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田中一村展で、遠き若き日の画家志望の友を偲ぶ
田中一村という画家については全く知らなかった。
と恥ずかし気もなく書くが、情けない位の無知である。
このnoteでこれまでの短い期間ではあるが、多くの学びを頂いた。
今回、この誇り高き孤高の画家の存在については、お付き合いさせていただいている2人のnoterさんが展覧会に行かれて記事を投稿したので知った次第だ。
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◇展覧会に向かう動機
初めは、奈良をこよなく愛してやまない kumokichiさんの記事だった。
正直、田中一村については素晴らしい作品を残しているのはわかったが、残念ながら、読後さあ出かけてみようというところまで心は動かされなかった。
ところが、それからひと月ほどしてこちらの方が投稿された。
そう、料理の美と美味しさを追究されるプロフェッサー gingamomさん。
さらにこちらの記事を拝見しても、大変失礼ながら、実はまだ田中一村について心に火が灯ってはいなかった。
そして、恐る恐るこんなコメントを書いてみた。
先月、仲良くしているnoterさんが記事にしていて、初めてこの画家の名前を知ったというふとどき者ですので、コメントするのも気が引けるのですが、、、
恐らく胸打ち震わされてらっしゃる熱い思いはその場で作品を観た方でないと分からないと思いますし、全くの無知なので所感だけ書かせてください。
50にして住み慣れた千葉から奄美へ移住するという転機にも興味があります。
そこに至る思いとは何だったのか?
学生の頃、奄美でも徳之島出身の友がおり、画家を目指してした千葉の男と2人で東京駅から急行電車で26時間かけて鹿児島、鹿児島から安いフェリーで徳之島に渡ったことが思い出されます。
恐らくこの画家が亡くなった頃前後の事だと思い、我々はノンポリで、もしかしたら画家を目指していた友は当時、この画家を知っていたのでは?
と、はたと思いました。
もう会えないので確認する術もありませんが、こちらの代表作を拝見しながら南の島に思いを馳せました。
gingamomさんからの返信。
今年イチオシの美術展だと思います。
NHK日曜美術館が1984年に放送され、それが田中一村人気となったので、今年がちょうど40年、それでの大回顧展開催となったようです。だからNHKは力を入れていて今月もまだ関連番組の放送をするようです。
日曜美術館が3日と9日、面白そうな番組で"ザ・ライフ 無名 田中一村に魅せられた男たち"が9日に放送されますよ、ぜひ!
Eijyoさんや私たちより少し年上の1948年生まれの若者が一村を訪ねていき、その経緯は彼らの友人、笹倉さんが彼の絵を観て、ぜひ観にこいと誘い、そして田辺周一さんが写真を撮ったから一村は世に出たわけです。
彼らと同世代だから余計に時代の空気感がわかるんですよね。
ましてやEijyoさんたちは徳之島まで旅されたのだから、聞いていてあの時代が懐かしくなりました。
ぜひ番組をご覧ください。
私はもう一度都美に行く予定です。
兎も角、展覧会に行って来た方がこれほどまでに心を熱くしているのであれば、これは間違いない。
そして、今はもう連絡が取れない若き日の友との思い出が鮮やかに蘇り折り重なった。
自分でコメントしておきながら可笑しな話だが、遠い昔、画家志望の学友と遠路奄美徳之島に渡ったひと場面ひと場面が昨日の事の様にクルクルと色褪せたスクリーンのように脳裏に映し出され、暫くじんわりと物思いに耽ってしまった。
さらには、NHKの放送を観て釘付けになった。
テレビ画面を通してでも感ずる、作品が持つ嫋やかさ、繊細で巧みな描写の数々に圧倒されまくった。
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◇学友Yとの奄美・徳之島への旅
ここで、学生時代の友人Yと2人で旅立った南の島奄美群島のひとつ徳之島への旅を大筋だけお話しておこう。
Yは、大学の同級生で千葉県出身、画家志望、いつも画材を担いでいるような男だった。
我が道を行くタイプで我々軟弱な集まりとは一線を画す、ストイックな男で普段は寡黙であるが、一旦火がつくとまるでキャンバスに絵の具を落として作品を完成させていくかの様に一気にどどどっと流れるような話し方をする珍しい奴だった。
何かに信仰心があるわけではないが、神についての語りには真に迫った話を私以外の3人と話し込んでいる空間に一度だけ付き合い、垣間見たことがあった。
長髪でフォークに染まっていた私とそんなYが何故、旅に出たのかは未だに分からないが共通の友が徳之島出身のDという個性的な男で、夏休み期間を利用して帰省しているDの故郷を訪ねようということで一致したと記憶する。
なにしろ学生で金もない時代だったので、全て安仕立ての旅だった。
東京駅発西鹿児島行き「急行桜島」という電車が当時はあり、朝10時に出て、終着駅に着くのは翌日のお昼頃。所要時間約26時間の長旅だ。
だが、実際は固い木の直角な椅子に我慢出来ず、途中神戸・六甲ではYの絵のお師匠さんのところに立ち寄り、そして姫路でも姫路城見たさに下車することに。
その後、西鹿児島で大口市出身の友Nと合流、市内観光をちょっとだけして、鹿児島港からフェリーのエコノミーで28時間かけて徳之島に向かう行程だった。
いずれにしても、共に奄美徳之島に向かった千葉出身の画家志望Yの頭には、友だちDが実家に帰省しているので強く誘われたという事実があったにしても、恐らく田中一村の存在を意識していたに違いないと今回密かに思った次第である。
それと不思議な相似点なのだが、Yはどことなく若き日の一村に風貌が似てきりっとしており、大学こそ違え中退してしまっているところも同様だ。
ストイックに我が道を行くところも人間を分類分け出来るとしたら、同じ分類かもしれないと思えるのだ。
(※田中一村の熱烈なファン、専門批評家の方には怒られそうですが、敢えてこの様に書かせて頂いた。)
だがしかしである。
Yは2年の時に中退し、昨年とんでもなく久しぶりに手紙を送ったが宛先不明、居住者と一致せずで戻ってきてしまった。
今となってはYに会う術がないので、悔しいかな迷宮入りの話ではある。
こんな遠い若き日に南の島に渡った時間と友との語らいに思いを馳せていたら、尚更、田中一村の作品、人物に対する興味が沸々と強くなっていった。
この旅については、いずれ改めて記事にしたい。
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🔶田中一村展
心は決まった。
もうこれは、展覧会に行くしかない。
数日経って、予約を入れスタンバイ完了。
gingamomさんに倣って当日午後15時30分頃到着を狙って出かけた。
上野に着くや、結構な人出だ。
上野の森では紅葉が始まっていた。
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東京都美術館に入館すると、15時過ぎたにも関わらずそれなりの賑わいだ。
中高年以上が多いが中には若いカップルもチラホラいたりする。
手荷物、上着をコインロッカーに預け展示会場に入場した。
展示作品は全300点を超える。
幼少期から奄美での最晩年までを3部に分け、展示している。
1作品目から展示室の作品に沿ってずらっと人の列が続いていて、1作品を鑑賞のに隈なく目を凝らしたら、恐らく5時間はかかるであろう。
閉館までは2時間強。
これは申し訳ないが、心に留まる作品中心で鑑賞いくしかない。
そう思って順を追って端折らないで観て行ったが、1作品も飛ばさずに最後の晩年の代表作とされる「アダンの海辺」と「不喰芋と蘇鐵」までしっかり目に焼き付けることが出来たのでご指南頂いた来館時間はとても有効だったと思う。
ありがとうございました。gingamomさん。
ここからが本題であるが、所感含めて手短に書かせて頂きます。
撮影は一切不可なので、田中一村展👈こちらから作品の一部をどうぞ。
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🔶第一章 若き南画家の活躍 東京時代(1915~37年)
幼少からの「米邨」の号を受けて名乗っていた東京時代。
南画家としての活動していた。
「菊図」👈(以降もアンダーバークリックしてスクロールください。)
8歳にして、この出来栄え。
自分自身、そして周りにいる8歳児を思い浮かべると、まるで想像がつかない世界だ。
彫刻家であった父親より、幼き5歳頃から書画の薫陶を受けていた事に他ならないのだろうが、黙ってこの書画を見せられたら、まさか8歳児が描いたとは誰もが思わないはずだ。
「椿図屏風」👈
24歳時の作品だが、これまでの画風からがらっと変わり、色彩豊かで鮮やかな作品となっている。
自らは23歳で南画と決別し、20代は空白の期間と語っていたようであるが、こちらの作品のように完全に断ち切ったわけではなく、ひたむきに創作に励んでいたのである。
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🔶第二章 千葉時代(1938~58)
そして、27歳の時に父親を亡くし、親戚を訪ねて千葉へ転居。
1947年39歳にして柳一村と号を改め、初めて一村を名乗る。
ここで川端龍子主宰の青龍社展に初入選を果たした。
「白い花」👈
これが中央画壇で一村が入選した唯一の作品となっている。
私が個人的に一番印象に色濃く残ったのは、「秋の色」という作品だ。
残念ながら公式ホームページにないので、こちらをご覧願いたい。
「秋色」👈右側の作品。
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出典:佐川美術館より引用
この画像だけでは感じ取り難いと思うが、数種にわたる色づいた秋の野の植物の葉を一枚一枚、細やかな色づかいで描いている。
赤や黄や緑や茶の濃淡のつけ方に見惚れて、ひとりの人間が何かを描きたいと思った時に、これほどまでに克明に描き切れるものかと呆れ返るしかなかった。
カメラのシャッターを切るが如くに、キャンバスに表現する。
このように描かずにはいられない性なのだろう。
それは、もしかしたらこの画家の原点として全ての作品に通ずることかも知れない。
私は、奄美の作品以外では、この作品が一番印象に残った。
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🔶第三章 己の道 奄美へ
47歳の時、九州、四国、南紀を旅した時に旅土産として送られた色紙絵にはこれまでとまったく違った明るく開放的で大らかさが感じられる。
以降の奄美での数々の大作を暗示させる作風だ。
「ずしの絵」👈
40代半ば、日展や院展に全ての作品が落選し失意のどん底にあって、50歳になった時、それらの作品を自ら葬り去ったとされる。
ここを転機として、千葉の家も売り払い当時日本最南端であった奄美大島に渡った。
中央の画壇に対する思いを一切断ち切り背を向けて、単身南の島に渡る。
そんなやるせない思いを抱いて、向かった先では南国特有の陽光燦燦と煌めく気候風土と人懐っこい人達が迎い入れてくれたのではないだろうか。
それでも、経済的な事情か一旦千葉に戻ったりはしたようだが、最終的には働き口も奄美で見つけて切り詰めた生活だったと聞いているが、創作に情熱を注ぎ込んだとされる。
・「奄美の海に蘇鉄とアダン(昭和36年、53歳)」
・「初夏の海に赤翡翠(昭和37年、54歳)」
・「アダンの海辺(昭和44年、61歳)」
・「枇榔樹の森(昭和48年、65歳)」
・「榕樹に虎みみずく(昭和48年、65歳)」
・「不喰芋と蘇鐵(昭和48年、65歳)」
・「海老と熱帯魚(昭和51年以前、67歳頃?)」
HP掲載のこれらの作品をまずはご覧願いたい。
私はここに掲載されてない作品も含めて奄美での全作品には圧倒されまくっていた。
軽々しく私なんぞが表現する程、生易しくはないが、敢えて、一言だけ語らせて頂くとするとしたら、こうだ。
南国特有の植物を中心にモティーフにして、嫋やかではあるけれど、生命が本来持っているダイナミズムが迸っているありさま。
そして、「生きとし生けるもの」の尊さを感じずにはいられなかった。
創作に自らの命を捧げるかの如く、持てる全精力を余すことなく振り絞って産み出された魂の生産物の数々である。
昭和52年(1977年)9月11日、夕食支度中、心不全により逝去。一村69歳。
余りにも寂しい最期だが、創作に魂を注ぎ続けた人生だった。
南の島奄美に向け 合掌
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画像として収められたのは、展示室を出て最後のタペストリー2枚だけ。
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Special thanks to kumokichi & gingamom.
この素晴らしい画家の展覧会をお教え頂き、導いていただいたkumokichiさん、gingamomさんに感謝を捧げます。
※同展覧会に訪問したのは11月半ばであり、12/1をもって開催終了しているのでご注意願いたい。
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折角なので、浅草まで足を伸ばして蕎麦の名店に寄っていこう。
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🔶並木藪そば
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夕飯時期だったので、立て込んでいると思いきや来店客は1組だけ。
すんなり入店し、テーブル席に座り、メニューを覗く。
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蕎麦前は、残念ながら少ない。
板わさとぬる燗を所望。
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品数が少なく、ちょっとガッカリだが、樽酒をお燗するのは初めてだ。
これ、意外とイケる。
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誰が書いたか訊き忘れた😩
天婦羅が届いた。
海老が小ぶりだと思ったら、甘海老を2尾対にして揚げている。
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ざるそばも届いたので、さてシメに入ろう。
辛目の濃口なタレだ。
麺はシコシコと。二八と思われる。
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anne_coさんが記事で気づかせてくれた、ざるの形状。
普通は盛り上がっている方が下だが、こちらでは逆で上が盛り上がっている。
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あんこさーん、おんなじ、同じざるだよー。
北海道・江別市 杜の蕎麦屋「コロポックル山荘」
勘定済ませ、外に出たら暖簾を下げられてしまった。
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と思っていたら、どうぞ!
と声掛けてもらい、店内で撮らせていただいた。
親切な店員さんだ。
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最後に浅草寺をぷらっとして帰りましょう。
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🔶浅草寺
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夜も更けたので、インバウンド観光客がもう少ないだろうと思いきや、本堂までオールJAPANではなく、オールFOREIGNER。
日本語は全く聞こえてきませんでしたね。
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本日の戦利品。
いや、お土産。
上野駅構内で買った「らぽっぽファーム」のポテトアップルパイ。
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まったりとして、たいへん美味しゅうございました。
長い記事に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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