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脳に教えられ、脳に教える、自分を豊かにする本当の美味しさとは。

猛暑が続いた今夏の週末の昼下がり、ちょっと甘いお菓子が無性に食べたくなった。にもかかわらず、こういう時に限って家にストックが何もない。とはいえ、外はギラギラと照りつける日差しと、ニュースによれば35度という気温。災害時持ち出し用リュックが目に入ったものの、災害時用の乾パンの缶をあけて、氷砂糖と一緒に食べてる自分を想像すると、なんだかそれもあまりにも情けない。そんな時、「自分で作れば?」と思いもかけない声が自分の中から聞こえたのは、多分エアコンのきいた部屋から出たくなかったから。
という訳で、買うことが当たり前になっていたクッキーを、10年ぶりくらいに作ってみた。

手もとにあった以下の分量メモを参考に、材料を計量し始めて驚いた。

材料:(型抜きクッキー約42個分)
バター(やわらかくしたもの)70g
砂糖:60g
溶き卵:Mサイズ1/2
バニラエッセンス:少々
薄力粉:150g

バター70gは、昨今の小型化したバターひと箱(150g)の約半分、砂糖60gは、カフェのコーヒーについてくるスティックシュガー(5g)が12袋分。ひとくちサイズのクッキーであれば、私なら40枚くらいあっという間に食べてしまう分量だけど、中性脂肪という文字が頭のなかで赤く点滅し、気持ち分量を減らし、バター60g、砂糖50gで生地を完成させて、一旦冷蔵庫で休ませる。

その間にネットで調べてみると、 
日本の厚生労働省によると、成人女性の一日の砂糖摂取目標は7g(男性8g)、世界保健機構(WHO)によると、大人1日あたりの砂糖の摂取量は25gまでが望ましい、とある。日本とWHO基準に随分な違いがあるのは体格によるものなのか?など疑問に感じながらも、今焼いているクッキー(砂糖50g)には、日本基準(成人女性)にして約7日分!、WHO基準としても2日分の砂糖を使っていることになるとは、ちょっと甘いものを食べたいという欲求に水をさすのには、かなり効果的な情報だ。「本当に食べたい?」と自分に問いかけると、「うん、食べたいし、楽しみたい!」という答えが返ってきた。こんな自分との会話をしながら、棒状にして冷蔵庫で休ませていた生地をカットしてオーブンへ。 

コーヒーを入れながら、待つこと20分。ちょっと甘いものが食べたい!と思ってからは、小1時間がたっていた。作り始める前は、今すぐにでも、どうしてもちょっと甘いものが食べたくて、非常時用の乾パンと氷砂糖にまで思いを馳せた自分の欲求が、作ることに気をとられていたのか、ネットで調べた情報が見事に水をさしたのか、かなり抑えられていることに気がついた。

ただ、こんがりと焼きあがった待望のクッキーを目の前に、甘い香りに包まれると、まだ十分冷めてもいないクッキーをひとつ口にいれると、もう止められない。バターと砂糖の量を減らしたので、甘さ控えめな、ややしっとり感にかける手作りクッキーを、あっという間に半分消費。いつもの私だったら、きっとこのまま完食していたと思うけれど、この時ふと、材料を計量した時のバターと砂糖の量がリアルに頭に浮かぶ。あの子供の握りこぶしほどの大きさのバターを半分と、スティックシュガー5袋分をすでに消費したのだと思うと、あと半分を食べるのは、絶対に明日にした方がいいと、自分の脳が指令を出し、私は素直にそれに従うことができた。

食べることが大好きで、特に甘いものには目がなく、料理もよくするけど、外食も大好きな自分にとって、食を楽しむことは、人生を楽しむことに等しい。だから、美味しいものを、健康的に楽しむための知識はできるだけインプットしている。でも、一日の理想的な摂取量などの知識をいくら知っていたとしても、それを実践することは、美味しそうなものを前にするとなかなか難しい。
ただ、今回は、材料を前に自分で作ってみることで、ちょっと甘いものを食べたい、という自分の強い欲求を、情報をキャッチした脳がセーブしてくれ、ある程度おさめることができた気がする。と同時に、私が求めていたのは、生存のための甘さではなく、ちょっと甘いものを味わう楽しさだったことに、あらためて気づかさせられたということだ。お菓子に限らず料理でも、材料を揃えて自分で作ってみることで、塩分とりすぎなど、健康のためのセイフティーネットとして、かなり効果を発揮するのは間違いない。

と思ったのもつかの間、ようやくほんの少しだけ秋の気配を感じたこの週末は、久しぶりに少し遠出の散歩でも、と出かけたところ、足は自然と、パンが美味しい評判のカフェに向かい、カフェ一押しのあんバターサンドを迷わず買って帰って来た。目で見る限り、バターは30-40g前後。あんの甘さからすると、砂糖は40gくらい使われているなと思いながら、甘さ控えめな手作りクッキー以来、久しぶりに味わう、本格的に甘くクリーミーなあんバターサンドが与えてくれる喜びに私は大満足。「次に食べるのは、かなり先だから。」と、自分の脳に無理やり承認させながら、その甘くクリーミィ―な味わいにご満悦な自分に対して、健康のための適正量という問題に対しては、いつも複雑な気持ちを感じることを、正直否めない。けれど、その複雑な気持ちは、あんバターサンドのあんに入っていたであろう、甘さを引きたてるためのひとつまみの塩と同じように、私にとっては人生を味わうための、なくてはならない大切な隠し味のようなもの。そのことを、自分の脳にもしっかり教えて、数値というAI的な判断だけに頼ることなく、自分の脳との対話を続けながら、心身ともに、健康であることの道を探っていきたい。
 
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