#40 人は防衛本能でなんでも乗り越える〜マインドの法則
彼の防衛本能に火がついた。
コロナが始まってもう一年以上も経つ。コロナは様々な試練を私達に与えたが、個人的に1つだけコロナでよかったことがある。これはあくまでも私個人の話だけど。
それは、夫が禁煙をしたと言うことだ。それまで散々、何回も禁煙をするよう促してきた。でも彼はストレスを理由に頑固として禁煙しなかった。今、禁煙するとストレスで死んでしまうと。そんな夫が、コロナは肺機能に問題のある人が重篤化しやすい、と言う情報が流れたとたん、あっさり禁煙したのだ。
彼の父が肺がんで亡くなっているので、彼の禁煙は私の悲願でもあった。ご存知の方も多いと思うけど、癌は遺伝的要素も少なからずあるから。何を隠そう、私もキャンサーサバイバー(←かっこつけて言ってみただけ)で、病院でまず聞かれたのが近親者に癌患者がいるかだった。
それを知っていただけに、肺がんで亡くなった父親を持っている彼が、タバコを吸い続けてて良いわけがないと。マインドの法則では、不安に思うとその不安を引き寄せてしまうとわかってはいるものの、どうしてもその不安が拭えず、再三、禁煙するよう懇願してきた。でも彼はやめようとしなかった。
その彼がコロナであっさりタバコをやめた。人は命の脅威を前にすると、不可能なことも可能にしてしまうのか。私の懇願よりも何よりも、コロナの脅威の方が彼には響いたらしい。だから夫が禁煙に成功したという点においてだけは、コロナに感謝したいと思っている。それにしても恐るべし、人の防衛本能である。防衛本能がこれほど強烈な動機付けになるとは。
この話には少し後日談があって、夫は最初、禁煙していることを私に内緒にしていた。コソコソと自分1人だけの胸に秘めながら、禁煙開始していたのだ。彼は自分によほど自信がなかったのか、もし禁煙できなかった時にカッコ悪いからと、そんなリスクを恐れていたらしい。まずはコソっと1人で始めてみる。そして出来そうだと思えた時にいよいよ禁煙宣言する。なんだか涙ぐましいプライドではないか。
いよいよ禁煙宣言の時、ねぇ何か気づかない?と彼は嬉しそうな顔をしながら聞いてきた。もちろんそんなこと、観察力のない私が気付くわけがない。嬉しそうに期待して答えを待っている彼には悪いが、私には「あまり他人を気にしない」という特技があるのだ。
う〜ん、と悩む私を見て、彼は少し残念そうにしながらも誇らしげに「実は禁煙しているんだ」と言ったときの彼のドヤ顔といったら!いつもどこか控え目な彼の、あんなドヤ顔を見たのは初めてだった。タバコの誘惑に勝利したことが、よっぽど誇らしかったらしい。それぐらい禁煙は彼にとっても悲願だったのだろう。
今回のことで分かったこと。人は自己防衛本能が働くと、無限のパワーを発揮する。あんなに禁煙を拒んでいた彼をあっさり禁煙させたのだから。そして、それは私の再三にわたる懇願が、あっさりコロナに負けたことを意味する。
あの心配と苦労は一体なんだったんだろう・・・。