「手書き」を見つめ直して発見したこと
最近、手で文字を書いたのはいつですか?
「字書くこと減ったから、漢字忘れちゃった!」と言う友達。
「昔は近所の人から知り合い、友達の電話番号全部書けたけどさ、携帯に登録するようになって家族の電話番号すら分からないなぁ」と言う近所のおじいちゃん。
「お母さんの名前とか誕生日は、連絡先に登録しているから、携帯が分かっているよ」と言う近所の小さい子供たち。
スマホや携帯のおかげで、どんどん便利になっていく生活ですが、知らぬ間に何かを忘れているような、失くしてしまったような気がします。そこで、今回はアナログとされる「手書き」を見直すことで、私が発見したことをお話します。
キレイな“フォント”にダマされない
手書きを見つめ直すきっかけになったのは、テレビを見ていた時にふと心に留まった言葉でした。それは、ある音楽番組で藤井貴彦アナウンサー(以下、藤井アナ)が発したものでした。
SNSの誹謗中傷が社会問題になっている現代。心ないSNSの言葉に苦しめられたアーティストの「ちゃんみな」さんに対しての言葉で、省略せずに書き起こしたものが以下です。
「悲しい言葉を投げつけている人の立場に1回だけなってみるといいですよ。
そうすると、うらやましかったり、この人みたいになってみたいって思ってる。
自分とその人をたぶん比較しているんですよ。
相手を下げることでしか、自分の存在を保てない時ってあると思うんです。
それがもしかすると、すごく手軽につぶやけるSNSだったりするんですよね。
SNSは文字が美しく出るじゃないですか。手書きじゃないから。
どんなに嫌な言葉でも、汚い言葉でも、美しく見えちゃうんですよ。
すごい正論に見えちゃう。
“フォントにダマされちゃいけない。”って私は周りの人に言っているんですけど…」
私たちが日々目にしている画面上の文字は、美しすぎて、何が書かれていたとしても、全ての文字が同じ重さで直球に正面から刺さってくる。
だからこそ、フォントにダマされるな!そう藤井アナに教えられたように感じました。
もちろんSNSを多くの人が利用していて、趣味として使っている人もいれば、職業上や人間関係の手段としてSNSを活用しなければならない人もいます。
私は、SNSが難しい、怖いという理由で、アカウントは持っていても投稿はしていません。しかし、これから更にSNSを使うことが重要な世の中に変化し、私も頻繁にSNSを利用するかもしれません。
でもそんな時だからこそ、文字のフォントにダマされない人でありたいです。
もし、傷つく嘘、心が壊れるような言葉が画面に映ったら、暗い落とし穴に引きずり込まれる前に、「表面上キレイで整ったフォントだから、何でも正論のように見える、
フォントの美しさがそう思わせているんだ」と心に余裕をつくってあげる。
手書きだったら、どう書いているのだろう…ふざけて、怒って、うらやましくて、うれしくて、と想像して、その言葉を客観的に見ると、意外にへにゃへにゃな文字があるかもしれません。
さまざまな理由があると思いますが、SNS上の苦しみをデジタルなフォントから考える藤井アナの視点と言葉にハッとしました。
あえて令和に手紙を送る、ノートを取る
小学生の時、えんぴつを使って、字を覚えた。
中学生の時、シャーペンを使って試験を受けるようになった。
高校生の時、手の横が真っ黒になるまでマークシートを塗りつぶすようになった。
あの頃は、たくさん手書きをしていた気がします。
それがいつの間にか、パソコンとにらめっこの学習生活になり、人ともスマホの画面上のタップ1つでつながれるようになりました。
そんな私でも、手書きと触れ合っているものが2つだけあります。
1つ目は、手紙です。
昔の人は、遠くにいる人に情報を伝えたいとき、文字を使って手紙を書き、鳩や飛脚に届けてもらっていました。
そして、今は手紙を使わなくても、大量の情報がリアルタイムで溢れています。
ですが、手紙は情報を伝えるものだけではないと感じます。
私の兄は、いつからか誕生日に手紙を送ってくれるようになりました。
私にまったく関心が無いように感じていた兄から手紙が届いた時の驚きと嬉しさは忘れられません。
直接だったら、きっと伝えてくれない言葉がそこにはありました。兄の字は辞書の字のようにとてつもなく小さく、クセのある字をしています。ですが、その字を見られるのを楽しみになるくらい、毎年送ってくれるその手紙にいつも励まされている自分がいました。
スマホ上のやり取りでは、いつ連絡が届いたかの時間まで正確に分かり、またLINEだとメッセージを既読したのか未読なのか表示されるなど、情報や連絡の共有が、すばやく簡単にできる“効率の良さ”があります。
しかし、大事な連絡も何もかも同じ画面上にあると、いつの間にかやり取り自体が“流れ作業”のようになることもあります。
手紙は実際に手にとって触れることができ、封を開けると相手の香りがしたり、筆跡に相手の気持ちを感じたり……。わざわざ便箋を選んで、手書きで書いて、切手を貼って、ポストに入れてくれた手紙は“特別な想い”として相手の心に届けられると思うんです。
私自身も、小さい頃から家族や友達の誕生日にはプレゼントと共に手紙を渡していました。その後コロナ禍になり、家族や友達に会ってプレゼントを渡せなくなった時、兄から送られてくる手紙を思い出しました。
いつでも、すぐに届けられるデジタルな手段は世の中に溢れています。だからこそ、届くまで2〜3日ほどかかり、現代の便利さとは違ったアナログな手紙が新鮮な贈り物として意味を持つのではないか。
そう感じ、コロナ禍になってから友達に「もし良かったら、誕生日に手紙を送りたいんだけど…」と連絡をしました。
すると、「毎年、あの手紙楽しみにしていたんだよね、実はずっと大切にしてるから送って!」と返ってきました。
私も直接伝えられない思いを毎年、誕生日という日を借りて、手紙だからこそ伝えられていたのかもしれません。そして、その手紙も大切な人の心に届いていたんだと感じ、「手紙」の持つ力の大きさに気づかされました。
手書きとの2つ目の触れ合いはノートです。
ノートは、授業を取るのに使ったり、仕事で使ったり、メモで使ったり、いろいろな使い方ができますよね。私の使い方は、自分との対話としてのノートです。
私は、自分の心の声を聞くのが得意ではありません。
自分が何を思ったのか、どうしたいのかを考えるより、他の人が何を思っているのかを先に考えるクセがあるからです。
そのクセは良い面もあれば、悪い面もあり、どちらかというと悪い面が大きくなっていました。たとえば、嫌なことがあっても、嬉しいことがあっても、自分の言葉ではなく、その場に合う言葉を選ぶというように。
そんな自分が嫌いになっていました。
ある時、理不尽だと感じる出来事がありました。
どうしようもない気持ちをどうしたら良いのか、そんな時に目の間にあるノートにひたすら書いたのです。辛い、痛い、怖いという気持ちを。
何ページも書いていくうちに、スッと冷静さを取り戻している自分がいました。
気持ちの次に、時系列で、何があったか、誰がどんな時にどのような言葉・行動をしたか、自分はどうしたか、どう思ったか、今どう思うか、に対する自分の考えをそれぞれまとめてみました。
すると、その日に起こった出来事としっかり向き合って、自分と対話している自分がいたんです!
この方法はアリかも!と思い、次にパソコンへ打ち込んでみました。すると、打つ間に言葉を選んでいる自分、書き直している自分、キレイにまとめようとしている自分がいました。
ノートに書いた時は、思い浮かんだものが先に手に伝わっていて、体で文字を書いているような、そんな感覚がありました。
しかし、パソコンだと「まとめ作業」のようになってしまうんです。
手書きで書いたノートの字には、文字の大きさ、濃さ、強弱からも、その時の自分の思いが感じられます。
友達に話すと、私も嫌なことがあったらバーッと書くよ!という人がいました。また、ひらふくさんも落ち込んだ時に効き目のある書き出す方法を発見したことを記事にしていましたよね。
なので、この方法で自分と向き合っている方は多いのかもしれませんね。
私は、今回手書きに注目してみなさんに共有していますが…
きっと、みなさんも実は気づいている手書きの魅力があるのではないでしょうか?
ぜひ、この記事をきっかけにその発見を周りとシェアし、「こんなのもあるけど…」とニヤニヤしてもらえたら嬉しいです!
手で書く。その、一瞬一瞬の“味わい”を楽しむ
手書きをする時、字が汚いから嫌なんだよなぁという声をよく聞きます。
キレイか汚いかで言えば、キレイな字のほうがいいかもしれません。しかし、手書きのおもしろさは、書き手のその時の感情、体調、それまでの人生までもが字に映し出されていることではないでしょうか。
早く書きたいから綴り文字のように書く人にカッコよさを覚えたり、独特な形の文字にユニークさを感じたり、小学生の時に流行ったまる文字をかわいいと思ったり…。
はたまた、博物館で歴史上の人物の手紙の字を見て、その時代の洗練さに驚愕することもあります。
このように色んな手書きの字の味わいを楽しむことができると思うんです。
さまざまな人から生まれる字が、その時の、一瞬一瞬にしか生み出されないものだと考えると、すごく貴重で宝物のようなものですよね。
今回、「手書き」を見つめ直すと…
日々、当たり前に目にするフォントに落とし穴があるように、身近なものにも視点を変えてみることで自分を救う手がかりがあるかもしれない。
手紙なら直接言えない気持ちを書けるかもしれない。
感情が手に伝わって思いがノートに溢れるかもしれない。
みなさんは、「手書き」からどんな気づきがあったでしょうか?
あなたしか生み出せない字の味わいを楽しめますように!
Text by どさんこ大学生RUNA
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