やっぱり「桃太郎電鉄」は学びのゲームなので大人も子供もレッツプレイ!

 久しぶりの「桃鉄」である。

自分の「桃鉄」プレイ歴としては、「V(ブイ)」で桃太郎ランドに入り浸る程ハマり込み、「7」でギーガボンビーの対処に追われ、「11」でブラックボンビーにいたぶられるCOMを横目にプリンみたいな見た目の謎のキャラ・おいどんに美味しい思いをさせてもらったりしつつ全国を巡り、「15」で日本に隕石が落ちて日本列島が分断されるという大イベントにぶったまげていた。そんな思い出。
 「15」が最後なので最新作「桃鉄令和」は実に15年ぶりに遊ぶ事になったわけだが、土台が極端に言ってしまえば「双六」を遊ぶゲームであるからして、長年のブランクがあれども当時の感覚で遊び始めても、ストレス無く楽しめた。さすが「桃鉄」の安定感と言ったところだろう。
そこからプレイを進めていくうちに「15」から「桃鉄令和」の間に変化した部分・追加された部分を見つけて『今の桃鉄ってこうなのか』の意識アップデートを行っていったわけだが……昔から「ゲームをやると子供が馬鹿になるとかほざいてる奴は桃鉄を見てからモノを言ってくれ」と思って憚らなかった自分だが、「令和桃鉄」はあの頃から一段と洗練された、『楽しく学べる教材ゲーム』の面を見せて来たなと舌を巻いたのである。


 今作の桃鉄で一番「へぇ~!」となったのは『歴史ヒーロー』システムに関する部分である。特定の駅の物件を独占できると様々な歴史上の偉人が加勢してくれるシステムで、これ自体はシリーズにして19作目である「桃太郎電鉄2010戦国・維新のヒーロー大集合!の巻」にて初出となったものだ。
『赤穂』駅を独占すると加勢してくれる赤穂浪士や、物件から「これは来るな」と推測がつけやすい『さぬき』駅の平賀源内といったわかりやすい偉人から、『和歌山』駅の伝説の豪商・紀伊國屋文左衛門や『湯田温泉』駅で出現する明治・大正時代の政治家・井上聞多(いのうえもんた(※Wikiでは井上馨(いのうえかおる)となっている))というかなり渋いチョイスまで取り揃えている。


 その中でこれは!と唸ったのが、あの有名な西郷隆盛の扱いである。多くの人にとっての『西郷隆盛』のイメージというのは、上野恩寵公園に建てられた、あの犬を連れた恰幅の良い姿であると思う。画像検索で確認してみると「2010」の時点の西郷隆盛はこのイメージ通りのイラストで登場しているのだ。
が、「令和桃鉄」はそうではない。そもそも西郷隆盛の出現条件は『奄美大島』駅の独占である。この時点で「!?」となる人もいるだろう。私はなった方です。NHK大河ドラマの「西郷どん」を視聴した人はあるいは驚かないのかもしれないが。
あえて薩摩藩士として活躍していた頃の姿ではなく、いわゆる『島流し』を受けた身として苦難の中にあった頃の痩せ細ってぼさぼさに髭の生えた姿で出したのは、加勢イベントで出てくる西郷隆盛と深く関わりのある「敬天愛人」の四字も相まって、ある種の『真剣味』が感じられた。
ゲームは子供だけのものじゃないぞ、と。大人でも遊んで学べるという魅力が、見た目やシステムがどれだけ変われど「桃鉄」の根底にはあるぞ、という『真剣味』がそこに見えたような気がしたのだ。


 シリーズとして作品が積み重なった「桃鉄」の学びは他にもある。いわゆる時事ネタジャンルの学びだ。
 「令和桃鉄」の最新時事ネタは『高輪ゲートウェイ』駅。駅名に反対する声がニュースにもなったこの駅は、今作においてゲームを有利に進めるカードを売り買いできるカード駅のひとつとして実装される。ゲーム内年数が進むにつれランダムにカードを貰えるカードマスからグレードアップしての開業→販売カードの追加と数回に分けて紹介される&カード駅としての戦略的価値も上がるという優遇のされ方だ。
名前にひと悶着あってさんざっぱらな言われようをした『高輪ゲートウェイ』もこの扱いならば浮かばれるというものだろう。

 各駅で購入できる物件にも時代の変遷が見てとれる。検索したら丁度良い記事があったので是非こちらをご覧いただきたい。

『原宿』のタピオカティー屋・パンケーキ屋なんかは最先端の人気スイーツを反映させたわかりやすい時事物件だが、これを見ると『仙台』のLED会社も今の時代ならではな物件なんだなあという感じが強くなる。
『博多』駅では「初代桃鉄」の頃にはまだ存在していなかったプロ野球チームの存在が味わい深い。
『住宅地図製作会社』という名前で『小倉』駅に物件を設定された株式会社ゼンリンさんの喜びのツイートも見ていてホッコリする。

 変化は食品や会社ばかりではない。農林物件ひとつとっても、そこから『日本の産業の頑張り』が読み取れる。
「V」の頃はただ「水田」や「ジャガイモ畑」「ナシ園」とだけ書かれた農林物件たちは、『魚沼』のコシヒカリ水田や、青森は『弘前』駅のトウモロコシ・嶽(だけ)きみ畑のようにブランド農作物が丁寧にピックアップされている。
 「桃鉄」を遊べば日本都道府県の県庁所在地や位置関係がわかるのみならず、ご当地の各種産業の特徴まで知れるわけであり、小学生が学ぶ社会の授業はこのゲームで一通り抑えられるのだ。どうだ見てるか某県ゲーム条例を許した人類どもよ。(突然の怒り)(大いに私怨を含む)

 実はこの「令和桃鉄」、早期購入特典として初代桃太郎電鉄をダウンロードして遊べるんである。これはもう間違いなく今作最新の時事ネタを引き立たせ、そして初代と今を比べての日本の産業の移り変わりを楽しんでいただこうという狙いがあるのだろう。
機会があれば、過去作とそれをプレイできる実機を用意して物件を比べてみてはいかがだろうか。どっかでかの有名なTV番組『進め!電波少年』のパロディなイベントがあった覚えがあったり(たしか「V」でのランダムイベントだったはず……)と、そういった過去の時事ネタ発掘でも楽しめる、これは一度その流れが止まりつつも、シリーズを重ね令和にババンと帰って来た「桃鉄」だからこそ出せる魅力であると言えるだろう。


 今年は色々あって旅行に行きたくても行けない……!と鬱屈した想いを抱えた人も少なくなかったものと思われる。
その影響もあるのだろうか。「令和桃鉄」は良いゲームが沢山世に溢れ需要が分散するこの状況下にあって、累計販売本数100万本という明るいニュースを出すに至った。

2020年の年末年始も、旅行どころか帰省さえ憚られるような情勢になっている。
ならばせめて、今年の旅行はゲームで。「令和桃鉄」で全国津々浦々を巡りつつ、日本にまつわる知識と雑学を楽しく学ぶ旅に出るのをお勧めしたいと思います。


 私は当然の嗜みのように100年ソロプレイを楽しんでいる最中です。全物件独占は今作、難易度どうでしょうねえ。

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