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ワインコラム16:広すぎる特級畑の不利な位置でも、実力者は秀逸なワインを造り出す

パリ北部にあるモンマルトルの丘に、ぶどう畑があることはあまり知られていない。サクレクール寺院の裏手、芸術家達で賑わった「ラパン・アジル」の道をはさんで向かいに有る。
私も数年前に初めて目にした。野球のダイヤモンドほどの正方形で、小さな畑が密集しているブルゴーニュでも、これだけ小さなA.O.C.は無いであろう。

調べてみると、「ル・クロ・モンマルトル」というワインで、その歴史は古く2000年近く前のローマ時代から始まるらしい。
年間6000本というから、ロマネ・コンティと同じくらいの生産数である。
毎年10月の収穫祭で販売されているのだが、“パリのワイン”としての希少価値が影響しているのか、味に比して値段が高めらしい。品種は、ガメイ70%、ピノノワール25%とある。

ブルゴーニュにはその330倍ほどの特級畑がある。「クロ・ヴージョ」である。その面積50ha。わかり易く言えば、約700m×700mのぶどう畑だ。その畑が、等高線に沿って南北に帯状にあれば問題はないのだが、長方形の左上の角を欠いた五角形の形で存在している。
斜面の上と下で、15mほどの標高差があるのだ。土壌の組成や、水はけの良し悪しなどが違ってきてもやむを得ないであろう。昔からヴージョは、斜面の上の畑を良しとしてきた。斜面の下のワインは、特級と言い難いモノも有るかもしれない。

ヴージョには80ほどの生産者がいるのだが、誰が何処の区画を持っているかは、長い間秘密にされてきた。しかし30年ほど前、あるワイン評論家によって公表されてしまったのだ。今では、誰が何処の区画を持っているか明白となっている。
昔から、ヴージョのワインで名声を博してきたほとんどの造り手たちの畑が、斜面上部に位置していることに納得させられた。しかしながら、ブルゴーニュワインはここでも造り手次第なのだ。斜面下部に畑を持つ実力のある著名な造り手から、数はすくないが秀逸なヴージョも生まれている。


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