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想像できないこともあるから、気をつけないと「英語のそこのところ」第154回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2018年2月15日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 たくさんのNative English Speakerと付き合いがあると、我々Native Japanese Speakerが特に問題ないと思っている事や言葉を不愉快に、もっと言うと差別と感じていることを打ち明けられます。
 外人なんてのはそのもっとも足るもので、いまだに使っている人がいるとヒヤッとする。外国人の略だからいいじゃないは通用しません。その理由は、本文をどうぞ。
 今回は大切な話なので無料です。
(著者)

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 この「ドリル25」ではアイザック・アシモフの「銀河帝国の興亡」を題材に英文を作っていきます。英文を作ってみたあと、ぜひ購入してください。面白いですよ。

実際、ハリ・セルダンが言ったように、サルヴァー・ハーディンが推察してきたように、アンセルム・オート・ロドリックが初めてアナクレオン(Anacreon)に原子力がないことを漏らしてくれた日以来、この最初の危機についての解決策は、わかりきったことだったのだ。いやになるほど、わかりきったことだったのだ。

暴力は無能者の最後の隠れ家である。

セルダン危機というものは、個々人によってではなくて、歴史的な力によって解決されるものなのだ。ハリ・セルダンがその昔、我々の将来の道程を計画したとき彼が頼ったのは才気に富んだ英雄たちではなく、経済学と社会学の大きな流れだった。

英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

【本文】

 もうちょっと前のことになってしまいましたが、年始(初出2018年)に差別のことが話題になっていましたね。年末恒例のお笑い番組で、あるお笑い芸人さんが顔を黒く塗ってエディ・マーフィの扮装をしたことが差別的表現にあたるのでは? ということで。
 私自身はその番組を見ていないので、どういう扮装だったかはよく判っていないのですが、その後のテレビ局から出たコメントで「差別の意図はなく、あくまでモノマネである」というのを読んで、ちょっと違うんだよなぁ~っと思った次第でして。

 以前、私が勤めていた英会話スクールには、さまざまな人種の講師たちがいました。もちろん、肌の色で採用を決めるなんてことはありませんから、コーカソイド、ニグロイド、モンゴロイドといて、それぞれに愉しくレッスンを提供してくれていたのですが、たまにその手の差別絡みのトラブルになることもある。肌の色の件ではないのですが、同じようなことがありまして。私も勉強になった覚えがあります。

「Didoさん、いますか?」
 金髪をソバージュにした背の高い白人女性がオフィスのドアを開けると顔を突き出すようにして、なかを覗き込んだ。きょろきょろとオフィスを見渡す。
「ふむ」
 ドキュメントを作る手を止めてDidoが大儀そうに立ち上がる。Dido、もうそろそろダイエットした方がいいぞ、靴が悲鳴をあげている。
「どうした? アンドリン?」
 オフィスのカウンターを回ってDidoが白人女性に話しかけた。早口の英語で何やらやり取りする。あまりに早くて、日本人には聞き取れないが、徳田の隣に座っているRichの顔はみるみる蒼くなっていった。
「どったの?」
 Richの様子を見て、徳田はRichに声をかけた。
「まずいよ、徳さん。このあと呑みに行くのは諦めた方がいい」
「なんでさ? おれの愉しみを奪うなよ」
 徳田はちょっと憤慨してみせる。
「トラブルってことさ、しかも最上級の」
「え~、今日はオイスターバーにでも行こうと思ってたのにぃ」
「諦めな、憑きがなかったね」
「ふにゃぁ」
 おっさんのくせに徳田は変な声を出して、背もたれに体重をかけた。鬼が出るか蛇が出るか、覚悟を決める。
 そのうち話が終わったアンドリンはほっとしたような表情をするとDidoに別れを告げてオフィスを出ていった。ちょっと涙ぐんでいるようにも見えたのが徳田には気になる。
「徳さん、ちょっといいかな?」
 案の定、Didoは真っ直ぐに徳田のところに行くと、声をかけた。
「ちょっとで済むの?」
「あれ、徳さん、リスニング力上がった? わざと聞き取れないぐらい早口で話したつもりだけど」
「まぁねぇ~、見えないところでコツコツ努力してるから」
 ずるしてRichから聞いていたことは秘密だ。
「それなら話が早いねや。山郷さんって人に電話してもらえるかな?」
「いや、ちょっと待て。詳しいところまでは判ってないから」
 DidoがニヤニヤしてちらっとRichを見る。お見通しだ。
「知らざぁ~、言って聞かせやしょうぉ」
 どこで拾って来たのか、Didoが弁天小僧の名台詞を呟いて会議室を指差した。

 アンドリンが困ってDidoに救いを求めてきたのは、新たに紹介された受講生の女性がレッスンのたびにアンドリンの鼻を褒めるということに関してでした。鼻を褒めると聞いて、なにが問題なのかと思われる方もいると思いますが、これ、コーカソイドの人々にとっては微妙な問題なんですね。私自身も知らなかったんで、聞きながらヒヤッとした。実は彼らにとって鼻が高いというのは触れられたくないことなんです。

「で、レッスンのたびに山郷さんから、『鼻が高くて羨ましい』とか『きれいな鼻ねぇ』って言われるんだって」
「なるほどねぇ」
 思い出してみると確かにアンドリンの鼻はいかにもコーカソイドといったふうに高く大きかったような気がする。
「でも、難しいなぁ。山郷さんにしてみれば褒めてるわけだからなぁ」
「そこだよね、問題は」
「うん」
 ふたりは同時に嘆息した。微妙な問題で頭が痛い。山郷さんにしてみれば褒めているわけだし、好意でしていることを注意されると人は往々にして、逆上するものだ。かといって、ほったらかしにもできる問題ではない。なにもしなければ、差別を是認する会社だという噂がNative English speaker のコミュニティに流れてしまう。
「しょうがないね。電話してみるか」
 徳田は重い腰を上げた。一気に体重が増した気がする。Didoと同じく靴の悲鳴を上げる。

「いや、ですから、山郷さまがアンドリンの鼻を褒めてらっしゃるのは判っているんです」
「そうですよ。あたしはね、アンドリンさんを見てすぐ思ったの。なんてきれいな鼻なんだろうってね。羨ましいじゃない。あたしなんて、鼻ぺちゃだし、カッコ悪い鼻だとずっと思っていたのよ。なので、見るたびに褒めてたのよ。それを、褒めるな、言っちゃいけない、なんて、ちょっとおかしいんじゃない?」
「確かにそうです。山郷さまがそういう気持でおられるのは私も判ります」
「じゃあ、いいじゃないの! あたしが何を言おうと、あたしの勝手でしょ? しかも褒めてるのよ?」
 だから、その褒め言葉が相手を傷つけているのだと徳田は叫びそうになるのを必死で抑えた。
「もし、万が一ね、褒めているのに、相手が傷ついているとしてもね、あたしには関係ないことですよ。だって、あたしにはそんなつもりはないんだから。相手が勝手に傷ついていることまで、あたしのせいにされてはたまりませんよ!」
「ええ、山郷さまがそういう意図をお持ちでないことはよく判ります」
「でしょう?」
 徳田は粘り強く相手と話し続けるしかないなと腹を決めて受話器を握り直した。長い夜になりそうだった。

≪言葉のうちにあるのは差異だけだ≫と言ったのはフェルディナン・ド・ソシュールですが、言葉が生み出す差異は、笑いや感動といった日常を異化するものを生みだして、人をリヴァイバルさせる貴重なものです。でも、その差異はあくまで横の差異を相手に生じさせるものでないと相手を傷つけてしまうことになります。そこでは、
話し手、送り手の「意図」は関係ありません。
あくまでも、
聞き手、受け手のなかに生じる差異を彼らが縦の関係と感じてしまえば、問答無用で「差別」とされる
ことなのです。そんなことを言うと何も言えなくなってしまうじゃないかとおっしゃる方もおられると思いますが、なにかを発言するということはもともとリスクを負うものです。そのリスクを負いながらも、できるだけ相手に横の差異を生じさせるような表現をして行く必要がある時代だなぁっと私は感じています。

(初出 水戸みかど商会ファクシミリ配信誌 2018年2月15日)

大好評! Kindle「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

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