Klaus Schulze「Irrlicht」
はじめに
突然ですが、元気がなくなったり憂鬱になったらどんな音楽を聴くと問われたらどう答えますか。応援ソングを聴くという人もいれば、逆に暗い鬱々とした音楽を聴くという人もいるでしょうし、ましてや音楽なんか聴いてられないみたいな人もいると思う。ちなみに自分は二番目のタイプ(暗い曲を聴く)です。
今回は、そんな中でもかなり精神的に追い込まれている時に聴くアルバムをレビューしてみます。(一応普通の時も聴きます)
本アルバムについて
本作は、ドイツ人のKlaus Schulze(クラウス・シュルツェ)が1972年にOhurレーベル(クラウトロックを代表するレーベル、耳の意)から発表したものです。タイトルのIrrlight(イルリヒト)とはドイツ語で鬼火、人魂などの意味であり、壊れた電子オルガンや損傷したアンプなどを使用してテープでミックスした音を3部の交響曲に仕上げたとのことです。(※この時シンセサイザーは所有していない)
全曲レビュー
1. Satz: Ebene
第一楽章はドイツ語で「平野」という意味で約23分半の大曲。
クラシック音楽の荘厳で神聖な雰囲気もありながら、荒れた音や不協和音が異様で不気味な雰囲気を感じさせます。油断しているとこの音世界に持っていかれて帰って来れないかもしれないという危険な予感がする…
また、中盤あたりからのフレーズの連続が緊迫感を演出します。
その後、不規則に浮いたり彷徨うような不安定で予測できない和音で展開していき、聴いていてどこか不安で落ち着かない気持ちになります。
次第に全体の音や不協和音が多くなり、今まで何とか秩序を保っていた音世界が混沌として、破滅に近づいてくるのを感じます。
終盤では、曲の背後で不穏なSEも鳴ってきて恐怖を感じてきたところで第二楽章に移ります。
2. Satz: Gewitter (Energy Rise - Energy Collaps)
第二楽章はドイツ語で「雷雲(エネルギーの盛衰)」という意味の5分半と本作中では短い曲です。
音がぶつ切れになったり、音が近づいたり遠ざかったり、急に鳴ったりするように不安を煽るような様々な仕掛けがされています…
題名にもあるように雷のような音も遠くで鳴っています。
曲の前半に対し、後半は割と落ち着いている印象があります。まさにエネルギーの盛衰といった感じ。
3. Satz: Exil Sils Maria
第三楽章はドイツ語で「流刑地 シルス・マリア」という意味の一曲目に次ぐ21分半の大曲。
序盤はドローンアンビエントで安定した荘厳な雰囲気がありますが、4分を超えたあたりから激しい音が増え、聴いていて不安になります。9分ぐらいからは安定し決まったフレーズが鳴っているので少し安心できます。(といっても雰囲気は不気味ですけど…)最終的に、前半のような荘厳な雰囲気に包まれながら本アルバムの終焉を迎えます。
ちなみに、題名のシルスマリアとはスイスの東南部にあるシルスの地区の一つだそうで、あの哲学者のニーチェが気に入って滞在した場所でもあるらしいです!とても美しい自然の景色が広がっているので、その景色を見ながら聴いてみるとまた違ったように聴こえるかもしれませんね♪
最後に
本作は、レビューを読んで気付いた方もいるかもしれませんが、一曲が長くそれぞれに目立ったメロディ、リズムが無い完全なアンビエント作である上に相当重苦しく暗い雰囲気なのでかなり聴く人を選ぶと思っています。その一方で、気に入ったり、どこか救われた気持ちになる人もいるアルバムだと思っているので、気になった方は是非一回聴いてみるのをおすすめします!
そもそも本作は、今までに聴いたことがないような音楽を聴きたいという想いからプログレッシブロックやポストロックなどに傾倒した時に、その流れでクラウトロックを好きになって知りました。
クラウトロックは、どの作品も刺激的で(Guru Guru"UFO、CAN"TAGO MAGO"、Faust"Faust"…etc) ロックの中でかなり好きなジャンルです。(ジャンル分け出来ないほど作品の幅は広いけど…)
しかし、自分はまだまだ知らないことだらけなのでこれからもこのジャンルを掘っていき、良い作品があればその度に作品をレビューしていきたいと思っています。そのため、なにか良い作品があれば教えてもらえると非常にありがたいです!