宇多田ヒカルは結末をどこまで知っていたのか 〜One Last Kissの考察〜
こんにちは、駅人です。久しぶりのブログ投稿なので、筆慣らしとして最近ハマっている曲について書こうと思います。
それは、今週公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版 :||」の主題歌、宇多田ヒカルさんの”One Last Kiss”です。
この記事では宇多田さんが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズで手掛けたほかの主題歌にも触れながら、個人的な感想をつらつら書いていきたいと思います。(※少しネタバレあります。)
1.One Last Kissの歌い出し
自分は、この曲の始まりから既に心をぐっと掴まれました。
こんな歌詞の表現は、今まで見たことがありませんでした。数多の作り手が過去に色々な日本語を紡いでいながら、まだこのような新しい表現が残されていたのかと、とても感心しました。
そして歌詞を読み進めていくと、どうやらこの曲は、「碇ゲンドウから碇ユイに向けた曲なんじゃないか」という推測が生まれてきます。
大切な人と出会ってから人生が動き出したが、やがてその人を失うことになる絶望。それでも世界中を巻き込んで、もう一度その人に会おうとする碇ゲンドウの姿が、映画では大きくフィーチャーされていました。
One Last Kissは、まだ碇ユイを失う前の、幸せな(しかしそれを失う予感を感じている)碇ゲンドウの心情が描かれているように思います。MVでは、宇多田ヒカルの様々な日々の姿・表情がノスタルジックに映されていますが、これは当時の碇ゲンドウから見た碇ユイの姿のようにも見えます。
2.Beautiful Worldも桜流しも、碇ゲンドウの曲?
「One Last Kissが碇ゲンドウの曲だ」という解釈が生まれると、新劇場版シリーズの過去作の主題歌も碇ゲンドウの曲なんじゃないか、という推測が生まれてきます。
たとえば、一作目「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の主題歌、Beautiful Worldの歌い出しは次のようになっています。
この表現も今となっては、碇ユイがEVA初号機に取り込まれてしまい、会えなくなった後の碇ゲンドウの心情だと思えてきます。
さらに、三作目「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の主題歌、桜流しの中には次のようなフレーズがあります。
こちらにも、碇ユイとの再会を渇望する碇ゲンドウの姿が描かれているように感じます。
こうしてみると、ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズの大きな主題の一つに「碇ゲンドウから碇ユイへの愛」があることを、宇多田さんは最初から知っていたんじゃないか、という妄想が生まれます。
もちろんそのテーマは、アニメや旧劇場版でも描かれていました。けれど、どちらかというと碇シンジの成長そして人類補完計画の行方そのものに重きが置かれていた印象がありました。
完結篇であそこまで「碇ゲンドウから碇ユイへの愛」が大きく描かれていたのは、個人的に驚きです。そして、その主題の下に3つの主題歌が繋がるように感じられました。映画の最後にOne Last Kissが流れた後、繋がるようにBeautiful Worldが流れた時には、鳥肌が立ちました。
3.ヱヴァWorldと宇多田World
もちろん、それぞれの曲をより細かく聴くと、「碇ゲンドウから碇ユイへの愛」に当てはまらないような箇所もあります。
Beautiful Worldのサビには、
というフレーズがありますが、これは碇ゲンドウやユイの事というより、碇シンジのような若い少年へのメッセージだという解釈の方が合いそうです。このフレーズを中心に、曲全体の歌詞を解釈し直してみると、むしろ曲の主人公は親で、自分の息子に対する愛情表現だとも考えられます。
というフレーズも、碇ゲンドウから碇ユイへのセリフにも思えますが、とある親(曲の主人公)から息子へのセリフだとも思えます。
またOne Last Kissについても気になる点があって、それはMVにおいて下からの視点の映像が多いことです。
碇ゲンドウが碇ユイを撮った映像なら上からの視点が多いはずですが、MVでは宇多田ヒカルさんを見上げるような映像が多く見られます。これは夫が妻を撮ったというより、息子が母親を撮った映像のように思えます。
つまりこれらの主題歌は、「碇ゲンドウから碇ユイへの愛」をテーマとしたヱヴァンゲリヲンの世界を歌っているようで、完全にその世界にフィットしているわけではなく、「母親から息子への愛」をテーマとした宇多田ヒカルさん自身の世界も歌っているのではないでしょうか。
宇多田さんは「あなた」という曲でも、息子への愛を歌っており、その世界観をこれらの曲にも繋げているのではないかと考えます。
4.最後に
筆慣らしのつもりが、どんどん進んでしまった。。。
「One Last Kissは碇ゲンドウの曲なんだ!ほかの曲もきっとそうだ」と映画を観て思いましたが、一概にそうとは言い切れない部分もあったので、その辺のことを全部書いてみました。
もちろん、いろんな解釈や考察があると思います(ヱヴァンゲリヲンならここに限った話ではないでしょう)。一つの解釈として楽しんでいただければ幸いです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
そして、もう一度時間をかけて、全部のアニメ・映画を一周しようと決意するのであった。。。
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