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次世代のワクチン?「DNAワクチン」ってなに?

「世界のイノベーション10」特集(2018年3月号)で掲載されている、面白そうな技術紹介2記事目。

今回は感染症予防のためのワクチンを素早く開発・製造できるようになる「DNAワクチン」について。

2020年8月現在もなお、新型コロナウィルス(COVID-19)の勢いは衰えることなく日本での感染者数がじわじわと増えてきています。第二波が来たとも言われていますね。

COVID-19に関する研究は加速していて、世界中の研究者たちが、ウィルスについて、治療法開発について、候補薬剤の有効性試験、ワクチン開発などなど全力で取り組んでいます。

コロナウィルスは風邪の原因ウィルスでもあって、普段はそんなに怖い印象はありません。(COVID-19も若い世代にはあまり影響を与えないで、無症状の人もいるそうですが...)ただ、どんなものかわからない未知のもの、何か起こった時の薬がないことに対しては怖がった方が良いとは思います。

「DNAワクチン」はCOVID-19の治療にも有効性が期待されていて、日本では臨床試験が行われています。どういうものか簡単にまとめておきましょう。

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◇ そもそもワクチンとは?

ワクチンの祖と言われるジェンナーは約200年前に牛の乳を絞る女性は天然痘になっても重症化しないことから、種痘の研究を始めます。

ワクチンの中身は弱毒化したり、死滅させた病原体、病原体の表面にある特定のタンパク質の断片(抗原)。

ワクチンを体に注入して、抗原を認識するように免疫系に教えるのが目的です。(最近のワクチンは病原体ではなく、抗原だけを投与するのが一般的になってきてます)

ワクチンを開発するのには、ウィルスを鶏卵に感染させて増やしたり、タンパク質精製したりと、時間とコストがかかります。


◇ 「DNAワクチン」とは?

この今までのワクチンの問題を解決するように出てきたのが、「DNAワクチン」、1980年代後半ぐらい(約30年前)から研究が始められたようです。

病原体の一部のタンパク質をコードするDNAやRNAを注入することで、体の中でタンパク質を作って免疫を作ることを目指しています。

「DNAワクチン」は

・製造費がタンパク質などを合成するよりも安価であること
・一つのワクチンに複数のタンパク質をコードするDNAを簡単に盛り込める
・早くワクチンを製造できる

というメリットがあります。

現在インフルエンザ用のワクチンは流行する型を予想して製造します。実際に流行する型が全然違ったらワクチンの効果はほとんどなくなってしまいます。

「DNAワクチン」だったら、流行している型をゲノム解析してワクチンを製造できるのです。(数週間で)

インフルエンザだけではなく、ジカ熱やエボラ出血熱などのウィルスが急に病原性を強めて広まった時にすぐに対応できるのが「DNAワクチン」のメリット。


◇ ただDNAを入れただけではタンパク質はコードされないのでは?

「DNAワクチン」ってどうやって投与するの?入れるDNAの構造はどうなっているの?と疑問がフツフツ湧いていきました。

投与方法

DNAワクチンは基本的には筋肉注射。(普通の予防接種などは皮下注射。)

筋肉注射はかなり痛いので、投与方法の改良に関する研究も進められていて比嘉注射や経鼻注射にできないか検討されているようです。


DNAの構造

入れるDNAは大腸菌由来のプラスミド。プラスミドに、CMVプロモーターなどの真核生物でも働くプロモーターとエンハンサーを導入したもの。

筋肉の細胞は活発には分裂しないと思うので、どうやってDNAが中に入るのか?プラスミドが入った一部の細胞がタンパク質を合成して分泌するんでしょうか?ちょっと詳しいところは謎です。


「DNAワクチン」が効くわけ

単にDNAを入れただけ(しかも免疫系では無い細胞に)で、免疫が確立されるのはどういう仕組みなんでしょう?

日本のJSTがERATOプロジェクトで色々解明をしているようです。
2018年の段階でわかっていることは、DNAの右巻き二重らせん構造が細胞内でTank-Binding Kinase1(TBK1)を介して自然免疫を活性化して内因性のアジュバンドとして作用する。そうです。

要は、詳しいメカニズムはこれから解明されていくという段階のようです。


◇ 新型コロナウィルスに対する「DNAワクチン」開発

新型コロナウィルス(COVID-19)に対しても、もちろん「DNAワクチン」開発が進められています。

2020年3月に日本のアンジェス(大阪大学発のバイオ企業)が大阪大学とタカラバイオと共同で「DNAワクチン」開発に乗り出すことを発表しました。

6月30日にP1/P2の臨床試験を開始することを発表しています。

2020年4月、アメリカではイノビオ・ファーマシューティカルズが臨床試験を始めています。

COVID-19に対する、治療法、ワクチン開発に関してはこちらをご覧ください。


次世代だと思われていた技術が、今現在こうしてCOVID-19と戦う技術となっているというのは科学の技術の進歩の速さを思い知らされます。

COVID-19に対する有効な治療法が1日でも早く開発されますように。


それでは、また!


2018「世界のイノベーション10」〜ヒト細胞アトラスプロジェクトについての記事はこちら

ワクチンに対するデマを考える記事はこちら


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