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デザインの戦場
デザインの決勝戦:コンビニで繰り広げられる熾烈な競争
コンビニエンスストアは私たちの日常生活に欠かせない存在ですが、ここが実は「デザインの決勝戦」とも言える熾烈な競争の舞台であることを、ご存知でしょうか。特に食品や飲料などのパッケージのデザインにおいては、その競争が日々静かに繰り広げられています。
コンビニはデザインの戦場
コンビニの棚に並ぶ食品は、常に選別の対象となっています。売れ行きが悪ければ、数日・数週間で棚落ちし、二度とその姿を見ることはありません。逆に、消費者に支持される商品は長期間にわたり棚に並び続けることになります。いうまでもなく長期にわたって定番化し、売り場に残り続けることは簡単ではありません。商品そのもののクオリティやコンセプトは当然のこと、発売された時のタイミングやマーケティング戦略などさまざまな要因が一致することで定番化していきます。そして、その重要な要素の一つにパッケージデザインがあります。
私たちがスーパーやコンビニなどでものを選ぶ時、文字や色味をよく見て選ぶのではなく、ほんの数秒の間に感覚的に選択を行なっています。人間の脳には、自動的で速い処理を行うシステム1と、重要事項など意識的で遅い処理を行うシステム2があると言われています。そのうち、日常の買い物ではシステム1を使い、脳は省エネで判断をしています。実際私たちが買い物をする際には「いつも買っているから」や「価格が少し安い」から、あるいは「何となく好きだから」という、かなり大雑把な理由で購入していることがほとんどではないでしょうか。
そうした意識に昇りにくい抽象的な感覚に訴求するデザインのあり方は、実に奥深く人間の感覚への理解が求められます。
そして今日、私たちがコンビニで手に取る商品は、その中ですでに激しい競争を勝ち抜いてきたものであり、ここではデザインが単なる装飾ではなく、消費者の心をつかむための戦略的な非常に巧妙なツールとなっているのです。
ロングセラー商品の裏にあるデザインの妙
特に注目すべきは、長年にわたって売れ続ける「ロングセラー商品」です。これらの商品は、一見すると馴染み深く、変わり映えしないように見えますが、実は時代の流れに合わせて微妙なチューニングやマイナーチェンジを繰り返しています。これにより、いつの時代でも鮮度のある印象を保ち続けているのです。
例えば、お茶やビールなどのパッケージを年代ごとに並べて見てみると、ロゴの位置や背景の色味、ボトルの形状など、同一商品としての印象を保ちつつも、年毎に微妙なブラッシュアップがなされていることに気づきます。
加えて、パッケージデザインには、視覚的なシズル効果(食品や飲料の実際の画像やCG)や消費者の興味を引く要素、さらには印刷技術の工夫が細部にわたって施されています。(私ごとですが、印刷後の色味のわずかな見え方を調整するために何日も費やしながら印刷会社さんと検証したことが何度もあります)これらの工夫が積み重なり、消費者に選ばれる商品が生み出されているのです。
意識されないデザインの力
日常生活の中で、私たちはコンビニの商品のデザインにはあまり意識を向けないかもしれません。しかし先ほど申したように、実際には私たちが頭で意識して考えるその一歩手前」で手に取らせる感覚的な要素が、消費者の選択を左右しています。それゆえデザインが生活に自然と溶け込み、同時に売れ行きを確保するためには、非常に高い難易度が求められます。
「おいしい牛乳」という明治のロングセラー商品があります。
一見王道の牛乳、言ってしまえば「普通」のデザインだと思われるのですが、背景の牛乳の写真、「おいしい牛乳」の書体、色味、遠くから見た時・近くで見た時の印象など、微に入り細に入り緻密な検証が繰り返されています。
他にも、ロングセラーと呼ばれる商品のデザインは、どれも普遍性があり長きにわたってチューニングが施されてきたものがほとんどです。
新しい視点でコンビニを見る
コンビニを訪れた際には、商品のデザインに少しだけ意識を向けてみてはいかがでしょうか。普段とは違った視点で世界を見つめることができるかもしれません。コンビニが、単に日用品を購入するだけの場所ではなく、デザインの技術とマーケティング・メーカーの方々の弛まぬ創意工夫が詰まったアイデアのとして新たな光を放つはずです。