FUJIFILMにはもっと動画に自信と拘りを持ってほしい。
僕はFUJIFILMのカメラを動画用に購入し仕事でも使ったりしている変わり者だ。仕事では機材をレンタルで揃える事が大半だが、愛用のX-H1は必ず現場に持っていく。X-H1が発売されてすぐに購入し、今日まで使い続けてきた。そろそろX-H2sに買い替えたいと思いながらも、何度も自問自答して踏み止まり今日に至る。
X-H2sから感じるFUJIFILMの動画へのチグハグな姿勢
X-H2sを発表した時、動画性能の進化をメインにアピールしていた。発売後は写真機としての拘りや楽しみ方を語るばかりで動画のことには全く触れなくなった。
後発のX-T5やX-S20は液晶画面に録画中を知らせる赤枠表示が可能になった。当然フラグシップ機であるX-H2sにもファームアップですぐに対応されるものと疑わなかったが、いつまで経っても対応されない。そんな態度に、FUJIはもう動画を諦めようと考えているのではないか?とすら感じてしまった。このまま動画としてFUJIのカメラを求め続けて良いのか不安が芽生えてしまった。だから今は買わない。欲しいのに買う気になれない。
動画カメラとしてFUJIFILMが抱える問題
細かい部分は過去に記事を書いているので、気になる方は読んでみて欲しい。
雑に言うとFUJIのカメラは動画カメラとしては不便なカメラだ。X-H1を購入したばかりの時は壊れてると思って良くサポートに連絡した物だ。舞台撮影など、録画中にISOなどで露出を頻繁に変えたい時などは特に厄介だ。挙動の読めないAFは使うのが怖い。ただそれは他の日本ブランドのカメラと比べてでの話で、ブラックマジック等と比べるとさほど変わらないと思っている。むしろ一応(割と)使えるAFとIBISがある分便利にすら感じる。ただブラックマジックは言わずと知れた動画のプロ集団で彼らが作るカメラへの拘りや経験は使えば感じる事ができる。AFは使えないがマニュアルフォーカスがやり易い。同じ不便でも質が違う。彼らが作るカメラは不便ではあるけど不安はない。シンプル故の安心感さえある。FUJIFILMの不便さは不安を誘う。
それでもFUJIFILMが好きな理由
前述の通り、仕事の撮影では大方機材をレンタルする。大体はSONY機をレンタルする。月に数回の撮影にはレンタルの方が所有するより安くて良い。常に最新の機材が使える事もいい。SONYはカッコいいし扱い易い。簡単に安定してそこそこ良い画が撮れる。しかし好奇心を誘ってはくれない。FUJIFILMのカメラは刺激的で好奇心を呼び覚ましてくれる。普段撮らないような被写体まで撮ってみたくなる。こんな撮り方成立するかな?どんなふうになるかな?ナドナド、FUJIFILMが撮影の楽しさを思い出させてくれた。その理由はフィルムシュミレーションにあるのだと思う。FUJIFILMの経験と拘りが遊び心の中に深みをもたらす。それを体験できる。他のどのメーカーでも味わえない楽しみがFUJIFILMにはあった。忘れていたワクワク感、撮影への無垢な楽しみを思い出せてくれたFUJIFILMに感謝する気持ちは今でも変わらない。僕は動画屋だけど、気が付いたら写真も沢山撮るようになった。だから、安心感と共に好奇心に満ちた刺激的なこのカメラで動画の撮影を心ゆくまでしたい。
チグハグな態度から感じるFUJIFILMのジレンマ
一昔前、写真機で動画を撮ると言うのは邪道だと言われていた。動画の機能を写真機に入れる事に凄い嫌悪感を示すユーザーいた時代でもある。動画機能の有無が値段にさほど反映されない事や、動画性能が向上する事で写真撮影の自由度をも増していく事が理解された昨今では、そうしたある意味硬派な人達を見る機会が少なくなった。むしろ最近の若者は、動画撮れないってことはフィルムカメラか?と勘違いするほど動画を撮れると言う事は当たり前なのだ。
FUJIFILMがX-pro1でミラーレスデビューした約10年前は、写真カメラに動画機能が入ることに嫌悪感を示す人が沢山いた時代。各メーカーはそんな声に耳を傾けず、赤いポッチのついた録画ボタンを一等地のポジションに配置したり、動画の性能をゴリ押ししていた。使わない録画ボタンなんかないシンプルで純粋な写真だけを楽しみたいユーザーは、カメラ探しがストレスになるそんな悲しい時代だっただろうと思う。僕は動画屋ではあるが、自分が写真家だったら録画ボタンはつけてほしくない。彼らの気持ちや美学は凄く分かった。
そんな中でレンジファインダー型のX-pro1を発表したFUJIFILM。もちろん動画性能は言い訳程度、赤い点の付いた場違いな録画ボタンなんて物は存在しない。X-pro1の道具としてのデザインやコンセプト、僕の心にも響いた。
それから10年。X-T5の発表時、このカメラは写真の為に作ったとアピールしていた。バリアンではなくチルトモニターにできた理由もそれだろう。かっこいいし良いことだと思う。
もしかしたらFUJIFILMはカメラに動画機能をのせることに未だ罪悪感があるのではないかと勘繰ってしまう。発売から一年程経ったX-Hシリーズも写真のために作られたカメラのような宣伝文句を沢山見るようになった気がする。X-T5の成功がそうさせているのかも知れない。X-T5がX-H2シリーズより売れている理由に動画アピールは関係ない。デザインコンセプトだろうと思う。X-Hシリーズよりコンパクトで、フィルムカメラを彷彿とさせるメカニカルな操作性や機械的なデザイン性が受けてるのだろうと思う。Nikonのzfの成功と同じだろうと思う。X-H2シリーズが売れていないのは、動画のアピールと追い込みが足りないからだと断言出来る。録画時に赤枠が表示されないというだけで、僕のように買い控えてしまう人はかなり多い。やらない理由が分からないからだ。僕ら動画屋にとっては意味が分からないカメラである。分からない物を買う人はそう多くないはず。
ただ間違いなく言える事は、X-H2sに使われているセンサーは、正に動画用で動画で真価を発揮する。僕らにとっては夢のようなセンサーだ。そしてそのセンサーを使っているカメラはX-H2sの他にない。
FUJIFILMに求めたい動画への姿勢
FUJIFILMのカメラでは、blackmagicRAWとProresRAWの2種類に対応していたり、オープゲートで撮影出来たりと、動画に対して消極的とは決して思っていない。Eternaも非常に美しい。F-logの評価も高い。本気で動画を楽しんでもらいたいという思いで作られていると感じている。だからもっと自信を持って動画をアピールし続けて欲しい。もしかしたら動画撮影の専門家がFUJIの社内にはいないのかも知れない。だから撮影体験などで謙虚になり過ぎて弱気になってしまっているのかも知れない。あのSONYですら、ミラーレスを始めたばかりの時はAFで動画を撮影するというスタイルをバカにされ続けていた時期がある。大判センサーの動画はマニュアルが基本な時代だったから。今となっては使えるAFが無いと動画撮れないくらいに思っている人がほとんどだ。FUJIFILMだって負けてない。エテルナは業界トップクラスの美しさと使いやすさがあるし、AFはSONYに及ばないけどフォーカスメーターは凄く面白い機能だと思う。マニュアルで使いたくなる。だからもっともっと胸を張って欲しい。他には無い楽しさがFUJIにはあるんだと信じさせて欲しい。
FUJIFILMにしか出来ない事は既に達成していると思っている。
FUJIFILMには出来ない事を不便だとか使えないだとかネガティブな物にするのではなく、不便さも楽しめるそんな愛されるX-H2sを目指し続けて欲しい。X-H2sは写真機としても当然優れているけど、動画機として開花しなければ本当の評価は得られないと思う。もっと多くの人にFUJIFILMを使ってもらいたい。
なんでFUJIFILMを使ってるの?と聞かれる事がある。僕が答える前にやっぱり色が良いの?と半分鼻で笑うような態度を取られた事がある。仕事で安心して使えないカメラだと思われている。本来良い色で撮影できないカメラなんて仕事でも使えないはずだ。色はAFなんかよりもよっぽど大事な価値基準だったはず。それを世間に思い出させて欲しい。
不便を楽しむ為に僕がこのカメラに求めているのは安心感。それは細かい設定方法やその操作方法、表示方法だけに留まらず、FUJIFILM社員や開発者の発言、小さな事一つ一つでその安心は出来上がると思う。
冗談のような無謀な提案
もし色々な事情でX-H2sを動画カメラに出来ないのであれば、是非ビデオカメラをX-H2sのセンサーで作って欲しい。動画撮影に特化した筐体やボタン配置、空冷ファン、メニューUI。このカメラが出れば動画機能に対するFUJIFILMの姿勢に安心できる。もしそんなXマウント版ビデオカメラがそこそこ売れたら、今度はGFXのセンサーで作ってみて欲しい。これはゲームチェンジャーになり得る怪物製品になると思う。だから、是非設計から参加させてもらいたいです!
ご連絡お待ちしております!笑