Turning Red in TO with Domee Shi
ウクライナ情勢が世界に暗い影を落とすこの3月、トロントでは少しだけ明るい話題がありました。トロント出身のドミー・シー監督が手がけるディズニー&ピクサーのアニメーション長編映画『Turning Red』(邦題:『私ときどきレッサーパンダ』)のカナディアン・プレミアが一般公開前にトロントで先行上映としてダウンタウンのTIFF Bell Lightboxで行われました。
中国生まれ、トロント育ちのドミー・シー監督。トロント市にあるシェリダン・カレッジのアニメーション・プログラムを経て、ピキサーでキャリアをスタートさせ、『Turning Red』では長編映画を手掛けるピキサー初の女性監督となりました。ハリウッド映画界では珍しい女性主体のプロダクション・チームを率いるドミー・シー監督は、アニメーション業界だけなく、映画業界、ひいてはクリエイティブ業界全体で頑張る女性たちに希望の光を灯しています。
2018年10月、うちのシン監督とトロント国際映画祭における年間プログラムの一環として、カナダ出身の女性映画監督(Tiffany Hsiung, Joyce Wong, and Domee Shi)を招いたワークショップ(Connecting Across Cultures: Celebrating Asian Canadian Storytellers)に参加しました。当時のシー監督は、まだ第91回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞する前で、若くて素敵なクリエーターさんだなという印象しかありませんでした。そんな彼女がその翌年、可愛らしい小龍包を描いた『Bao』でアカデミー賞を受賞し登壇した時は、「まあ、あの子が!」という母心に似た感動を覚えたものです。
自称「オタク」を明言するシー監督のインスピレーションはもちろん日本のアニメーション作品の数々。『Turning Red 』のメイリン・”メイ”・リーのキャラクターにもそんな「オタク」で優等生という設定がされ、母親の期待に応えようとする北米アジア人の子供にありがちな’Model Minority'の一面も、ストーリーテリングの中に盛り込まれています。そんな母親との葛藤が自分の経験と似ているというToronto Reel Asian International Film Festival のマーケティング&コミュニケーションマネージャーChristine Vuの記事はこちらから。
CN タワー、Tim Hortonsのティムビッツ、TTCのストリートカー、チャイナ・タウンとトロント満載な『Turning Red』はエア・カナダともコラボレーション、大きなメイとレッサー・パンダを描いた飛行機が運航中です。
女性アニメーターとして順風満帆なスタートを切ったドミー・シー監督に続き、たくさんの才能ある女性クリエーターが、トロントから、世界から生まれること、そしてジェンダーや人種に関係なく様々な人が平等に才能を発揮できる社会になることを願いながら、トロントの4月を迎えます。
『Turning Red 』(『私ときどきレッサーパンダ』)はDisney+で配信中
Photos: Title & #1 Turning Red Canadian Premier @ TIFFBell Lightboxにて #2 Aeroplan Magazine by Air Canada