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『天気の子』のポスターに描かれてる「かなとこ雲」って何?
2020年8月30日(日)の夕方ごろ、関東南部で大きな雲(かなとこ雲)が出現して話題になりました。
この「かなとこ雲」、どこかで見たことあるなーと思っていたら...そう!映画『天気の子』のポスターに描かれている雲と同じでは?と思い、2019年10月号の日経サイエンスを引っ張り出してきました。下の写真は日経サイエンスに『天気の子』特集が組まれた時の写真です。
残念ながら『天気の子』は見ていないのですが、日経サイエンスの『天気の子』の特集には、「かなとこ雲」とはどんな雲なのか?などが書かれていたので、勉強してみたいと思います。
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◇ 『天気の子』には気鋭の雲学者が協力している
映画『天気の子』は未曾有の長雨に見舞われた異常気象の東京で、離島から家出をしてきた少年・帆高と不思議な能力を持つ陽菜がとる行動で東京の運命が変わる!というハラハラドキドキファンタジー。
新海誠と言えば、空や雲の描写がとても綺麗なことでも有名ですが、『天気の子』でも作品の大きな要素を占めているのが気象の描写のリアリティの高さです。『天気の子』では気象庁・気象研究所の雲研究者、荒木健太郎氏が協力する事でより世界観を強固にしています。
◇ 「かなとこ雲」と草原
「かなとこ」雲は「積乱雲」の一つ。では、積乱雲はどうやってできるのでしょうか?
夏の強い日差しで地面が熱せられる・暖かく湿った空気が流入するなどの大気が不安定な状態で発生します。
地面近くの暖かく湿った大気は軽いので上に行く
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山脈や冷気塊の上に乗り上げるとさらに上に持ち上げられる
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高度500m〜1000mを超えると水蒸気が凝結して水滴になる
雲粒になって黙々した綿のような形の「積雲」が誕生
「積雲」が発生すると次は「入道雲」ができます。
積雲内で水蒸気が水滴になる時に、熱が放出される
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雲が発達すると、雲の方が周囲の大気よりも暖かく軽くなり浮力を得て上昇する
上昇途中、雲粒は氷晶に変わるがその時にも熱が放出されて浮力は維持される
この「入道雲」がさらに発達して、雲の上部が毛羽状・繊維状の構造を持つようになったり、雷が伴うようになったものが「積乱雲」。
積乱雲は天に向かってどんどん伸びていく
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高度10km〜15kmに達すると、見えない天井に突き当たったかのように上昇をとめる
↓
水平方向に広がる
この見えない天井は「対流圏界面」。対流圏界面よりも上は成層圏でオゾンが存在しており、太陽の紫外線を吸収して大気を暖めています。そのため上に行けば行くほど気温は高くなっていきます。
この雲の頭が水平方向にどんどん広がっていった積乱雲を「かなとこ雲」と言います。「かなとこ」は「金床」と書いて、ハンマーなどで金属加工をする工具の一つだそうです。
『天気の子』の主人公・陽菜はこの「かなとこ雲」の雲頂に出現する草原で、長雨が続く東京に一時の晴れ間をもたらす能力を持つようになります。
◇ 「積乱雲」とマクロバースト
積乱雲の寿命は30分から1時間。その一生は3つのステージに分けられます。
1. 発達期
大気が不安定な場所で、暖かく湿った空気がなんらかのきっかけで持ち上げられる。上空で空気が冷やされて雲粒ができる。(積雲の誕生)
積雲は発達して入道雲になる。
2. 成熟期
入道雲が発達して積乱雲になる。さらに発達して対流圏界面にぶつかると、水平方向に広がって「かなとこ雲」となる。雲の中では、雲粒が元になって雨粒や氷晶、雪、霰などの粒子が形成される。この過程で周りの空気が冷やされて下向きの流れが作られて雨が降り始める。
3. 衰弱期
積乱雲内で下向きの流れが優勢となり、雲は次第に衰弱する。雨を含む下向きの流れはダウンバーストやマイクロバーストといった強い流れになり、地表にぶつかって突風をもたらす。地表にぶつかった流れは周囲に広がり、新たな積乱雲の形成が始まる場合もある。
マクロバーストは「夕立」程度では済まないほど猛烈な雨が突風を伴って降ること。
日経サイエンスの特集の最後には、荒木氏が映画『天気の子』をきっかけに空をみる人が増えるのでは?空をみる人が増えれば、積乱雲の発生など天気の急変にいち早く気付いて・身を守るきっかけになるのではないかという話をしていました。
今回のかなとこ雲の発生もTwitter上で様々な人が呟いていたようです。今年は、梅雨が以上に長かったり、夏が暑かったりとなんとなーく気候が変な気がします。そのきっかけも全部空が教えてくれるのかもしれません。
これからは夏から秋へ季節が移っていきます。空に浮かぶ雲も少しずつ変わっていきます。空をみる機会を増やそうかなと思ったり...
それでは、また!
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