#私を構成する9枚④ Sly&The Family Stone"There's a Riot Goin' On"
はじめに
本作はSly&The Family Stoneが1971年に発表した5枚目のアルバムです。邦題は「暴動」(こっちの方が有名かも)。
Sly&The Family Stoneは黒人白人混合のファンクバンドで、代表曲には愉快なベースのスラップが印象的な"Thank You"
某音楽番組のオープニングでお馴染みの"Dance To The Music"
明るいメロディと鍵盤が印象的な"Everyday People"などがあります。
これらの曲はどれもグルーヴィで明るく楽しい雰囲気ですが、これらの曲は本作よりも前の作品で、本作の作風はガラリと変わります。
本作は暗く、退廃的な雰囲気で、これまでの作品から考えるとかなり異色な作品です。(次作のFreshでさらに濃くなる)
また、サウンドはローファイで宅録感があることから、密室ファンクと称されたりする事もあります。
この当時、フロントマンのスライストーンが薬物中毒であったのに加え、人種問題などの暗い時代背景が重なって偶然出来たいわばオーパーツ的な作品だと思っています。(スティーヴィーワンダーの鍵盤の演奏にも影響を与えたとか…)
全曲レビュー
※:☆の数は自分の好みの程度
1.Luv n' Haight ☆☆☆☆
一曲目からいきなり、サイケでドラッキーなワウギターが鳴り、初めて聴いた時にかなり衝撃受けました!!(この音だけでも本作を聴く価値アリ)
これまでの作品で印象的だった明るくノリノリなホーンセッションも無く、ひたすらにグツグツと低音調理をしているかのような内向きなグルーヴがクセになります!
2.Just Like a Baby ☆☆☆☆☆
スローテンポでどこか寂しげな曲。一曲目とは違い、控えめなボーカルやコーラスがより内省的な雰囲気が伝わる。薬物中毒の状態のスライストーンが歌うことで楽曲により切なさや深みが生まれている気がします。
3.Poet ☆☆☆☆
クラビネットの音が印象的な一曲。リズムボックスと絡み付いてかなりグルーヴィーです!!あまりにも濃いブラックミュージック過ぎて最初はあまりハマりきれませんでしたが(ブラックコーヒーやリキュールを飲むみたいな感じ)、何回も聴いてくうちにかなり癖になってきます。
今改めて聴くと、この濃さはD'AngeloのVoodooを彷彿とさせます。(こっちの方が先だけど…)
4.Family Affair ☆☆☆☆☆+☆
個人的な本作のベストトラック①。
モコモコしたリズムボックスと"It's Family Affair"のコーラスが印象的な一曲。
この曲はメロディーも親しみやすく、本作からシングルカットされ全米1位を獲得するほど人気です。その反面、歌詞は「勉強好きに育つ子もいれば、まさに燃やしたくなるような大人に育つ子もいる」に対して「家族の問題」となんとも暗い内容です。そんな閉塞感が、宅録感のあるサウンドにマッチしているように思います!!
5.Africa Talks to You 'The Asphalt Jungle ☆☆☆
邦題「アフリカは君に語りかける(アスファルト・ジャングル)」
酔ってしまいそうになるほどグルーヴィーで、さらに約9分という大曲です。
本来はこの曲名が本作のアルバムタイトルになる予定だったとか…
6.There's a Riot Goin' On ☆☆☆☆☆
A面最後の曲であり表題曲。
暴動という曲名から4秒の無音のトラックがかなり意味深で異質な雰囲気を放っています!
ちなみに、マーヴィンゲイの"What's Going On"に対する回答として"Thre's a Riot Goin' On(暴動が起こっている)"という曲名にしたらしいです。
7.Brave & Strong ☆☆☆
B面最初の曲であり、以前のスライらしさのあるホーン隊も加わって本作の中でもかなり賑やかな曲。賑やかといっても音質のせいか以前ほどの開放感が無く、どこか閉鎖感を感じます。
8.(You Caught Me) Smilin' ☆☆☆☆
こちらの曲でも、ホーン隊が参加していてかなり賑やかです。スライストーンのボーカルのテンションも高くかなりパワフルな歌い回しをしています!
それと、スライストーンがシャウト?した後の演奏がかなりグルーヴィーです!!
9.Time ☆☆☆☆
#7、#8に比べてテンションが抑えられたバラード調の曲。
演奏の音数も最小に抑えられており、ボーカルが映えます。また、音数が少ないにも関わらずかなりグルーヴィーで音の隙間が気持ちいいです!
主にリズムボックスやクラビネットで構成されたサウンドに独特な雰囲気が感じられ、ベストトラックとまでいかないものの、地味に気に入っている曲です!!
10.Spaced Cowboy ☆☆☆
ファンク×ヨーデルというかなり異質な曲。こんなに閉鎖感のあるヨーデル聴いたことない…
また、ベースが地を這うように暴れまくっています。
かなり細かいですが、曲の3:20辺りに「ジッ」っていう感じのノイズが鳴る箇所があって、そこがお気に入りです!
11.Runnin' Away ☆☆☆☆☆+☆
個人的な本作のベストトラック②
本作の暗い雰囲気を全く感じさせないようなカッティングが印象的な爽やかな曲で、AORやフリーソウル方面のような感じがします。
ちなみにこの曲もシングルカットされている人気曲です!
12.Thank You For Talkin' To Me Africa ☆☆☆
最後の曲は、最初に紹介した"Thank You"を本作の雰囲気を象徴するような重く、テンポを落とした約7分の大曲です。
この曲も#6のようにその日の体調次第では通して聴くのも大変なぐらいドス黒いグルーヴが渦巻いています…
聴き終わって疲労感が溜まった人には、この曲の後に#11を聴くことをオススメします!笑
最後に
本作は、自分が洋楽にハマるきっかけにアルバムの一つであり、初聴時にかなり衝撃を受けました!
疑う事なき名盤ですが、個人的にかなりクセがあると思うので、レコードのA面とB面を完全に分けて聴くことをオススメします!!(初めに通して聴くとキツイかも…)
ちなみに、この後にスライは"Fresh"という名盤を出しますが、そこから段々と人気が落ちていき、スライストーンの薬物中毒も酷くなっていくのがなんとも悲しいです……
しかし、先述したようにSly&The Family Stoneはスティーヴィーワンダーやプリンスなどに影響を与え、それらのアーティストもまた後世のアーティストに影響を与えています。このリレーのバトンのように受け継がれた結果、最近になって星野源や藤井風などのブラックミュージックを背景に持った邦楽アーティストが台頭するようになってきました。そのため、これらのファンの人にも是非本作を一度聴いてみて欲しいなんて思っています!!