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動画屋目線でFX30とX-H2sを比較してみる

僕は動画屋でありながらメイン機がX-H1というとてもクレイジーなやつだ。X-H1を使う前はSonyのFs5をメイン機として保有していた。X-H1に乗り換えた理由は富士フィルムの色味に心底惚れたからだ。実際にX-H1をメイン機として使った感想は既に記事にしてあるので、興味のある人はそちらを読んでいただきたい。


富士フィルムの動画ユーザーは珍しいとはいえ、X-T4の発売以来徐々にその数を増やしているように感じる。X-H2sはそんな動画ユーザーにとっては待ちに待った最高の動画を提供してくれるカメラである。にもかかわらず僕は購入を見送った。さらには富士フィルムから卒業しようとすら考えるきっかけになってしまった。そんな中で突如として発表されたSony FX30は、Sonyのベストセラー動画カメラでもあるFX3の筐体にAPS-Cセンサーを載せてFX3の半値の値段でやってきた。Sonyという安心感。FX3で散々検証され尽くし、慣れ親しんだあの筐体。これも買わない理由を探す方が難しい、そんなカメラだ。X-H2sとFX30はAPS-Cサイズの本気動画カメラとしては真っ向からのライバル機種だと思っている。僕がFX30をモジモジして予約しない理由は、未だX-H2sを諦めきれないからだ。

そんな自分のためにX-H2sとFX30を冷静に比べながら頭の中を整理していきたい。


僕にとって重要なカメラの性能とは

動画をメインとして扱う僕にとって重要なカメラの性能をおさらいする。

  1. AF

  2. 手ぶれ補正

  3. 長時間連続録画

  4. 映像の色味

  5. ローリングシャッター

こんな感じだろうか。①AFは速度は当然だが、その挙動も動画撮影ではとても大事なポイントだ。どんなにAFが早くても、ゆらゆら動くピントは見てられない。フィックスで撮影している時など、意図せぬタイミングでピントを合わせ直されたりしたたまったもんじゃない。一度合わせたらじっとしていて欲しい。AFとMFを瞬時に切り替えられたり出来ればさらに使いやすい。

②手ぶれ補正はあるに越したことはない。ちょっとしたものを撮影するときにいちいち3脚をセットするのは面倒だからだ。予定にない絵を撮影しておくことはとても大事だけれど、現場では常に時間に追われている。予定外のショットに使う時間はそもそもないのだ。だからあっ!っと思ったらパッ!ととれて、10秒くらい息を止めれば使えるくらいの絵が撮れるだけでも十分だ。手ぶれ補正が入っていないと、あっ!と思ってパッ!っと撮影しても手ぶれが酷くて使えないなんてことも良くあった。予定にある時間の使える撮影は当然ジンバルや3脚を使用するから、手ぶれ補正にそこまでの性能は期待しない。だけど絶対にあって欲しい。そんな機能。

③舞台やセミナーなどの記録という仕事がたまにあるし、インタビュー撮影でも30分以上は余裕で回すこともある。録画時間の制限は撮影現場での可能性を狭めているように感じることもある。出来るだけ長く、安心して撮影をしたい。

④撮って出しの絵の色がどれだけ綺麗かはとても重要だ。編集の時間が大幅に短縮される。LOGで撮影することも一般化してきて、多くみるようになったけど、撮って出しの絵が綺麗なら、現場で全てを決め込んで作り、編集をした方が、作品の質や深みも増すように感じる。僕の様に優柔不断な人間はついつい後で編集できるからと、大事な決断を後回しにしてしまう。そんな人は現場でがっつり作り上げた方がいい物ができる気がする。そんなことをX-H1が教えてくれた。

⑤ローリングシャッターが酷い映像は四角い電車が新幹線のように斜めに映るし、早いパンニングでは時空が歪むような感じになる。ローリングシャッターの歪みが少ない映像を見ると、ただそれだけでとても質の高い映像に感じる。だから少しでもローリングシャッターが気にならないカメラが欲しい。これは憧れに違いのかも知れない。


実際に2機種を比較してみる

前置きが長くなったが、実際にこれらの点を比較してみようと思う。僕はどちらも所有していないので、色々な人のレビュー動画を参考にしたり、展示機を触った感想からの比較になります。


AF

ポテンシャルだけで言えばX-H2sの方がより正確で高速かつ高性能なAFを期待できるし、実機を触りに行くまでは、APS-Cだけでなく、ミラーレスカメラ最強AFがついに富士フィルムのカメラで使えると思っていたけれど、実際はそうではなかった。速度は確かに早い。とても正確。それ以外はダメだった。よくわからないタイミングでしっかり会っていたピントのフォーカスを合わせ直したすることがあった。もっと言えば、ターゲットトラッキングが使えない(写真では使えるのに)。なので顔認証でトラッキングしていたとしても、複数人人物が画面内に写っていると、誰にピントを合わせるかはカメラ任せになってしまう。ピントを合わせたい人に合わせられなければそんなに優秀なAFでも使えない。結局MFになる。その点FX30はSonyのカメラなので間違いない。触ったことないけど間違いない。センサー的には富士フィルムもほうがいいが、AFはセンサーの性能だけじゃなくソフトウェアの性能の方が大事なのかと痛感したし、富士フィルムがターゲットトラッキングを載せられなかったことを考えると、ソニーだけじゃなくニコンやキヤノンにAFで追いつくことはまず無いだろう。すごいけど使えない。X-H2sはそんAFだ。FX30はやっぱり使いやすいし、助かるなというそんなソニー自慢のAFだ。比べるまでもなくFX30の圧勝だ。


手ぶれ補正

これは大した機能を求めていないが、X-H2sの方が手ぶれ補正はよく効く。特に手持ちで3脚に載せているようなフィックス撮影をするときはとても良い。FX30は新開発の手振れ補正機構を搭載しているようだが、a7viと同じもの。ないよりマシなレベル。ただ、パンやティルトを手持ちでやりたいならX-H2sの手ぶれ補正はあまり良くない。画面がスキップするようにカクカク動いてしまう。その点FX30は長年のアルゴリズムの賜物なのかカクカク動くことはない。使いやすさで言えばFX30だとおもう。


長時間撮影

X-H2sでついに録画時間の制限が取れた。X-H1のときは4K15分でバッテリーグリップをつければ30分とあるが、実際バッテリーグリップをつけてもバッテリー運用では30分で撮れることなどほとんど無い。ただ外部バッテリーで外部収録している分にはX-H1でもちゃんと長時間録画できる。富士のカメラの筐体はとても信用しているからX-H2sで録画時間の制限が取れたことで、こんな安心感はない。さらにオプションでファンを取り付けることによってさらに安定して長時間の運用ができるということで心配性な僕にとってこれ以上ない。FX30はFX3と同じ筐体で、ファンが内蔵されているということ。既にFX3で散々長時間撮影時の注意点や挙動がレビューし尽くされている。高温モードで使えば大丈夫。こちらはどちらも十分だ。


色味

色といえばフジカラーだ。ソニーが長年カメラを作ってきたことでAFや手ぶれ補正を使えるものとして提供するように、富士フィルムは長年映画用のフィルムを作り続けてきた。そのキャリアや品質は伊達じゃないと富士の映像を見ればわかる。超優秀なカラリストに頼んでも、国内でこれほど綺麗に絵を作ってくれるのは何人いるだろうか。本当に贅沢なカラーバランス。自分でカラコレする気が失せるし、自分では無理なレベルの色味を富士フィルムはボタン一つで実現してくれる。色味のカスタムもしやすい。現場で色味を調整するときにも便利だし、安心してカメラに任せている。ソニーはあまり良くない。だけどFX30のCinema LineにはS-Cinetoneがある。これがいい。富士フィルムの様に楽しい機能ではないけれど、S-Cinetoneに設定しておけば業界水準の物は手に入る。お粗末な色味の素材を量産することはないだろう。あとから微調整も楽だ。出来ればX-H2sを使いたいが、FX30でも十分だろう。


ローリングシャッター

センサーの性能から、X-H2sは最強だ。いくらソニーのアルゴリズムが優れていても、この部分はセンサーの性能がモロに出るのだろうと実感した。ローリングシャッターの歪みに慣れてしまった僕の目にはX-H2sでは全く歪んでないように思う。ここまで歪まないセンサーはソニーのα1、ニコンZ9とX-H2sだけだ。X-H2sのコストパフォーマンスがどれだけ優れているかがよく分かる。とても惹かれる。電車をとりたくなる。手持ちで荒々しい撮影をしたくなる。だけどFX30も悪くない。でも歪む。悪くないけどちゃんと歪む。

つまりは、
X-H2sの動画がもつあの気品さと凄みは富士の色味とローリングシャッターの歪みがないことで爆上げされている。超優秀なカラリストと高価なカメラが持つ特徴を実現しているからだ。この値段でこれだけの映像を撮影できるのは考えられない。だけどAFが駄目だ。どんなに良いメンバーが揃ってもフォーカスマンが素人すぎて全てを台無しにしてしまう。どんなに綺麗な色で歪みのない絵を撮影しても、ピントが主体に合っていなかったり、寄り道してしまう様では駄目だ。X-H2sを使う場合はMFだ。だけど僕はAFを使いたい。ワンマンオペレーターは忙しいのだ。さらにおっちょこちょいだ。ピントに全集中しすぎて音声がおざなりになってしまったりする。だからカメラに助けてもらいたい。ソニーのカメラなら自分にとって十分だ。僕にはもったいないくらいな優秀なフォーカスマンだ。映像美はX-H2sと比べるとやはり少し物足りないが、だけどやっぱり十分に綺麗だ。

X-H2sには世界トップクラスのカラリストがついてくる
FX30にはなかなか気の利くフォーカスマンがついてくる

そのほかには、ソニーの強みとして魅力的なレンズがたくさんあること。APS-Cには電動ズームの18-105/4Gがある。しかも安い。ズーム表現が使えるというだけで表現の幅は爆上げされる。このレンズを基準に広角、望遠、単焦点と自分好みにゆっくり揃えていけばいい。しかもAPSC専用レンズだと価格が安い。富士フィルムにも16-120/4が新発売された。電動ズームなので動画屋をターゲットにしていること間違いなし。新製品だし広角も望遠もソニーより幅があるということもあって価格は倍以上する。ただそれだけの価値はあるように感じる。値段よりも気になるのは、富士フィルムのレンズは2.8や4通しのレンズでもズームをすると露出が変わってしまうことだ。動画メインの人には理解できないだろうが、SS/ISO/Fを同じ値に固定していてもズームをすると露出が変わる。パタパタっと変わるので撮影中ズームを使うのは避けたほうがいい。だけどこのレンズではそこら辺が改善されているらしい。このらしいというところが、心配性の僕にとっては困るのだ。令和も4年目になった今年のフラグシップ機にターゲットトラッキングAFを載せられなかった富士フィルム。動画の世界では当たり前が当たり前ではない。当然できるだろうと思っっていたことが、出来ない。本当にズームしても露出は変わらないのか。X-H2sを使うならやっぱり最新の単焦点レンズが安心だ。ズームは出来ない。でも絵はすごい綺麗。だけども自分の性格と相談するとどうしてもFX30が自分のカメラなように感じている。X-H1大好きだけど、そろそろ買い替えたいなと思ってる。

一点だけX-H2sにあってFX30にないものがある。それはEVF。X-H1を使い始めて、EVFで動画を撮る楽しさを知ってしまった。出来ればこの楽しさを失いたくない。X-H2sでターゲットトラッキングが出来るようになってくれたら、多分FX30と悩むことはなかっただろう。。。今後もアップデートでX-H2sにターゲットトラッキングがつくことはないのかな。。。。そんな儚い期待をしながらFX30の予約をモジモジしながら戸惑っている。

愛しているのに、一緒にいると辛い。そんなX-H2s
一緒にいると安心する、自慢の彼女。そんなFX30

僕の答えはもう出ているのかも知れない。
この記事書いてよかった。


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