■ 其の246 ■ 悪は存在しない〔事件〕
📘先日、大誘拐 RAINBOW KIDS (だいゆうかい レインボー・キッズ)と
いう映画を観ました。話は、大地主で資産家のお婆さんを、若者三人が誘
拐するところから始まります。
📘北林谷栄演じるお婆さんは頭が切れ、肝も据わり、泰然としています。
戦争で三人の子を失いながらも生き抜いてきたお婆さんと、貧しさから一
攫千金を狙う浅はかな若者とでは、人間としての器が違います。
お婆さんは徐々に若者たちを取り込むと、みずから壮大な誘拐計画を立て
ます。そして彼らに指示し、警察の裏をかきながら、とんでもない偽装誘
拐事件を起こします。
病で先が短いと感じていたお婆さんが、冒険を楽しむかのように世間を巻
き込んでいくストーリーは痛快です。結果的に、事件を主導したのはお婆
さんで、若者たちは手下となって動かされていきます。
📘一方、捜査を指揮していたのは県警本部長役の緒方拳です。彼だけは事件
の真相を見抜き、最後に山奥に住むお婆さんの所へ会いにゆきます。
縁側で語り合うふたりは、互いにすべてを察します。ですが決して捕まえ
はしません。たしかに世間を騒がせたけれど、直接の被害者が出たわけで
はありません。お婆さんの見事な大芝居に一本取られたわけで、逮捕など
という野暮なまねはしません。おおらかなハッピーエンドでした。
1991年、30年ほど前の「映画」です。
事件において、確かに犯行は行われたけれど、悪は存在しなかった・・と
いう話です。
P.S. この映画が上映されたのは映像文化ライブラリーという公民館のよ
うな建物です。後半になると年配者がひとりふたりとトイレにたち、前の
扉から出て行くというなんともゆるい雰囲気で、そこがまたこの映画とマ
ッチしていました。
だけどこれがもし、相棒の杉下警部(水谷豊)だったり、科捜研の榊研究
員(沢口靖子)だったら、お婆さんを見逃すわけにはいかないな。とそん
な野暮なことを考えてしまいました。
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