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音楽における「ダサい」の受け取り方
B'zが紅白で話題になってからか、音楽の話の中で「ダサい」という文言をよく見かけた(ちょっと旬過ぎたけど)。
あれやこれやと言い合う人々を眺めていると、世間の「ダサい」という言葉の扱い方と、自分の扱い方の感覚に違いがあったので、音楽における「ダサい」を再考しようと思う。
自分、B'z好きですよ。
「B'zはダサい」は否定しない
「B'z好き」と言ったがどれ程かと言えば、中高生の時、音楽好きな友人から小馬鹿にされていても、全く動じないぐらいには好きだった。
動じる事なく好きであり続けた根拠としては、松本孝弘のギターは好き嫌いは関係なく評価せざるを得ないレベルだと思ったからだ。松本孝弘を評価できないと他の意見の信用度が下がる。雰囲気で話すタイプ、もしくは評価基準が少ない人だと思われてしまいそうだ(バカテク信者とか)。あれだけ自分の音と芸風を確立したギタリストをダメだと言うのならば、ほとんどのギタリストを否定するしかなくなる。
(余談。ビーイング系のギタリストが皆、松本みたいな音だったという漠然とした記憶もあるが結構前の認識なので正確かはわからない。昔のワンズの歌い方がめっちゃ稲葉だったような記憶もある。)
でも、そこまで厳しくは咎めない。自分も他の楽器の上手い・下手はわからない事があるからだ。速くて正確とかなら「凄い技術があるんだろうな〜」と思えるけど、細かなニュアンスの話になると憶してしまう。ギター以外は。
何やかんや言ってるが、話を戻しまして。そんなB'zに対して肯定的な自分も、「B'zはダサい」という意見は理解できる。その理由はメタルにハマっていたからだ。何故メタルなのか。
メタラーは「ダサい」を誇る
メタルバンドのアルバムジャケットをザッと見てみれば、「イタい」とか「中二病」といった感想が思い浮かぶだろう。つまり、ダサい。メタルのサウンド自体、洗練された音楽を追う人々からすれば野暮ったさは否めない。B'zのサウンドもHR/HM寄りである。
また、メタルというジャンルに追随するファッションも垢抜けた感じではない。着こなす人もいるが着こなすのは難しく、大抵の場合は変とまでは言わないにしてもカッコいいとは言えない仕上がりになる印象だ。聴いている人々もジャンルのイメージを担うのだ。
音楽もファッションも全体的にキメ過ぎており、それが逆に恥ずかしい感じになっているジャンルであるように思える。時代の変化の影響も非常に大きい。しかし、メタルのバンTが俄にファッションアイテムとしてメタラー以外からも受け入れられているので、期待薄だがメタルの捉えられ方に変化があるかもしれない。
「ボロカス言うやんけ」と思われたかもしれない。しかし、HR/HMのダサさい要素はメタラーも自覚しており、それすら楽しむという大らかさがある(と、信じている)。最近のメタラー事情はよく知らないし、全てのメタラーがそうではないかもしれないが、メタラーは「ダサい」という言葉に、そこまでネガティブなイメージを持っていないのではないかと思う。
言われ慣れたが故の開き直りかもしれない。しかし、ダサいと言われる風潮に敢えて突っ走るカッコよさ、それこそ「ダサかっこいい」。それはメタルの真髄のように感じるし、メタル以外のものでも古くなったものを変わらず愛する人々の気概である。何でも変化さえすれば良いというものではないのだ。
めっちゃダサいバンド
Rhapsodyというバンドの話をしよう。
代表曲は「エメラルド・ソード」。1st〜4thアルバムはそのエメラルド・ソードに関連したストーリーらしく、「エメラルド・ソード・サーガ」と呼ばれている。
集合写真で剣を持っていたり、ライブでエメラルド・ソードをやる前に、観客に「〽ソォ〜↓オ〜↑オ〜→」と歌わせたりしている。「ソード」と言っているので、翻訳すれば、「〽剣〜」である。
因みに自分が彼らを知ったとき、既にRhapsodyではなくRhapsody of Fireになっていた。権利関係かなんかで改名をせざるを得なかったらしい。
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Rhapsodyの例を通して「ダサい、けど嫌いじゃない。むしろ好きである」という感覚を理解してもらえればと思う。メタルはそういうの多い。愛おしいという感覚すらある。
Rhapsodyの異世界転生モノがあれば間違いなく売れる。
先ほどの「B'zはダサいという意見は理解できる」とは、薄められてはいるもののB'zにもそういった要素がある、と言えば何となくわかってもらえるだろうか。具体的に言えばHR/HM的なポーズがダサさの理由なのではないかな。
ダサい音楽の具体例
「キャッチー過ぎ」、「ベッタベタな雰囲気」、「シンプルに古臭い」、などが「ダサい」の要因となる。メタルに限らず、色んなジャンルに多様なダサさが偏在している。怒られそうだが、個人的にダサさを感じるものをザッと上げてみよう。もちろん好きなやつです。
Dschinghis Khan / Dschinghis Khan
耳馴染み深いアレです。Boney Mと少し迷った。ディスコ系もダサいの多い。
Korpiklaani / Wooden Pints
ダサカッコイイ。同バンドのVodkaだとカッコよさの方が強い。でも、自分のその感覚が既にダサいのかもしれない。
Iron Maiden / The Trooper
改めて聴いたがダサい。しかし、血は沸騰する。名曲。
Whiteberry / 夏祭り
ジッタリンジンの方はそんなにダサくない(ダサさがない訳ではないけど)。なんか切なげでノスタルジー。故にWhiteberry版。
関係ないけど1個目のサビ(冒頭を数えず)のドラムが独特ですね。
Orchestral Manoeuvres in the Dark / Electricity
ピコピコしててかわいいらしさがある。素っ頓狂で良い。これもダサさと捉えている。
Manuel / Gas Gas Gas
ユーロビートもダサさの宝庫である。この曲の最初の言葉は「Do you like my car ?」である。中1の英語力。中2病のセンス。
リリックビデオの「my car」がエコーしている描写は必見。ヘビロテ不可避である。ちなみに「Running in the 90's」は普通にカッコいい(断言)ので選ばなかった。
PENICILLIN / ロマンス
ダサさはクセになる。聴く者を惹きつけ、繰り返し聴かせる。音楽において、それは凄く大切な要素であるという事を再認識させてくれる。そんな一曲。
この辺りの音楽を「え?普通にカッコいいと思うけどなぁ〜」と言う人もいるかもしれないが、口元を見れば緩んでいるはずだ。
「ダサい」という価値
SNSで見た「ダサい」は否定的なニュアンスでしか使われていないものが多く感じた。言っている側も言われている側もだ。ありとあらゆる会話は「ダサい」を否定的な言葉である事を前提に展開されている。とはいえ会話は成立してるし、日本語としては正しいし、それでいいのか。
しかし、そのような状況は音楽における「ダサさ」を愛する自分からすれば少しさみしい。自分も悪気なく「ダサい」と言ってしまう事があるだろうし、それにより気分を害する人もいるかもしれない。だが、勘違いしないで欲しい。大前提として「ダサい」と「悪い」はイコールでは結べない。
自分の場合は特殊なツボに入ったときくらいしかダサいと言わない。むしろ好意的に使う場面の方が多い。それはそれで「独特な価値観だな」とツッコミを食らうかもしれないが、Rhapsodyというバンドを思い返して欲しい。彼らはどうだった?ダサいけど良かったろう?
「ダサい」と「良い」を両立させる音楽は多く存在する。ダサさを悪としてしまえばダサさが売りの音楽が無くなってしまう。売りにするまでいかずとも、音楽を面白がれる要素としてのダサさが排除されてしまう。一つの価値観を失うと言っても過言ではない。
ダサさって生み出すモノというより、滲み出るモノであるような気もするけど。
この話題に頭を巡らせていると、中高生の頃、メタルが好きな友達と「ダサいは褒め言葉」と言っていたのを思い出す。
「ダサい」の日本語的に正しいかどうかは一旦置いておこう。言葉に対して偏屈になったところで先は細るばかりだ。音楽にまつわる言葉を短絡的に捉えるのではなく、ジャンルの背景と共に紐解けば、新しい視点に気付く事があるかもしれない。今後も。