El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたしなみ、カウンターに座った客たちは、ワインの香りを味わいながら、彼の豊かな蘊蓄に相槌をうつのが何よりの楽しみです。さて、今夜もムッシュの語りに耳を傾けてみましょう。

El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたしなみ、カウンターに座った客たちは、ワインの香りを味わいながら、彼の豊かな蘊蓄に相槌をうつのが何よりの楽しみです。さて、今夜もムッシュの語りに耳を傾けてみましょう。

最近の記事

ワインコラム44:居候(いそうろう)

タイトルデザイン☆Ryoko Sakata 写真☆Masaru Yamamoto 23、4の頃に西荻窪の私の部屋に、1週間ほど居候していた男が居た。 いつの間にか転がり込んできたという印象がある。その頃私の良く行く酒場で知り合ったのだ。年格好も同じぐらいで話題も合った。 頭文字からKとしておく。 Kとの話題は音楽と本の話が主だった。  あの年頃の若者の常で、少ない知識をふくらまして、背伸びして議論していた。熱かった時期だった。あの時代の生意気な自分を思うと、消え入りたい

    • ワインコラム43:カレーにまつわる話

      タイトルデザイン☆Ryoko Sakata 写真☆Masaru Yamamoto 店を閉めていたコロナの時期に、1日1軒、カレーの食べ歩きをしていたことがある。 その頃の日課は、朝食後はのんびり過ごし、昼食はカレー。午後に帰り読書やコラムを書く。夕方買い物に行き夕食を作っていた。このコラムは、コロナで時間が出来たので書き始めたものだった。 何故カレーなのか? 緊急事態宣言下では、飲食店でのアルコール提供は出来なかった。 私的な意見ですが、和食には日本酒が付き物だ。 洋食

      • ワインコラム42:2003年のブルゴーニュ

        タイトルデザイン☆Ryoko Sakata 写真☆Masaru Yamamoto この夏の暑さは尋常ではない。 今年の7月は、観測史上最も平均気温が高かったという。農作物にも被害が出ている。収穫量が少いので、物によっては例年の1.5倍ほどの価格になっている。 31年前の1993年夏に、El Bon Vinoは開店したのだが、この年は冷夏であった。 米の出来も悪く、タイ米を輸入していたような年だった。開店は8月下旬のため、7月から8月にかけては内装の工事中だ。しかし最近の夏

        • ワインコラム41:私にとっての「未知との遭遇」

          タイトルデザイン★Ryoko Sakata 写真★Masaru Yamamoto 先日行った盛岡で、「ウニのワタの塩辛」と言うものを食べてきた。 ウニの中に有る茶色のヒモみたいなものを集めて、塩辛にしたものだそうだ。1人前大さじ山盛り1杯ほどでウニ50個分のワタが必要と聞いた。味は、というと渋みのある磯の味がした。 私は若い時分から、食べたことの無いような珍しい物に目がないたち(質)で、一にも二にもなく飛びついてしまう。 仕事で未知の造り手のブルゴーニュワインに出逢った時

          ワインコラム40:思いがけない人と思いがけない場所で

          タイトルデザイン★Ryoko Sakata 写真★Masaru Yamamoto 人は時に、思いがけない人と思いがけない場所で会うことがある。 ブルゴーニュのボーヌで知人と会ったことがある。 その日、パリで昼食の後のんびりし過ぎて、ボーヌの駅に着いた時は予定していた時刻を1時間以上過ぎていた。 ホテルにチェックイン後、ボーヌの町に妻と散歩に出た。実は昼食がことのほか重かったので、歩いて少しでも消化したかったこともある。時刻は7時を過ぎていたと思う。城郭に囲まれたボーヌの町

          ワインコラム40:思いがけない人と思いがけない場所で

          ワインコラム39:好きな街

          タイトルデザイン Ryoko・Sakata 写真     Masaru・Yamamoto 今の季節(5月)、道端や空き地で直径3センチ位の青紫や桃色の花を見かける。 矢車菊と言う花だ。10代の頃からこの花を好ましく思っていたが、20代の時に石川啄木の歌を知ってから、さらに親しみを覚えるようになった。  函館の青柳町こそかなしけれ友の恋歌矢ぐるまの花 「かなし」とは愛おしいとか懐かしいという意味のようだ。この少し感傷的で、切ないような追憶を思わせる歌は、20代の私のセンチ

          ワインコラム39:好きな街

          ワインコラム38:官能的なもの

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 食物の中には、妖しいと言っても良いほどの官能的な味を持つものが、有るような気がする。 果物でたとえれば分かり易いと思う。私の勝手な種分けによると、マンゴー、パパイヤ、桃、メロンなどがそれに当たる。 私の好きな果物でもある。 その共通点を考えた時、3つの条件に行き着いた。それは、1.甘いこと、2.食感が柔らかいこと、3.風味に、感覚に訴えてくる官能があること。これらの官能的な果物を食べている時の私は、幸福感に満たされているのだ。

          ワインコラム38:官能的なもの

          ワインコラム37:「私は貴方が嫌いです」

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 好きとか嫌いとか、人は無責任に言っている。  個人の好き嫌いなど、大抵は重大な事態を引き起こすことも無いので、無責任で構わないのだが・・・・・・。しかし、それが自分に向けられると事は深刻になる。 「好き」は良いとして、「嫌い」は真剣に考えざるを得ない。 お互い熱くなって、相手から「嫌いだ!」と言われた時などは、口論の末であるからある程度理由は想像できる。しかし口論も無くお互い冷静な時に、顔見知りの人から「嫌いです」と言われると、

          ワインコラム37:「私は貴方が嫌いです」

          ワインコラム36:山本先生と田口さん

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 1月17日、日本のワイン文化の発展などに功績のあった、山本博先生が亡くなられた。  先生は弁護士のかたわら、ワインの知識や上質なワインを広める努力をされてきた方だった。試飲会やパーティーなどでお会いする度に、「とても気さくな方」という印象を持った。 先生のことを思うといつも一つの情景が蘇ってくる。 ワイングラス片手に談笑している姿だ。先生の太めの眉毛は少し下がり気味で、それがより楽しそうに見せている。たいていの場合、話のお相手は

          ワインコラム36:山本先生と田口さん

          ワインコラム35:餃子はパスタである

          タイトルデザイン Ryoko Sakata 餃子は好きでよく食べるのだが、何時の頃からかご飯と一緒に食べなくなった。餃子定食を食べなくなったのだ。 中華圏では、もともと餃子はそれのみで食されている。しかし、そういったことが理由で白米を避けているわけではない。何となく合わないように感じたのだ。餃子の皮が、白米を拒絶しているように感じられたのだ。ご飯のおかずとしてそぐわない気がした。 考えてみれば、餃子は皮で具を包んだパスタと考えるのが自然だ。 一般的に、パスタとご飯を一緒に

          ワインコラム35:餃子はパスタである

          ワインコラム34:ルソーのジャングル

          タイトルデザイン Ryoko ☆Sakata 12才の時に衝撃を受けた絵があった。  中学入学時に渡された美術の教科書の表紙の見開きに、その絵はあった。最初の印象は一面のグリーン。良く見るとそれはジャングルで、オレンジ色の美味しそうな木の実もある。 それはアンリ・ルソーのジャングルの絵だった。 ルソーは、ジャングルをモチーフとした絵を何枚か描いているが、それがどの作品だったかというのは思い出せない。 とにかく、その温かそうで湿度を帯びた深い緑色のジャングルに、12才の少年

          ワインコラム34:ルソーのジャングル

          11月のコラムについて

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 11月のコラムはお休み致しました。 11月19日に、エル ボンヴィーノ30周年パーティーを、吉祥寺のホテルで開催しました。 パーティーの前は準備に忙殺され、パーティー後は疲労困憊でした。 しかし結果的には良いパーティーになりほっとしています。 パーティーご参加の皆様、ありがとうございます、皆様のお陰で素晴らしいパーティーになりました。 12月からコラムを再開致します。 よろしくお願いいたします。     El Bon Vino

          11月のコラムについて

          ワインコラム33:刺身定食

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 日本の常識と言うべきことを否定するようで申し訳ないが、私は刺身とご飯が合うとは思えないのだ。 「刺身定食」というものが有るが、私はこれに若い時から違和感があった。  20代の頃東北の或る民宿でこんなことがあった。 夕食の時間になり、日本酒を呑みたくなった私はお酒を注文した。何かツマミは無いかと宿の人にたずねると、無いと言う。仕方なく、から酒のあと夕食を運んでもらった。すると膳の上に、熱望していた刺身があり、酢の物や焼き魚もあるで

          ワインコラム33:刺身定食

          店主のオススメブルゴーニュワイン20

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata Puligny-Montrachet 1er CRU - CHAMP-CANET  2016 Domaine  J.M.Boillotピュリニイ-モンラッシェ 1erCru  シャン-カネ 2016 ドメーヌ: ジャン.マルク. ボワイヨ 白ワインの評価が高いジャン=マルクは、名手エチエンヌ=ソゼの孫にあたります。  そのワインは、過不足なく端正な味わいで、ピュリニイ-モンラッシェ特有のきれいな酸も品格を高めています。 私の好き

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          ワインコラム32:べらぼう凧

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 「べらぼう凧」というものをご存知だろうか。 凧の面一杯に、あっかんべーをした顔が描かれている凧だ。 舌と唇の鮮やかな赤と、目を見開いた顔が強い印象を放っている。 私はひと目で惹きつけられた。 私の手元にある物は、15センチ×12センチほどの土産物仕様で、20代初めの頃角館(かくのだて)で買い求めた物だ。 当時角館には、土産用の絵馬や凧絵などを描いていた武藤作五郎さんという方がいらした。 凧に興味を持った若い者が珍しかったのか、気

          ワインコラム32:べらぼう凧

          ワインコラム31:鳥

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 最近読んだ本に『鳥』という短編集がある。 作家の名は、ダフネ・デュ・モーリア。1931年から40年ほどの執筆期間のある、イギリスの女性の作家だ。 「鳥」という名にヒッチコックの映画を連想し、思わず手に取ったのだが、やはり映画の原作であった。さらに「レベッカ」も同じ作家のものであるという。 ひところ「ヒッチコック劇場」の原作者である、ヘンリー・スレッサーの短編集を楽しく読んだことを思い出した。 ハヤカワから2、3冊出ていたと記憶

          ワインコラム31:鳥