焼肉と弟
おととい、弟からメールが来た。
「日曜、ご飯おごってよ」
「ええよ」
今日は焼肉を食べた。
弟は、大学進学を機に今年の四月から東京にやってきた。おそらく父に似たのだろう。あまり口数は多くない。僕も同じだけど、僕も父に似たのだろう。
焼肉屋の席につくと、さっそく弟からは愚痴がこぼれた。
「寮めんどい。早く出たいわ」
弟は僕と違って寮生活。
「あいさつせんといけんし」
「あいさつくらい普通するだろ」
「あいさつせんかったら怒られた」
「あいさつくらいしろや」
「俺あいさつとかしたくないタイプだし」
……。
「俺大学に友達おらん。
もう大きなグループができとって入れん。話せる人はおるけど。話しかけんかったらこうなった」
僕の欠点が共通していることに焦りつつ話を聞いていた。
「俺人間関係をシャットダウンしとるけぇな」
それはシャットアウトだろと、心の中で突っ込みを入れた。人前でシャットダウンって使いませんように。
肉が運ばれる前に、僕と弟は前掛けの両端にある穴に両腕を入れようとしていた。しかし隣のカップルを見ると前掛けに両腕を通しているように見えない。首の後ろで結っているように見える。その結わうひもが見つからない。
「あっ」
弟が声をあげた。
両端にある穴はただの切れ目で、切り取るとそれは結わうためのひもになった。
「大恥かくとこだったな」
まぁそんな感じで、元気にやっています。
焼肉おいしかった。
霜、降ってた。
おわり