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■ 其の325 ■ 『日本語の大疑問』より

📙去年のことです。島根県の有福温泉に行く途中、田舎道に本屋さんがありまし
 た。毎年書店が次々と消えていると言われるなか、こんな山中の小さな地区に
 書店が?と思ったのです。
 で、立ち寄ってみると、雑貨屋と書店を兼ねたお店でした。
 せっかくなので、なにか一冊をと思って買ったのが、
 『 日本語の大疑問 』国立国語研究所編 です。 

うしお書店


📙偶然出会った本ですが、その中から印象的な話を紹介します。

 アメリカで開発されたiPhone が日本で発売された当初、絵文字が全く使えず、視覚に訴えるコミュニケーションに慣れた日本人、特に若者にとっては味気ないものでした。
 当時日本の携帯電話会社で唯一iPhone を販売していたソフトバンクの孫社長は、日本でのiPhone の普及には絵文字の導入が欠かせないと強く主張し、絵文字を世界標準にするUnicode 化が進められることになります。そして2011年に
Unicode 化された絵文字がemoji としてiPhone に搭載されるようになると、一気に世界中に広がっていったのです。

発売当時の iPhone に絵文字はなかった P35


 私たちは、人とのコミュニケーションにおいて、特に意識することなく、相手や場面に応じた表現の調整を行っています。
 例えば、次の二つの文を比べてみてください。

 ちょっと窓を開けてもらえますか?
 ちょっと窓を開けてもらえませんか?

ともに依頼の表現ですが、「もらえますか」は比較的頼みやすいことを頼む表現、「もらえませんか」は頼みにくいことを頼む表現という違いがあります。

だれもが無意識にやっている「表現の微調整」 P52


 ところが、他人に身内のことを話す場合にも尊敬語を用いる地域が多くあります。例えば、関西では、軽い尊敬を表わす「ハル」を使って、

  おとうさんはもうすぐ帰らはります。 /   帰りはります。

のように、また、山口などでは尊敬の「テジャ」「チャッタ」を使って、

  おとうさんがうてじゃ。 /   おとうさんがうちゃった。

のように言います。
このような、共通語にはない敬語法の身内敬語用法は、沖縄・鹿児島から愛知・岐阜・長野・日本海側では新潟辺りまで、主に西日本に広く分布しています。

共通語の敬語のルール「身内を高めてはいけない」 P83


 手話は地域的、文化的な違いがあって、世界共通ではありません。
 たとえば、日本の手話〈男〉(親指を立てる)、〈女〉(小指を立てる) は、日本人なら手話を知らなくても「男」「女」の意味だと分かります。なぜなら伝統的に親指をたてるジェスチャーは「男、旦那」を表わし、小指をたてるジェスチャーは「女、愛人」を表してきたからです。
 しかし、この手話は外国人には通じません。世界の多くの国では、親指をたてるジェスチャーは「良い」「OK」の意味です。

日本の手話〈男〉は通じない P113


         本来の発音       本来とは異なる発音
1 全員      ゼンイン   19.0%     ゼーイン  81.0%
2 授業      ジュギョー  64.3%                   ジギョー  35.7%
3    唯一      ユイイツ   23.1%                 ユイツ   76.9%
4    洗濯機       センタクキ   16.7%              センタッキ 83.3% 

本来とは異なる発音の割合 P204



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