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忘れないうちにエチオピアのことを

生肉にあたってぶっ倒れたこともあって、会う人会う人に「エチオピアどうでした?」と聞かれるので、忘れないうちに、つらつらと書いていくのです。1960年代からエチオピアに入ってエチオピアの陸上・マラソンの取材をしてきたカメラマン望月次朗さんの門前の小僧として、あれこれ見てきたので、今回のエチオピアは少々特殊な経験かもしれません。

とりあえず、いろいろ見たり、聞いたりしたところで感じたのは、実業団チームはエチオピアみたいな場所でじっくり腰を据えて合宿すれば、自然と世界との差は埋まるんじゃないか?一年中というのはさすがに無理だとして、たとえば、1月から3月。もしくは7月から9月いっぱいの土台を作るような時期をエチオピアで過ごすというのは、なかなか良いのではないか。そう思うようになってきたのです。

まずは物価の話。
海外遠征は物価高と円安のダブルパンチで金がかかると言われがちですが、ことエチオピアに関しては長くいればいるほど国内合宿よりも割安になるんじゃなりそうです。というのもエチオピアの通貨、ブルの価値がこの1年で一気に下がったからです。これはエチオピアは2024年に市場ベースの為替制度に移行した影響によるものです。今年の7月まで1ブル=2.75円だったのが、11月現在なんと1ブル1.25円へ。円の価値が半年で倍になりました。街を歩いていると闇両替の誘いがあります。正規より良いレートでブルが手に入りますが、お金を出した瞬間にわーっと強盗がやってくる可能性もあるので、無難に銀行で両替した方が良さそうです。ホテルの滞在費もドルで払えば円安で割高ですが、エチオピアブルで支払えばこれまでの半分でおさまる。世界でもまれな円高を享受できる国となっているのが実はエチオピア。長期滞在すれば割引もあるでしょうから、エチオピアの長期合宿はお得ですよ。と。

気候と標高の話。多くの長距離チームは走りやすい気候を求めて日本中を転々としながら合宿を行います。最近では湯の丸や御嶽での高地トレーニングも欠かせません。一方で、日本の高地では冬場は雪で走れないから海抜ゼロの富津のような場所に移動します。エチオピアの首都アディスアベバの気候は年中最低気温が10度前後、最高気温が20数度くらいにおさまります。午前中に走れば年中秋みたいな気候です。首都アディスアベバの標高は2300m。飛騨御嶽が2200m。ヨーロッパの高地トレーニングのメッカ、サンモリッツが1700m。わざわざ山に登らなくても、普通の生活をしているだけで、御嶽やサンモリッツよりも標高が高いのです。山奥をベースとした高地とは違い、アディスアベバでは冠雪で走れないということもない。一年中、街中で走っているだけで、高地トレーニングの効果が得られるのです。

もっと高いところを走りたければ、車に乗って30分ほど走れば標高3200mのエントト山があります。ここはエチオピア高地トレーニングのメッカ。多くのランナーはエントト公園に車を止めて、稜線を走り、超高地トレーニングを行います。エントト山には皇帝ハイレ・ゲブレシラシエのプールや芝生のグラウンドも完備したリゾートホテルがあります。

すぐ隣にはケネニサ・ベケレが作ったタータンのトラックもあるので、半径数百メートル圏内で中長距離に必要なさまざまなトレーニングを組み合わせることも可能です。

先週、エチオピアのイベントに招待された女子マラソン世界記録保持者ルース・チェプンゲティッチも朝練でエントト山の稜線を走りに出かけていきました。「一緒に行くかい?」と誘われたのだけど、前日に生肉にあたってベットでうんうんうなっていたので、女子マラソンサブテンの練習を観ることが叶わなかったことがとても悔やまれます。

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