■ 其の156 ■ さよなら、樋口一葉
樋口一葉 / 福澤諭吉 / 野口英世
今年7月に紙幣がフルモデルチェンジされます。最近はテレビでもちょくちょく、新一万円札の顔「渋沢栄一」の話題が取り上げられています。
来る者がいれば、去る者もいます。
現金一本派のわたしの財布の中身は、夏以降徐々に入れ替わっていくことでしょう。もしかすると、新旧六人が相席状態になる事だってあるかもしれません。
旧メンバーの「存在感」の序列は、福澤諭吉 → 野口英世 → 樋口一葉の順です。これに異論のある人はいないでしょう。いまだにクイズで「この人は誰?」と訊かれ、「えーと誰だっけ・・・与謝野晶子!」と答えている人がいます。
そんな神功皇后以来という女性二人目の「紙幣の顔」は、シワや陰影のない白くつるんとしたものです。一葉さんが登場した20年前、ジェンダーという言葉は存在せず、良くも悪くも、女性を「おばさん顔」に描くことはありませんでした。
ジェンダーという点でいえば、新メンバーも金額の多い順に、男10000円→女5000円→男1000円という設定は変わっていません。
思うに、一葉(いちよう)という響きはとてもきれいです。
それに女性の名前で四音△△△△というのは珍しくて貴重です。
音数でいうと、ミキ、ユミ、エリなどは二音△△。ユウコ、マユミ、エリカなどは三音△△△です。たぶん女性の名前の99%以上は三音以内です。
四音で思い浮かぶのは、サクラコかカオルコくらいです。
これに対し男性は、ケンタロウやジュンイチロウなど五音以上の名前がふつうに存在します。広島には中国新聞の記者で、東海右佐衛門直柄(とうかい・うざえもんなおつか)という方がおられます。
任期も残りわずかとなった一葉さんですが、彼女の両脇には福澤諭吉・野口英世という少々クセのある人物がいます。
福澤諭吉は著書「学問のすゝめ」の中で、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と語っていますが、ここでいう「人」には女性は含まれていなかったようです。彼は身分の低い武士の家の末子として生まれ、養子にも出されています。根底には自分が受ける扱いに対する不満と疑問があったのでしょう。ただ、女性にも参政権を与えるきだという考えには至ってないようです。
また学問のすゝめでは、「学問に励んで物事をよく知った人間は、偉い人となり財産家となるが、無学な人間は貧乏人となり、つまらぬ身分になるだけだ」とかなり辛辣です。今ならパワハラだと言われかねません。
そしてもう一方の野口さんに至っては、かなりヤバイ人だったようです。詳しくは最後の引用をご覧ください。
今のご時勢、お二人ともコンプライアンス的にアウトだなーと思います。彼らは時代的にも、去るべくして去っていくのかもしれません。
明治5年生まれで女性初の職業作家である一葉さんは、昭和4年生まれで女子教育の先駆者である津田梅子さんにバトンを渡して役目を終えます。
さようなら、樋口一葉