が必要です。
また、ブティジェッジ氏はハリス副大統領に対し、無党派層でリードしていることも分かります。
民主党の岩盤支持層である黒人では極端に支持が弱い傾向ですが、本選で主戦場となる無党派層や白人からの支持が比較的強く、実際に指名されればハリス副大統領よりも「本選で勝てる候補」になる可能性があります。
予備選の日程変更 その影響は
ここからは、実際の予備選のスケジュールをもとに、どのような指名争いが展開されるかを探ります。まず、民主党は2024年から予備選の日程を大幅に変更する見通しで、その影響について考えていきます。
2020年は、「アイオワ州→ニューハンプシャー州→ネバダ州→サウスカロライナ州」の4州で予備選(または党員集会)が行われ、スーパーチューズデーを迎えました。
民主党は、2024年には「サウスカロライナ州→ニューハンプシャー州・ネバダ州(同時)→ジョージア州→ミシガン州」の5州で予備選(または党員集会)を実施し、スーパーチューズデーに進む案を検討しています。
この結果、人種では「白人の影響が低下し、黒人やヒスパニックの影響が上昇する」影響がある見通しです。アイオワ州やニューハンプシャー州は白人が多数を占め、サウスカロライナ州やジョージア州では黒人の割合が比較的高くなっています。ネバダ州はヒスパニック系の割合が高い州です。
ハリス副大統領は、出馬すれば最初のサウスカロライナ州で圧勝する見通しです。また、4番目のジョージア州でも勝利する公算が大きいでしょう。
これに対して、ブティジェッジ氏にこの日程変更は打撃となり得ます。アイオワ州から始まっていれば、白人からの支持を生かして勝利できた可能性が高かったですが、日程変更後はいきなり敗北から始まることになります。
ブティジェッジ氏が勢いをつけた状態でスーパーチューズデーに臨めるかは、ミシガン州の結果に左右されるでしょう。ミシガン州は本選でも最激戦州ですが、白人労働者からの支持を得られれば勝利することも可能です。
ミシガン州のホイットマー知事が出馬すれば、地元選出の知事という背景から勝利する可能性が高く、ブティジェッジ氏にとっては大きな打撃となります。
新星の登場は ニューサム知事の支持基盤
ハリス副大統領、ブティジェッジ氏ともに大きな弱点を抱える中、民主党予備選でカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が浮上する可能性に注目します。
ニューサム知事は知名度が全国的になったとは言い切れず、支持率も高くないため、支持基盤を推定することは容易ではありません。ここでは、世論調査の結果からいくつかの可能性を挙げていきます。
まず、カリフォルニア州を中心とした西部での人気が高いと考えられます。昨年夏に行われた世論調査では、地元・カリフォルニア州の予備選挙そ想定した設問で首位に立っています。
また、昨年11月に全国規模で行われた世論調査では、カリフォルニア州を含む西部で支持が高くなっています。中西部、北東部、南部での支持率は5%未満に留まっているのに対し、西部での支持率は13.0%に上っています。
また、アイオワ州(中西部)、ニューハンプシャー州(北東部)、ネバダ州(西部)、サウスカロライナ州(南部)の4州を挙げて「どの州で最初の予備選(党員集会)を実施すべきか」と尋ねた設問の回答者では、西部ネバダ州と答えた人の中で支持率が突出する傾向が見られます。
また、カリフォルニア州に多く住むアジア系有権者からの支持も高い傾向があります。このように、知事の強みを生かし地元周辺から支持を固める戦略を取ることになるとみられます。
共和党予備選
共和党の予備選は、既に出馬を表明しているトランプ前大統領、中間選挙以降急速に支持を伸ばしてきたデサンティス知事(フロリダ州)を中心に展開される見通しです。
ペンス前副大統領やヘイリー元国連大使も、候補者として名前は上がっていますが、世論調査での支持が安定せず、現段階で支持基盤の分析から意義のある結果を導くことは難しい状況です。
それでは、トランプ氏とデサンティス氏がどのような層から支持を得ているかを見ていきます。
トランプvs.デサンティス 重複する支持基盤
トランプ氏とデサンティス氏の支持基盤は、基本的に重複する部分が多いと考えています。
トランプ氏とデサンティス氏は、両者とも共和党内では保守派の位置づけです。トランプ氏は、2020年の大統領選以降は不正選挙などの陰謀論を唱えるなど、保守派とは一線を画す独自の活動(MAGA)を展開しており、最近は保守派の団体や議員との距離も目立っています。
しかし、トランプ氏の政治的主張や、在任時代に行った政策は保守派の支持を背景にしています。
デサンティス氏も、フロリダ州知事としてCOVID-19の行動制限に反対し、人工妊娠中絶の禁止など保守派が望む政策を実行してきました。トランプ氏が在任中に実施したCOVID-19関連の入国規制措置などについても否定的な考え方を示すなど、むしろ「トランプ氏より保守」との指摘もあります。
このように、トランプ氏とデサンティス氏の政治的立場は共通する点が多く、これは支持基盤の重なりとしても現れています。
トランプ氏、デサンティス氏を支持すると答えた人に「2番目に選ぶとすればどの候補を選ぶか」を尋ねた設問では、次のような結果になっています。
このように、トランプ・デサンティス両氏の支持層は重複しています。デサンティス氏支持の人たちは、多くが「トランプ氏からデサンティス氏に乗り換えた」有権者だと考えられますが、依然として2番目の選択はトランプ氏になっており、両氏の支持には互換性があると推測されます。
トランプ氏とデサンティス氏の支持率は、両者の支持基盤が重複し、かつ互換性があることを背景に、調査によって大きなばらつきを示します。
同時期に行われた2つの世論調査を比較します。年代別でトランプ氏とデサンティス氏の支持率を集計したデータは次のようになっていますが、調査間で大きな違いが表れています。
特に、65歳以降を見ると、Emerson調査ではデサンティス氏が上回るのに対し、YouGov調査ではトランプ氏が2倍近い差をつけて上回るなど、一貫した傾向が見られません。
トランプ氏とデサンティス氏の支持層が重複し、さらに互換性があるため、調査のタイミングと手法、設問などの僅かな違いでトランプ氏とデサンティス氏の支持率が大きく変わって見えると分析しています。
無党派層では支持動向に明白な違い
無党派層では、トランプ氏とデサンティス氏の支持動向に違いが見られます。デサンティス氏がトランプ氏と比較して、無党派層で支持を強める傾向があります。
「トランプ氏が無党派層から集票できない」という状況は、昨年の中間選挙でも浮き彫りとなりました。デサンティス氏は、無党派層で特に「嫌われていない」ことが示されています。
ただし、トランプ氏は86%が態度を示しているのに対し、デサンティス氏は68%しか態度を示していません。3割程度いる態度未定層が、選挙戦を通じてどのような態度に落ち着くのかには注意が必要です。
また、デサンティス氏は「本選で勝てる候補」としての期待感を集めています。次に示すのは、バイデン氏との対戦を想定した世論調査の結果です。
トランプ氏よりも、デサンティス氏のほうがよいパフォーマンスを示しています。この調査は1週間に1回のペースで更新されますが、「デサンティス氏であれば勝利できる」結果になっているケースもあります。
無党派層への求心力が比較的高いことや、昨年の知事選で圧勝したことを背景に、デサンティス氏は「勝てる候補」という印象が広がっています。
ハリス氏とデサンティス氏への「過剰な期待」
民主・共和両党でそれぞれ次世代のエースとされるハリス副大統領、デサンティス知事ですが、党内での期待は過剰になっている可能性があります。
ハリス副大統領は、民主党内で黒人層を中心に高まる期待感とは裏腹に、無党派層からの支持率が低く、本選で勝てる候補とは言い難い状況です。
民主党内で行われる予備選挙と、さらに幅広い支持を必要とする本選では温度差があることが認識されておらず、女性初の大統領としての期待感だけが先行する状況は好ましくないと考えられます。
デサンティス知事は、無党派層への訴求力が強く「勝てる候補」との印象が広まっています。しかし、デサンティス氏に穏健なイメージが広がっているのは、トランプ氏と比較した「相対評価」であり、トランプ氏に勝利して指名候補となった後、デサンティス氏の保守的な主張が無党派層から共感を得られる保証はありません。
さらに、共和党内で造反の可能性をもつトランプ氏支持者を繋ぎ留め、党を団結させることができるのかも不透明と言えるでしょう。デサンティス氏がこれらの難しい期待に応えられるのかは未知数で、「過剰な期待」である可能性は十分にあります。
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