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水の生き物たち

毎朝起きて来て一番に水槽の灯りをつける。
水槽の透き通った水が好きなのだが、この頃ずっと茶色く濁っている。

以前はブラックウォーターを作るためにマジックリーフを浸けてエビに遊ばせていたものだが、この頃はそのエビも居ない。
ガラスにこびりついた藻を食べるフネアマガイも1匹では追いつかないほどに富栄養化が進み、藻が繁茂している。
水が濁る原因はなんとなくわかっているのだが、いつもついついエサをやりすぎてしまうのだ。

私が可愛がっている魚は基本生き餌しか食べないので、いつも冷凍の赤虫をやる。ただし、赤虫は肉食魚以外の食いつきもかなり良い。
他の魚の意識を逸らすために浮上性フレークを先に与えているが、それで補いきれるか心配な数の底棲魚がいる。

特に心配なのがいつも隠れている雑食性のドジョウ(のような魚)。
彼はとても食いしん坊で、初めてうちにやって来た時にはエビに食いついていてびっくりしたものだ。

今朝は久々に水槽の水換えをすることにした。
2つある水槽の一方では水底でカワニナだけがうぞうぞとうごめいている。
繊細な生き物は居ないので、カルキ抜きもしていない水道水をざばっと流し込んだ。

もう一方の水槽の水換えをしている間に小さなカワニナを見つけた。
そもそもあのドジョウ……いや、ローチをうちへ迎えたのはこのタニシを駆除するのにおすすめだと店員に言われたからなのだが、エビやコリドラスの卵が消えた以外に彼がタニシを駆除したような痕跡を見た覚えがない。

一時期増えすぎたカワニナを取り除くために、水槽をリセットする羽目になった。
水槽の水が茶色く濁り始めたのはその後からだ。

見つけたカワニナを専用の水槽へ放ちに行くと、水換えの済んだ水槽の淵にびっしりと親指程の大きさのカワニナが集っていた。急に水質が変わったことでびっくりしたのだろう。
それにしても気持ちの悪い光景だ。

何百というカワニナが水際に集まってもぞもぞとうごめいている。
思わず写真を撮ってみたのだが、ついでにカワニナがそんな事をする理由を調べてみると「水質が悪いのでしょう」という知恵袋の回答しか見つからなかった。
どう考えても換える以前よりは水質は良いはずだが……。

カワニナ自体は嫌いではない。
もぐもぐと分厚い唇を動かす様子は見ているとちょっとクセになるようだ。
そもそもは会社の上司に押し付けられたのがカワニナを飼い始めたきっかけなのだが、最近はどうにかその辺の川に捨てられないだろうかと考えている。
(生態系の破壊に繋がると理解しているので、実際にそんな事はしていないが、厄介者な事は確かだ)

カワニナという巻貝は蛍の幼虫の餌になる。
いっそのこと蛍の生息地へエサとして送り付けてやりたいところだ。
我が家にはキラースネールという貝を食べる貝が居るのだが、カワニナはどうやら相性が悪いらしい。
彼らは細長い口を伸ばして貝の身を食べる。
カワニナは蓋のある貝なので、キラースネールの口が入り込む余地を与えないのだ。
それどころか、近頃口の長いカワニナが現れ始めた。

最初はキラースネールの繁殖に成功したのだと喜んだものだが、どうやら足の形がキラースネールとは違っていた。
足だの口だの何を言っていると思われるだろうが、貝というのもよくよく観察すると個性があって可愛い生き物ではある。

カワニナはキラースネールの脅威を逃れるために、進化していたのだ。

我が家に来てからわずか2~3年足らずの間に、この小さな水槽の中で生物の進化が起こっていたことに畏敬の念すら覚える。

毎朝そんなことをぼんやりと考えながら、カワニナの水槽を覗き込んでいた。
長い時には水槽の前で1~2時間、カワニナのもぐもぐとせわしなくうごく口や、つぶらな瞳、案外しっかりとした触覚や、先の欠けた殻を眺めている。

カワニナの殻の先が欠けるのは、神様が踏んづけたからという伝説があるらしい。

水の生き物に思いを馳せるのは案外楽しいものである。

#朝のルーティーン

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