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MCバトルで学ぶ地元を誇るということ

ラップの手法に、フリースタイルラップと言うものがある。
ラッパーが即興で韻を踏みながらラップをするという表現手法のひとつ。
その中でも、DJが流すビートに決められた時間内でラッパーが、ラッパーに対して即興でディスをかまし合い、自己顕示すると共にライブ会場や現場でプロップスを得る(ラッパーとして知名度を上げる・支持を得る)ことを目的にした戦いがMCバトルである。 (引用:山人音楽祭)

僕はMCバトルをみるのが好きです。音楽に合わせて即興でお互いの想いをぶつけ合うその姿は、手を使わない格闘技のように思えます。言葉で互いを真正面から殴りあうのは、平和的であり、暴力的であり、かつ即興だからこその本人の真っ直ぐな想い、純粋さのようなものも感じられます。

そして、ラッパーは地元を大切にしている方が多いです。僕の考えですがHIPHOPははみ出しものが集まってできたような音楽です。だからラッパーは、はみ出しものが集まった場所、つまり地元(=仲間)を愛するのだと思います。

今回は、僕の好きなMCバトルの中から【地元を誇りに思ってんな】と感じたバトルとその言葉を紹介します。

①ハッキリ言っとく 地元から出ないのはダセえぞ 

【解説】
福島のラッパーGIL(ギル)と名古屋のラッパー呂布カルマが対決した時にでた言葉です。地元でコツコツとライブして活動しているGILが、テレビやメディアにたくさん露出している呂布カルマに対してこう言います。

冷静に考えろ 地元から出ねえのはそんなにダセぇか?
冷静に考えろ レぺゼンってのはどういう意味か
おれがここにいる意味が 相対してもわかんねえのか?
何回やってもあんたには負けない気がしてるわ

※レペゼンとは、レプリゼントの略で「代表する、象徴する」などの意味があります。

それに対して呂布カルマがこう言い返します。

ハッキリ言っとく 地元から出ないのはダセえぞ ハッキリ言っとく
おれは未だに 地元に暮らしながら 全国に呼ばれて飛び回ってる
そこで稼いだ金を地元で使う 地元でウジウジしてるのとは違う
レぺゼンの意味 完全に履き違えてる お前ら騙されんなよこのオッサンに

よく「地元が好きなら地元にい続けろよ。」なんて言葉を聞きますが、地元でにとどまることが地元を誇るということではありません。一人の人間として地元を背負いながら、人生のさまざまな場面で戦う。その姿をテレビやメディアを通して伝えているその姿こそが、地元を誇っているんだなと感じました。


②都会のビルの高さよりも田舎の山の方がずっと高いぜ

【解説】
神奈川出身のラッパーBALA(バラ)と愛媛出身のラッパーSKRYU(スクリュウ)の対決時の言葉です。

都会育ちのBALAが最初にこう言います。

どこの島だろうと関係ねえ
俺はゆっくりしている暇なんかないぜ
何にも食らわねえ 余裕でぶちかますだけ
俺は今日マジで失ったもん取りに来た
そして勝利の女神と踊りに来たんだよ

それに対してのSKRYUのアンサーがこちらです。

失ったもんなんて何ひとつねえ
田舎町(出身の)俺のことなんて誰も知らねえだろ
都会のビルの高さよりも田舎の山の方がずっと高いぜ
かましに来た お前とは違うとこ見せるSKRYU
How are you do it? いつでも止まらないアンストッパブル

田舎出身であることをコンプレックスに感じる人もいますが、逆にそれを誇りに思い、高さでは勝ってんぜ?というユーモアと負けん気が伝わります。


③ここにいるやつを虜にさせる そのうちみんな鳥取に来させる

【解説】
4人で対決するという特殊な形式でのラップバトル。4人のうち3人が大阪・神奈川・東京在住というなか、唯一の地方(鳥取)出身者であるJAKEの放った言葉です。

3人のラッパーがイケイケな感じのラップを披露した後にJAKEがこう締めます。

東京にわざわざ来てなんだか
プロップス(人気)とか奪いに来ただけだろ
ここにいる奴を虜にさせる
その内、みんな鳥取に来させる

「虜にさせる」と「鳥取に来させる」という言葉の韻やリズム感が心地いいだけでなく、いわゆる都会育ちの3人を相手にして、大勢の前で鳥取に来させるという自信あふれる発言に会場(と僕)は大いに沸きました。即興こそ地元愛が出るなと再確認しました。

余談ですが、このJAKEというラッパーは女性ラッパー(椿)とのMCバトルでもパンチライン(名言)を残しています。この時のバトルは数多くの予選を勝ち上がってきた、日本一のラッパーを決める大会での出来事です。トーナメント制のためお互い一度負けたら終わりという非常に緊張感の高まる試合試合です。

椿がJAKEに対してこう言います。

熱量 そして経験があるからやっとここに立てたんだよ
瓦礫の山 決して諦めない
あたしは一番高い山 登りに来た
何度も言うぜ HipHopに一つのLOVEを混ぜる

それに対してJAKEが真正面からこう答えます。

めちゃくちゃイケてるラッパーだってことは
言わずと知れてる
頑張ってるだなんて言うな
頑張ってっからここに立ってる
「女でよくここまで来たな」なんて絶対言わねぇ
女が一歩下がる時代は終わりだ

男が一歩先行く時代だ

ただただ、かっこよかったです。

最後に

即興こそ人の本心が垣間見れると思います。

そして、その本心の言葉こそ人の心を動かします。

もちろんコミュニケーションの駆け引きなどはあると思いますが、会議や日常会話など、どれだけ自分の本心をさらけ出せるか、言葉にできるかで生き方も変わるんじゃないでしょうか。


地元を誇る、最初の一歩

口に出す



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