# 20 【書評】日本の構造 50の統計データで読む国のかたち
はじめに
https://www.amazon.co.jp/dp/4065230993
評価:70点
一言:国際比較がされているのはよかったが、データの解説内容に著者の主観が入っているように読めたのが残念でした。(根拠が示されず、このデータの結果は日本が○○だからといった記載がありますが、本当にそう言えるのかとつっこみたくなります)
50の統計データは「経済」に関わるもの
著者(橘木 俊詔さん)自身が本書で述べているのですが、専門が経済学ということもあり、基本的には「経済」に関わる50のデータが紹介されています。これは、下記本書の構成からも凡そ想像がつくかと思います。
【構成】
序章 日本のいまとコロナ禍
第1章 日本経済の健康診断
第2章 教育格差
第3章 日本人の労働と賃金
第4章 日本人の生活
第5章 老後と社会保障
第6章 富裕層と貧困層
第7章 地域格差
第8章 財政
終章 今後の日本の針路
そのため、「経済」を切り口に日本の構造を把握したいと思っている方にとっては、学びが多いのではないかと推察します。
次の章以降では、主に気になった個所を抜粋して、皆さんに紹介したいと思います。
日本のお家芸は過去のもの
皆さんは、日本の産業において、お家芸といえば何を思い浮かべますでしょうか。日本が誇る世界企業を考えれば想像がつくかと思いますが、自動車やゲーム機器など、「ものづくり」=「製造業」がそのクオリティの高さから世界的にも評価を得ていると思います。
しかし、現時点においてもその優位性は著しくは損なわれていませんが、価格競争では中国やほかの新興国企業に負けてしまいますし(ものによってはクオリティでさえも)、IT技術を駆使した革新的な製品というと米国に負けており、日本のお家芸は「ものづくり」というのは過去のものという感覚をお持ちかもしれません
こうした感覚は、実際にデータを観ることによって、客観的に評価できます。詳細は、本書にて確認していただきたいのですが、日本の製造業の労働生産性は1995年から2016年にかけて、下記のとおり世界ランキングで順位を落としています。
1995年 1位
2000年 1位
2005年 8位
2010年 11位
2016年 15位
皆さんはこの結果を見て、どう感じたでしょうか。やはり、数字で見せられると現実が分かりますよね。確かに昔はほかの先進国を差し置いて、圧巻の1位だったのです。こちらもまぎれもない事実で誇らしいことです。ただ、現状は15位(最新のデータだともう少し順位を落としているのでしょうか)と何とも言えない順位に転落してしまっています。
ちなみに、日本の順位が落ちている間に、2005年以降連続で1位となっている国があります。それは、まさかの?、アイルランドです。
意外に思いませんでしょうか。「アイルランドがなぜ1位なんだ」「アイルランドに何があるんだ」そう思われた方も多いのではないでしょうか。
このことについては、本書で述べられていませんが、参考になる記事のURLを2つ紹介しますので、ご興味のある方は読んでみてください。キーワードは、ズバリ、”IT(リープフロッグ)”、”格安の法人税率”、”若い労働力”です。
【参照URL】
https://www.enginnier.com/ireland-global-company/
https://bungeishunju.com/n/n3879935d8091
日本の幸福度は世界的に見て低い
国連は、毎年世界幸福度調査を発表しており、2019年度版の調査結果によると、日本の順位は・・・
58位
です。また、なんとも絶妙な順位となっております。ちなみに、G7の中では最低の順位結果となってしまいました。そして、この原因について著者は次のように述べています。
なぜ日本がそれほど高くないのか、次の理由を指摘できる。低成長時代にいるので生活の豊かさが感じられない、社会保障に代表される社会的支援の低迷、官僚や政治の世界における腐敗などが原因である。
冒頭の一言でも書きましたが、そういった原因もあるかもしれませんが、この説明だけで納得がいきますでしょうか・・・(少なくとも私は納得ができず、他の原因もあるんじゃないの?と思ってしまいました。もちろん、本書は50のデータを網羅的に解説するのがテーマなので、1つ1つ深堀できないのは分かりますが・・・)
因みに、ひと昔に世界一幸福な国として有名になったブータンの順位は、なんと95位です。(正直に申し上げますと、日本の順位より、こちらのほうが衝撃的でした)原因は、いろいろ解説されていますが、”経済発展に伴う副作用”という見方で間違いないと思います。下記に参考URLを載せましたので、興味のある方は読んでみてください。
おわりに
上記は数ある統計データの中でもほんのわずかの1例となりますが、国際比較をしていただいているので、世界のおける日本の現状が客観的に分かり、その点は大変勉強になりました。
最後に1つ悲しいデータと嬉しいデータをお見せして、この記事を締めくくりたいと思います。
まず悲しいデータですが、皆さんご存知のとおり、社会保険料の負担率(健康保険および介護保険)が4月1日より増えました。これは、負担率の増加以上に給料が増えていないと、手取りの減少につながることを意味しています。少子高齢化社会の宿命ともいうべき、社会保険料の負担率の増加ですが、一体過去からどのように増加してきたのでしょうか。下図が参考になります。
消費税率の増加よりも、こちらをどうにかしてくれと思うのは私だけじゃないでしょう・・・
次に、嬉しいデータですが、国連犯罪調査統計によると、殺人率の高い順位において、日本は177か国のうち、171位という結果になっております。海外旅行に行ったり、海外で暮らしたことがある方は分かるかと思いますが、夜普通に出歩いて安心して暮らせる環境は、日本のいいところだと思います。
この記事が世界における日本を客観的に考えるきっかけになれば幸いです。
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