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疾患研究にイノベーションを起こす?「ヒト細胞アトラスプロジェクト」ってなに?
2018年3月号の日経サイエンスに「世界のイノベーション10」という特集が組まれました。
この「世界のイノベーション10」は世界を変える可能性があるこれから成長していくであろう技術を紹介する記事で、日経サイエンスの発行元であるSCIENTIFIC AMERICANと世界経済フォーラムの専門家が選定するものだそうです。
2018年の3月に掲載されているので、2017年に注目された新しい技術が紹介されていますが、その中でも面白そう!と思ったものが3つあったので順番にご紹介していきたいと思います。
今回は「ヒト細胞アトラスプロジェクト」について。
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◇「ヒト細胞アトラスプロジェクト」とは?
2016年10月にロンドンで開催された世界をリードする研究者の合同会議で議論されて開始しました。
人の体には、脳、腸、肺、肝臓、腎臓、小腸、大腸、心臓、骨格筋、骨...などなど様々な組織があります。
それぞれの組織の中に、どんな細胞があって、どんなタンパク質を発現していて、どういう風に他の細胞と相互作用していて、細胞の遺伝子発現が変化した時にどう人の体が変化するのか?
を全て明らかにしよう!というプロジェクト。
つまり、ヒトを構成している細胞の地図を作ろうというものです。google mapを想像してもらうとわかりやすいかもしれません。探している場所をクリックすると、場所の情報(お店の名前、写真、営業時間、住所、電話番号)が出てきますよね。こんな感じの細胞の地図を作ってしまおうというプロジェクトなのです。
このプロジェクトが成功すれば、病気の進行と治療法に関する新たな理解が深まる、と期待されています。
「ヒト細胞アトラスプロジェクト」では得られたた全てのデータは、研究分野の制限なしに公開されるので、様々な研究分野で使うことができます。
https://www.humancellatlas.org/
◇なんで「ヒト細胞アトラスプロジェクト」が面白いと思ったのか?
「ヒト細胞アトラスプロジェクト」は、一つ一つの細胞で発現している遺伝子、タンパク質、代謝産物などを解析してマッピングしていくものです。
いわゆる「オーム」技術を統合するもの。
オームとは?
・ゲノム(遺伝子の全てのセット)
・トランスクリプトーム(遺伝子から転写された全てのRNA)
・プロテオーム(生物中の全てのタンパク質)
・メタボローム(細胞代謝に関わる糖や脂肪酸、アミノ酸など)
・フラクソーム(状況によって変化する代謝反応全て)
最近、高いインパクトの雑誌の論文を見ていると必ず「オーム」解析がやられています。いわゆるビックデータを扱った論文が多いのです。(single cell解析など)
でも「ビックデータ」を莫大なお金を使って作ったのにもかかわらず、結局は大したことを言えていないことが多いのでは?と疑問に思っていました。
プロジェクトとして「ビックデータ」を整理してくれる、ある組織にどんな細胞があって、どんな遺伝子発現があるのか?どんな代謝産物を出しているのかを情報として提供してくれるのであれば、研究者はもっと別のことを考えるのに時間を割けるのでは無いかと思います。
研究のベースとしてこういうものは、これからどんどん必要になってくる。研究者はそれを使ってさらに別のことを考えられるようになるのでは無いかと期待しています。
日本では、理化学研究所などがこのプロジェクトに参加しているようです。
それでは、また!
2018年「世界を変えるイノベーション10」2記事目はこちら↓
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