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夏休みの読書日記「まずはこれ食べて」

「三千円の使いかた」ですっかり人気作家となった原田ひ香さんの作品。

友人関係というのは、何でもあけすけに話すことがいいわけではなく、どんなに仲良くたって言わないこと言えないことはあるものです。

さらにその友人が仕事仲間になると、毎日のように顔を合わせなくてはならず、言えないことを抱えたまま長く一緒に時間を過ごすことになります。

そんななんとなくの閉塞感に風穴をあけてくれるのが家政婦の筧さんが作ってくれる料理。ものすごく凝ったものが出てくるわけではないのに、気づくとみんなでゴハンを囲んでいて、そこから世間話をしたり仕事の話をしたりしてギスギスしていた関係が円滑になっています。

…とはいえ。

実はあまり読後感が良くありませんでした。「言えないこと」にもいろいろありますけれども、人それぞれが心の奥にしまっている箱の中身って、一種のアイデンティティでもあるわけです。

それを日の下にさらして、中身をいちいち取り出して、みんなの前で全部詳らかにする、というのは、あまり気持ちのいいものではないのにな、と思ったりしました。

あとは、キーになっている影のキャラが気持ち悪かったことかな。

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