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マッチ売りの少女を【言葉とアイディア】でハッピーエンドにしたい
むかしむかし、雪の降りしきる大みそかの晩。
みすぼらしい服を着たマッチ売りの少女が、寒さにふるえながら街ゆく人に声をかけていました。
少女「マッチは、いかが。マッチは、いかがですか。
誰か、マッチを買ってください」
でも、誰も立ち止まってくれません。
少女「お願い、一本でもいいんです。誰か、マッチを買ってください」
いくら声をかけても誰も買ってくれません。マッチの価格は一箱100円。
一本なら1円です。破格の安さにもかかわらず、誰も見向きもしません。
すると一台の馬車が少女の目の前を猛スピードで走り抜けていきました。
危ない!
少女は、よけようとした拍子にお母さんからもらった大切な靴をどこかに飛ばしてしまいました。あちこち探しても、その靴は見つかりません。
少女はしかたなく、はだしのままで歩き出しました。
だんだんと、足の感覚がなくってきました。
でも少女は、帰ろうとしません。マッチが一本も売れないまま家に帰ると、お父さんが家に入れてくれないからです。それどころか、
「この、役立たずめ!」
と、ひどくぶたれてしまいます。
そこで少女は考えました。
どうしたらマッチを買ってくれるのか?
そもそも誰もマッチを必要だと思ってないのではないか?
マッチが与える価値とはなんなのか?
【マッチの価値】
マッチは火をつけるものであり、その火を使って暖炉や蝋燭に火を移します。
【ニーズ調査】
少女は街ゆく人を観察しました。
通りすがりの人をみる限り、今この場でマッチを必要としている人はいなさそうです。というのも、今日は大晦日。みんな早く家に帰りたいはずです。
マッチの火を必要としているわけもありません。
少女は絶望した。
あまりに無謀なこの状況に。
【戦略その①】
少女は考えました。ただ、ひたすら「マッチ買ってくれませんか?」では、誰も買おうとは思いません。マッチを買うことによってどんないいことがあるのか?それを知ってもらわなければ誰も買うはずもないのです。
そこで少女は声をかける時に、一言付け加えることにしました。
「マッチ買ってくれませんか?
たった100円で一人の少女を救うことができます。
今年最後の人助けはいかがですか?」
少女は通行人の情に訴えた。
するとどうでしょう。今まで見向きもしなかった通行人が一人二人と少しずつ買っていってくれるではありませんか。
それもそのはず、片方裸足の少女が涙ながらに訴えかけているのですから。
通行人がたくさんいる中で、この場所を通り過ぎようものなら、薄情ものだと周囲の人から指を刺されかねません。
少女は、マッチを買わなければ気まずくなる状況を見事作り出したのです。
無事、少女は大晦日の夜を乗り越えることができました。
時は流れ・・・夏・・・
少女は、未だ路上でマッチを売っています。
長い間、売っていると通行人はもはや聞き慣れたのか、情に訴えかけても誰も買ってくれません。
そこで少女はまた考えました。
少女「(そろそろ、別の売り方を考えないと・・・まずい・・・)」
【アイディア:価値の再定義】
少女は、再度マッチの与える価値について考え直しました。
少女「(マッチは火をつけるだけではないはず・・・)」
少女は寒さに震えながら必死に考えました。
そして辿り着いた答えがマッチは、
時間制限付きの灯りである
というものです。
そして、ここから人々に与える感情がどんなものがあるのか考えました。
灯りは、長い間近くにあるからこそ、安心感があり、暗いところもよく見えます。それが時間制限がつくと、人は不安になり、見えるべきところも見えなくなります。
少女「(これを利用して、マッチを販売できないか・・・そうだ!)」
少女は、一目さんにある場所を目指して走り出しました。
少女が目指した場所それは・・・
お化け屋敷
でした。短時間で灯りが消えてしまうという恐怖感、これを生かすにはもってこいの場所です。時期は夏、まさにお化け屋敷シーズン最盛期でもあります。
少女は、お化け屋敷を営む経営者さんに自主プレゼンを行いました。
少女「入場時に数本のマッチを持たせ、その灯りを頼りにすすむお化け屋敷なんてどうでしょう?幸い、マッチならここにいくらでもありますよ(ニヤリ)」
経営者「それは面白い!早速君のところのマッチをまとめ買いさせておくれ!」
少女「今後ともお付き合い長くしていきたいので、今回はお安くしておきますね」
経営者「それはありがたい!ぜひまた頼むよ!」
少女のマッチの灯りをもとに進むお化け屋敷「マッチの館」は瞬く間に大ヒット。連日長蛇の列ができ、少女も経営者もたいそう喜びました。
当然同じようなマネをした業者がいましたが、そこは「元祖」ということを打ち出し、さらにロングヒットとなりました。
少女のマッチは無事に安定供給することができ、お父さんからぶたれることもなくなりました。
金銭的に余裕ができたためか、お父さんも改心し少女のためにちゃんと働くようになりました。とさ。
めでたし。めでたし。