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どうぞエポケーを「英語のそこのところ」第119回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年10月13日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 学校は何も教えてくれない! なんて歌詞がありましたが、私は大学で学んだことのおかげで、生きて来られたな、と思うことが多々あります。その中でも大切にしているのが「エポケー」。Native English Speakerとの付き合いにも、仕事にも役立っています。今回はそれを恩師の中村雄二郎教授に教えていただいたお話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル11」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっていきます。

映画などの日本語のセリフは、字幕作成者の素晴らしい努力のおかげで自然な日本語になっています。つまり、自然な日本語を英語にするときの最高のテキストなんです。

 この「ESM Practice 11」では、ノッティングヒルの恋人たちのセリフや地震の時に使う言い回しを英語にすることにトライします。

ズボンに本はないよ。(from ノッティングヒルの恋人)
じゃあ、警官を呼ぼうか、ズボンのなかに本がなければ、ぼくの誤解だ。謝るよ。(from ノッティングヒルの恋人)
判ったよ。もしズボンのなかに本があったらどうなる?(from ノッティングヒルの恋人)
う~ん。理想的には、僕が机に戻ったら、そのバリの旅行案内をズボンから取り出して、それを拭いて戻すか、買うかだね。また、あとで。(from ノッティングヒルの恋人)
構わないわ。盗む予定だったけど、今、気が変わったわ。著者のサイン入りね。(from ノッティングヒルの恋人)
ああ、止められなくてね。もし、サインのない本を見つけることが出来たら、それは絶対幸運の価値があるよ。(from ノッティングヒルの恋人)
(緊急地震警報が鳴った時に)地震がくるよ!

お愉しみに。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

 秋も深まって来て、過ごしやすい季節になってきました。なにをするにもいい季節ですね。読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋と色々な秋がありますが、私にとっては「熱燗の秋」でしょうか。あっつい中でキーンと冷えたビールを呑むのもいいですけど、ちょっと肌寒くなってきたところで高清水なんかを猪口につぎながら、そうだなぁ、肴は冷奴とか焼いた秋刀魚とかをつつく。幸せな瞬間です。

 もちろん、そこには自分の好きな本があってそれをほろほろと読みながら、またキュッと一杯。人と一緒に会話を愉しみながら呑むのももちろんいいんですが、毎日そうだときつくなってきちゃう。
 生来のサービス精神というか人の話を聞いちゃう癖というか、そういうものがあって疲れちゃうところがあるんですね。なので、相手のことを気にしなくていい本が私にとっては良い酒の友になっています。なんと言っても、ちょっと話に飽きたなと思ったら相手の気持を考えずにぱたんと伏せてしまえるし、手持無沙汰になってまた取り上げて読んだって「なによ、さっきはあたしの話を聞かなかったくせに」なんて拗ねずに相手してくれる。

 まぁ、もちろん映画だってそういうことはできなくはないんでしょうけど、さすがに人目が気になる。私がよく行く居酒屋にはタブレットをテーブルに立てて映画を観ている人がいたりしますけど、なかなかの強者だなぁって感心しちゃいます。かなりの度胸がいると思うんですが。でも、だんだんとグーグルグラスみたいな装着型のモニターが一般的になって、人目を気にしなくてよくなるのかもしれません。昭和な居酒屋でオジサンたちが熱燗やホッピーを手に宙を見据えている、なかなかシュールな光景です。

 そういうわけで、私は呑みに出かけるときに必ず本を持っていくんですが、この間ダイニングバーで初対面の女性と読書の話になったんです。
「あ、あたし、ちょうど読む本がなくなっちゃったんですよ。なにかお勧めあります?」
 って話をふられたんだけど、私も酔っぱらっていたんで不用意に自分がいま読んでる本は面白いよって言っちゃった。
「へ~、どんなの」
「『暗殺者の鎮魂』ってタイトルなんだけど」
 と言ったところで彼女、
「ああ、だめだめ」
 ですって。あらすじの「あ」の字も話させてもらえない。
「あたし、リアリティがないとダメなの。暗殺者ってそこらにいないでしょ」
 と来る。一刀両断とはこのことかってくらい、切り捨てられちゃった。
「君は『岸派』だね」
 と続けると「それってなに」て言われたんで説明する。
 これは私の好きな作家が言ってたことで、本好きの人は本という「船」で現実から離れたがっているらしい。でもって、その現実から離れる距離に好みがあるそうなんですね。
 現実という岸が見えるぐらいに離れるのが好きな方を「岸派」。そんな岸はまったく見えないぐらい離れてくれという方を「沖派」と呼ぶ。
 まぁ、いろいろな意見はあるでしょうけど、私からすると「ミステリー」なんかは岸派、「SF」は沖派なんだと思っています。
 で、一通り説明し終わったら、件の女性が、
「じゃあ、徳田さんは『沖派』なんですね。『暗殺者』だもの」
 と来た。
「そうだね。おれなんか『暗殺者』がすぐそばにいるかもなんて思っちゃうよ。ほら、そこのひとりで水割り呑んでる男性なんかそれっぽい」
「え~、そんなことあるの?」
「あるさ」
 と私はウケたことに気をよくして鼻の下を伸ばして、言わずもがななことまで言っちゃう。
「実は、おれは『沖』よりももっと遠くまで行く『遠洋派』なんだよ。だって君、本当は宇宙人なんでしょ? おれ知ってるよ。さっき転送されてきた」
「はあ?」
 岸派の彼女には、宇宙は遠すぎたようでした(笑)

 なんというか私にはこういうタガの外れたところがあって、常識的に言ってあり得ないという可能性も視野に入れてしまうところがあります。視野に入れるというと聞こえはいいけど、簡単に言うとただの妄想を真剣に考えているわけで、まぁ、「岸派」の人には呆れられる。高校の頃なんて夏目漱石の「坊っちゃん」の感想文に「青年という大人でも子供でもない人間像を漱石が西洋から日本に持ってこようとしたのは面白いが、世の中のすべての人間が青年のまま大人にならないという設定で、100年後の世界の話をすれば、もっと面白いと思った」なんて書いて、「君のいうことはわからない。子供のたわ言だ」と国語の教諭に言われる始末。当然、平常点は悪かったですねぇ。

「ああ、おれももう少し大人にならなきゃな」と思って反省するんですが、まぁ、子供のころからSF好きの母の影響で、SFばかり読んできたんだからしょうがない。困ったもんだなぁと思っていたんですが、恩師の哲学者である中村雄二郎教授にそれを大肯定されて天にも昇る気持になったことがあります。

「どうも私は妄想癖がありまして。そこに歩いている猫を見ても、もしかして猫じゃなくて人が化けているのかもと思ったりするんです」
 口ひげをしごいていた教授が、ほうという顔で徳田を見た。徳田は変なことをまた言っちゃったかなと首を竦める。教授は学生のいうことを頭から否定されることはないが、さすがにこれは甘えすぎだ。
「なるほど、そうすると、猫が人に化けていることもあるかもしれないね」
「え?」
 徳田は二重に意表を突かれて目を白黒させた。たしなめられなかったという驚きと同調されたという嬉しさだ。
「僕はその方がある気がするなぁ。ほら、観月ありさなんて猫の本性が出そうになっている」
 教授は人気の出始めたタレントの名前を出した。齢67歳にして興味の範囲の広さに驚かされる。
「ああ、たしかに。耳が出てますよね」

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