永寿荘で働く従業員の顔Vol.4 ご福あげお 池澤直樹さん<後編>
こんにちは、副理事長の永嶋です。今回は、前回に引き続き特別養護老人ホームご福あげおで介護主任を務める池澤直樹さんのエピソードをお届けします。
後編となる今回は、ご福あげおで始めた職員との一対一でのコミュニケーション、「1on1ミーティング」についてご紹介します。
ポイントは「相手の話を聞ききる」「先入観を持たない」「相手の負に引きずられない」
前回お話したように、ご福あげおのオープニングスタッフは8~9割が中途採用で新しく入ってきた方々で、EIJUSOグループの文化を知らない人が大半でした。
そうした職員をまとめるためにも、オープンから1ヵ月後には一対一でのコミュニケーションを開始。現場を回りながら一人ひとりと話をし、個々の仕事や人間関係での悩みを聞き始めました。
このときから重視していたのは、相手の話や意見を「聴ききる」こと。私が意見を言うのではなく、極力その人が意見を言いやすい場にするよう意識していました。
あとは先入観を持たないこと。職員間でトラブルがあったと耳にしていた場合も、あえてそのことをイメージせずに話を聞くようにしていました。勝手に予測をしてしまうと、受け止め方に偏りが出てしまうと思ったからです。
始めた当初は毎日のようにこのコミュニケーションを行っていました。正式な場を設けるというよりは、現場を回っていて気になる人がいたら声を掛けるという具合ですね。人によっては月に10回以上も時間を使ったことがあります。1回の時間も、長いと1、2時間にも及んでいました。
ご福あげおがオープンしたばかりで関係性ができていない時期だったこともあり、話の9割はネガティブでしたね。そのため、聞き手の自分にネガティブな感情が残らないよう、どうその悩みや課題を解決できるのかと前向きな受け止め方をするようにも意識していました。
初めて話を聞く相手のときには緊張感がありましたが、辛いとか、やりたくないと思ったことはなかったですね。職員が抱えるモヤモヤの芽が小さいうちに摘みたいと思い、ネガティブな気持ちが大きくなってしまう前に先手を打つことを徹底していました。
自己流の面談に1on1の仕組みをとり入れ、ルール化
2018年度、法人内での取り組みを発表する場でこの面談について話をしたところ、「それって1on1だよね」と言われました。調べてみたところ、1on1は大企業も始めている取り組みで、まさに私が行ってきたような内容だったのです。
ただ、私が行っていたものは、特に目的、実施頻度、実施時間を決めていませんでした。今後も長く続けていくために1on1の仕組みをとり入れ、1回15分程度、1ヵ月に1回は行うことに変更。前回決めた目標の進捗報告、現状の取り組み内容、来月の目標設定と、話す内容にも一定の軸を設けました。
2019年、ご福あげおは台風の被害を受けて体制に大きな変動があり、それが落ち着いたと思ったらコロナ禍に突入してしまいました。その間も面談は続けてきましたが、ルール化した新しい仕組みできちんと始められたのは2021年です。
リスタートに合わせて体制も整え、現場職員の1on1は現場リーダーが担当し、現場リーダー11名、リハビリ指導員1名の1on1は私が担当しています。1on1の取り組み自体には現場リーダーからも賛同を得られていましたが、目標設定の話し方を身に付けてもらったり、仕事が忙しいときでも1on1の時間を割く意味を理解してもらうのに少し時間がかかりましたね。
一人ひとりに時間を割くのは、たとえ15分であっても大変なことです。ただ、かけた時間がきちんと自分に返ってくると感じています。信頼関係ができていくことで、トラブルが起きたときの対処もしやすいです。人間関係が円滑になり職場の雰囲気が良くなることは、個々の働きやすさにもつながると感じています。
資格・スキルを身に付け、働き続けられる個人・組織のコンディション作りを支えたい
これまで相当な数の面談をしてきたなかで、メンタル不調の人にも多く接してきました。自分で感情とメンタルをコントロールできる人はいいですが、苦手な人はどうしても引きずってしまい、やがては離職につながってしまいます。
せっかく介護の仕事をしたくて入ってきたのに、メンタル不調で離れざるを得なくなるのはもったいない。そのため、こうした人のサポートもできないかと思い、今は資格やスキルの習得をしたいと考え、いろいろな情報を集めているところです。EIJUSOグループとして何が必要なのかも考えつつ、検討しています。
引き続き、ご福あげおの働きやすい環境作りにも取り組みながら、今後の活動について考えていきたいです。