高島扇骨近江扇子のこと
手織り真田紐や政所茶の地元の方に伝統工芸品の話をしていたとき、ふと
「まぁ、扇子とかもそうなんよね。高島の扇子が日本の扇子の殆どをカバーしてるってね」
え?なんですかそれは。
早速、2009年製のナビを琵琶湖の対岸にある高島市にセットしました。
日本土産といえば『扇子』は代表的な工芸品のひとつ。
でも、日本製の扇子はとても少ないです。
過去筆者がギフト用に扇子を探していたときは本当に苦労したのを思い出します。
専門店でも取扱いは数本。
着物も近年では国外でつくられているとも伺いました。
高島市では安曇川沿いに植えられた竹で扇骨がつくられていました。
歴史は350年ほどと言われていますが、
25工程ほどある作業は手仕事の分業制です。
それぞれの専門の職人が丁寧に制作。
協力し合って地域社会ができていました。
継承者不足で、ある工程の職人さんが途絶えるということで、
急きょ扇骨職人の吹田さんのご子息が応援に行かれていると伺いました。
高島扇骨は、稀少な国産扇子の90%を占めており
京都へ卸せば『京扇子』、江戸へ卸せば『江戸扇子』となっていきます。
日本製扇子の特徴
日本の扇子は扇骨を挟み込む様に裏表とも紙が貼られます。
(近年国外でも日本式を採用されているそうです)
デザイン的に布地を使ったものも流行となっていますが、
2枚の紙を貼り合わせたものは、ゆっくり扇いでも
しっかり優しい風がきます。
筆者も比べて扇いでみましたが、その風は全然違うものでした。
また、閉じた時の天の部分がしっかり締まるのも特徴です。
扇子といえば、扇面のデザインに着目しますが、
繊細な扇骨仕事に改めて感動します。
なんとか守りたい日本の手仕事のひとつです。
蛇足
『伝統工芸士』という経済産業省の制度があります。
そもそも工芸品以前に、産業として30名の職人さんがいることが条件だそうです。
稀少な伝統工芸を継いでくださる職人さんをビジネスとは切り離した概念で守ることが必要だと感じています。
京扇子は伝統工芸士として認められていますが、分業で扇骨をつくられている職人さんたちは認定されていません。
焼き物などを入れる桐箱の紐を織る西村家の手織り真田紐もしかりです。
伝統工芸士を取り巻く職人さんが途絶えたら、伝統工芸品の製作も厳しくなることでしょう。
根底から伝統技術を保護していく視点が不可欠ではないかと個人的に感じております。
文化庁の伝統工芸・文化財保存技術制度で
美術工芸品保存箱紐(真田紐)製作のカテゴリがあるものの、
機械織が指定されておりました。
文化庁や皇族献上品、茶道具の箱紐を納めていた日本唯一の手織り技術を持つ西村家は入りませんでした。