日本人とPRO4
もしかしたら、これが現在の最適解かもしれない。全日本大学女子駅伝を走る選手の足元が目がいった。優勝した立命館、そして準優勝した大東文化大。その大半の選手が履いていたのは、シルバーにオレンジのストライプ。「ウルトラマンカラー」のアディダスPRO4。ウルトラマンカラー(とはメーカーは言わないが)は今季の駅伝カラー。
出雲駅伝では白地に黒いストライプのシンプルなデザインであったが、全日本大学駅伝では青山学院や國學院といったアディダススクールを中心にこのカラーのシューズを履く選手が多く見られることになるだろう。
出雲駅伝・全日本大学女子駅伝という2戦を終えたばかりであるが、飛び抜けてアディダスシューズ着用選手が突出して結果を残していることがわかる。出雲駅伝ではヴィクター キムタイを除く(彼だけPUMA)5人がアディダス。内訳はEVO1(吉田響)タクミセン9(平林清澄) PRO4(鶴川正也 野中恒亨 上原 琉翔)。全日本女子駅伝でも区間賞4選手がPRO4。そのうち2つが区間新記録を達成しているのである。
選択と集中。アディダス・ジャパンからはそういう戦略がみてとれる。個々の選手にアプローチするのではなく、チームを絞ってシューズを供給。アディダスが売りたいのはユニフォームではなく、シューズ。いくらユニフォームを揃えても、足元がバラバラではスポンサードする意味がない。
出雲駅伝では國學院、青山学院、創価にしぼって1、3、4位。全日本大学女子駅伝では立命館大と大東文化大にしぼり、ワンツーを達成。出雲駅伝も全日本大学駅伝もテレビ中継に國學院平林、青学黒田が出演するスポットも打った。完璧なマーケティングが展開されている。
さて、このアディダスPRO4はこれから日本の駅伝・マラソンシーズンにおいて圧倒的なゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている。なぜなら、今回のPRO4というシューズはPRO3の進化形というわけではなく、フルマラソン一回分の耐久性でありながら8万円以上するスーパープレミアムシューズ、EVO1の流れにあるシューズであるからだ。
「EVO1ってケイデンスシューズだと思うんですよ。」
と、ある日、竹澤健介さんと神戸で夕食の最中に唐突に話はじめた。彼の見立てはこうだ。EVO1を履いた選手の感想や結果を出している選手の映像をみると、これまでのカーボンシューズはストライドを伸ばすことにポイントをおいていたが、EVO1に関してはストライドよりもピッチに着目したシューズのような気がする。というもの。「ほんとのところはわかんないですけどね」と竹澤さんは笑ってはいたが、いや、そんな気がする。ボストン・マラソンで勝った選手もEVO1履いてたけど、妙に力感がなかったからだ。
「今度、ドイツのアディダス本社に行くことになったんですよ。Road To Reacordsってレースの取材で」と伝えると。「えっ。じゃあ話を聞けるかもしれないってことですね。ぼくの見立てでは、ケイデンス数はこれくらいに設定してるんじゃないか?と思うんです。キロ何分とかではなくて、ケイデンス。」とケイデンス熱が止まらない笑
ともかく竹澤さんの仮説を携えて、ドイツ・アディダス本社に向かうことになった。しかし、目的はあくまでRoad To Reacordsの取材。日本からも数多くの大学生が走ることになっている。とはいえ、「どうにか聞けないもんですかねえ。EVO1の話」と現地でつぶやいていると、アディダスの方が「EVO1の開発リーダに30分だけ時間をとってもらえることになりました!」と。ダメ元でもお願いしてみるものである。
挨拶をして名刺を渡すと「おおっ!EKIDEN NEWSじゃないか。インスタフォローしてるよ!なんでもきいてくれよ」それは話が早い笑 早速、本題に切り込んでみた。ポイントは彼が差している位置である。
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