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スマブラ界隈でも活きる!翻訳ツールの使い方

突然ですが、みなさんはこんな悩みを抱えたことはありませんか?

「海外勢と交流したいけど、どう英語にすればいいのかわからない」
「翻訳ソフトを使ってみたけど、うまく伝わっていない気がする」

Youtubeのコメント欄やX、Discordなどで海外勢とコミュニケーションを取る際、翻訳ソフトは間違いなく強い味方です。しかしながら、昨今のAI技術の発展により一般的な会話における翻訳ソフトの信用性は高くなった一方で、スマブラなど専門性の高い分野においてはまだまだ翻訳が上手くいかないケースが多いように感じます。英語→日本語の翻訳の場合はある程度意味の推測ができますが、日本語→英語の翻訳は特に難易度が高く、上手く翻訳するためには経験やコツが必要だと考えています。

そこで今回は、なぜスマブラなどの分野において翻訳ソフトが機能しないのかを解説し、その上での翻訳ソフトの活用方法を紹介します!本記事では日本語から英語への翻訳にフォーカスして解説していきますが、英語から日本語への翻訳や、他言語への翻訳にも活かせると考えています。



スマブラにおける機械翻訳の難しさ

スマブラという分野において、翻訳ソフトを使用しても日本語から英語への翻訳が上手くいかない原因は大きく分けて3つあると考えています。それぞれ見ていきましょう!

※スマブラプレイヤーのXのポストの自動翻訳を例に挙げていますが、日本語をそのまま機械翻訳すると上手くいかないことを示すためであり、ポスト主を批判する意図は全くありません。

1. 日本語は「空気を読む」言語

まず、日本語という言語そのものが英語に訳しづらい、という問題があります。その理由のひとつが日本語の「ハイコンテクスト性」です。

ハイコンテクストな言語とは、言葉の意味合いがコンテクスト(=文脈)や非言語情報に大きく依存するような言語のことです。このような言語で適切なコミュニケーションを行うためには、言語情報よりもシチュエーションや話者同士の関係性、文化的背景などが重要になってくることも多く、「空気を読む」必要があります。

日本語:
「フリー対戦しませんか?」
「すみません、もう帰ろうと思ってて…」(遠回しな辞退)
英語:
"Do you wanna play some games?"
"No, Sorry. I gotta go home."(直接的な否定)

たとえば、日本語にははっきりとした否定の意思を言葉にしないことが多いという特徴があります。この例文の「帰ろうと思っている(のでフリー対戦をするつもりがない)」というような、関連情報を提示することで答えを察してもらうコミュニケーションは日本語では一般的ですが、英語では"Yes", "No"の意思表示を明確にすることが多いです。

日本語:「今週のスマパ、来る?」(主語の省略)
英語:"Are you coming to Sumapa this week?"(主語 "you" が必要)

また、主語や目的語の省略が多いのも日本語の特徴です。この例文の日本語では文脈的に「誰が」スマパに行くのかが明確なため、「あなた」という主語が省略されています。しかし、英語では主語を省略することが文法構造上難しく、ここでは主語"you"を入れるのが自然です。

このツイートの一文目「ウメブラSP11優勝しました」は主語が省略されていますが、翻訳された文章を見てみると"We won~"と主語が補完されています。実際に優勝したのはミーヤーさん一人なので、省略された主語は"I(私)"であるはずですが、Google翻訳は"We(私たち)"が主語であると判断したため不自然な翻訳になっています。

このように、日本語のようなハイコンテクスト言語では、わざと遠回しな言い方をしたり、主語や目的語の省略が多くなることから、言語情報を主な手がかりとする翻訳ソフトとは相性が悪いと言えるでしょう。特に英語は日本語と逆の「ローコンテクスト」な言語であり、日→英の翻訳においては、原文で省略されている部分を復元しなければいけない場合がとても多く、翻訳を難しくしています。

2. 専門用語は機械翻訳できない

個人的に、これがスマブラにおける日英翻訳の最大の壁だと思っています。スマブラには数多くの専門用語が存在します。ステージやキャラクター、技の名前などの公式名称だけでなく、テクニックの名称や略語など、スマブラや格闘ゲームの競技シーンでのみ浸透している単語も多いです。どちらも日英で直訳として対応していないことがほとんどで、翻訳ツールで正しく翻訳することは難しいです。

例として、「復帰阻止」を翻訳してみましょう。スマブラの公式用語ではありませんが、競技シーンにおいては基本的な概念であり、使用頻度が高い単語です。英語では”Edgeguard”または”Ledgeguard”と呼ばれています。

これをGoogle翻訳とChatGPTの翻訳にかけてみると、こうなります。

このように、なんとなく意味は通じそうなものの、英語圏のスマブラコミュニティで使用される"Edgegurad", "Ledgeguard"は出てきません。

次に、クラウドの「凶斬り」を翻訳してみましょう。スマブラの競技シーンにおいて使用率が高いキャラクターの主要技であり、名前を呼ぶことも多いでしょう。英語では"Cross-Slash"であり、漢字に馴染みがない英語圏に向けたローカライズがなされています。

これを機械翻訳すると、こうなります。

ChatGPTならもしやと思ったのですが、こちらもダメでした。

どちらも「凶斬り」を固有名詞として認識しておらず、「凶」と「斬り」を別々に訳したようなものが出力されています。ローカライズの影響で英語名には「凶」の意味が含まれていないので、日本語名の意味を知らない英語話者には理解できない翻訳になってしまいます。

実際の例を見てみましょう。このポストの自動翻訳は、スマブラ用語の存在によって伝わりづらい文章になっています。

  • 「ビジョン」
    「ファルコビジョン」の英語名は"Falco Phantasm"であり、「ビジョン」に対応する単語は含まれていません。また、この技に関しては、英語では技名ではなく"side-B"とコマンドで呼ぶことが一般的です。

  • 「メテオ」
    英語で「メテオスマッシュ」は"spike"なので、日本語での呼称「メテオ」を"meteor"に直訳してしまうと通じません。

  • 「反転空後」
    翻訳では"inverted air attack"となっていますが、この場合は"turnaround back-air"と訳すのが適切です。また、英語では「その場振り向き空後」と「ダッシュ反転空後」をそれぞれ"turnaround back-air"と"RAR(reverse aerial rush)"と区別します。 

このように、スマブラや格ゲー用語、ゲーム内の単語などに関しては、日本語と英語が直訳できるようになっていることは少なく、機械翻訳はほぼ信用できないと言ってよいと思います。

3.インターネット上のコミュニケーションは翻訳しづらい

最後に、翻訳すべき会話がインターネットを通じて行われることが多い、という要因もあると考えています。

これはある種当然と言えますが、英語を含む他言語に触れる機会というのは、XのポストやYouTubeのコメント欄など、インターネット上がほとんどです。インターネットで使われる言葉遣いはカジュアルなものが多く、意味があいまいだったり、ネットスラングが使われていたりなど、翻訳しづらいといえます。

特にネットスラングはその性質上、生まれ廃れのサイクルが早く、意味が曖昧で流動的です。翻訳ソフトは事前に学習した単語や用法しか翻訳できないため、このような表現を正確に別の言語に翻訳することは不得手です。


スマブラにおける翻訳ソフト活用のコツ

スマブラにおける翻訳の難しさを要素分解したところで、ここからは実際にどうやって翻訳ソフトを使用すればいいのかを解説していきます。

1. とにかくシンプルに

翻訳ソフトに入力する文章はなるべくシンプルにしましょう。これは文章が複雑であればあるほど、機械翻訳の精度が下がっていくためです。

「具体的にシンプルって何?」という方は以下のポイントを意識してみてください。

  • 文章を短く区切る
    文章を短くすることで、一文ごとの翻訳精度が上がります。文章が長くなると、接続詞などが増えることで単語同士の関係性が不明確になったり、日英の文法構造の違いから文章の意味を保ったまま正確に翻訳することが難しくなるためです。

  • 婉曲表現を避ける
    なるべく直接的な表現を使用することで、翻訳すべき意味が明確になるほか、英語にしたときにより自然な文章になります。例えば何かを拒否するときに「ちょっと難しいです」といった遠回しな表現を避け、「できません」といったより直接的な表現を使うようにしましょう。

  • 一般的な言葉遣いを使用する
    くだけた言い回しやネットスラングなどは上手く機械翻訳できないことがあります。「草」程度なら翻訳ソフトでも正しく翻訳されるようですが、「顔ない」「厳しいって」といった最近流行り始めたネットスラングは上手く翻訳されないでしょう。また、スマブラ界隈や格ゲー界隈のみで通じる言い回し「1引く」「一本で行く」「味濃い」なども機械翻訳できないので避けましょう。また、カジュアルすぎてもダメですが、難しすぎたり、オシャレすぎる表現もNGです。「耳が痛い」「虫がいい」「焼け石に水」のような慣用表現もうまく翻訳されないことがあるので注意しましょう。考え方としては、「日本語ネイティブではない人に通じるか」という基準で考えると良いでしょう。

2. 主語と目的語を意識する

文章をシンプルに、と書きましたが、文字数が少なければよいというわけではありません。自然な日本語の文章は主語や目的語が省略されてしまうことが多いので、しつこいくらい主語や目的語を足してあげると翻訳しやすくなります。「私は」「あなたが」と毎回主語を入れるのは不自然に思うかもしれませんが、英語の文法に寄せてあげるイメージで文章を作ると翻訳の精度が段違いになるのでぜひ試してみてください。

例えばキャラ対策メモを翻訳すると仮定して、次のような文章を考えてみましょう。

「基本的に空中攻撃をガードせず、引きステップからの差し返しを狙う。」
「空上の着地狩りが強いので、崖に逃げることで拒否する。」

これに主語と目的語を足してあげるとこうなります。

自分は基本的に相手の空中攻撃をガードせず、引きステップからの差し返しを狙う。」
相手の空上の着地狩りが強いので、こちら側は崖に逃げることで相手の着地狩りを拒否する。」

例として少し極端に書きましたが、ここまで詳細に書くと翻訳ミスが減ると思います。ただ、ChatGPTなどのツールであればこの程度の省略は綺麗に翻訳してくれるので、実際はもっと複雑な文章の場合のみ主語、目的語の補完をしてあげると良いと思います。

3. 専門用語は手動で翻訳する

前述のように、スマブラ用語には機械翻訳はほぼ機能しません。そこで、スマブラ用語に関しては手動で翻訳する必要があります。

まず、翻訳したい文章の中にある専門用語を見つけておきましょう。
ここでいう「専門用語」はざっくり3種類に分けられると思います。

  • ゲームに関する固有名詞:キャラクター名、ステージ名、技名(ファルコビジョン、凶斬り、最速風神拳など)

  • システムに関する用語:コマンド(移動、各種攻撃、回避など)、崖、撃墜、台、ダメージ、体重、フレーム、硬直、無敵、など

  • 戦術に関する用語:差し込み、置き、差し返し、復帰阻止、着地狩り、崖狩り、暴れ、対空、飛び道具、透かし、ライン、判定、択、読み合い、「触る」「拒否する」「〜を狩る」、「〜に刺さる」、「〜を潰す」など

こういった単語をピックアップし、手動で調べて翻訳していきます。スマブラ関連の単語に関しては、エイゴスマッシュで解説記事シリーズを投稿しているので、ぜひこちらをご参照ください。

また、戦術に関する用語は、格ゲー用語がそのまま使用されていることが多いです。こちらのサイトに主な格ゲー用語の英語訳がリストアップされています。

他にも、なるさんのYouTubeチャンネルMichiyasuさんのNoteでもスマブラ英語を学べるので、ぜひご覧ください。

スマブラ用語の英語訳がわかった後は、その単語を自動翻訳後の文章に当てはめ、修正していきましょう。

ここで一点注意なのが、スマブラ用語にも活用がある、ということです。例えば「復帰阻止する」という意味の"Edgegurad"は動詞なので、過去形や受動態であれば"Edgeguarded"、現在進行形や動名詞であれば"Edgeguarding"、主語が三人称単数であれば" Edgeguards"といったように変化します。少し難しいかもしれませんが、できるだけ意識してみてください。完璧でなくても通じるとは思うので、気にしすぎなくとも大丈夫です。

4. 翻訳後のチェック方法

一通り翻訳が終わったのち、もし精度に不安がある場合は以下の方法で文章をチェックしてみましょう。

  • 逆翻訳を確認する
    翻訳された文章をまた日本語に戻すことによって、原文と翻訳後の文の意味が一致しているかを確認することができます。ただし専門用語に関しては逆翻訳しても意味がないので、それ以外の部分のみのチェックとなります。特に、日本語→英語の翻訳で主語や目的語が補完され、意味が変わってしまうことがよくあるので、そこに注意して読んでみると良いかと思います。

  • 別の翻訳ツールを使用する
    手間はかかりますが、複数の翻訳ツールを併用することによって、翻訳の信憑性を確かめることができます。同じ文章を翻訳させ、翻訳結果がある程度一貫していればその翻訳はおそらく正しいと判断できますし、もし違う部分があるようなら、その文章を集中的に見直すことで翻訳精度をアップさせられます。ただしとても手間がかかってしまうので、よほど精度を求める時でない限り、おすすめはしません。

  • バイリンガルに添削してもらう
    身も蓋もないと思うかもしれませんが、日本語と英語がわかるスマブラ勢に添削してもらうのが一番手っ取り早いです。長文の翻訳そのものを依頼するのはとても時間がかかるので、ある程度自力で翻訳したものを添削してもらう、という方が頼みやすいです。エイゴスマッシュでも翻訳依頼を受け付けているので、添削が必要な方はお気軽にXアカウントのDMまでご相談ください!

5. おすすめ翻訳ソフト

翻訳に使用するソフトに関しては、基本的にChatGPTでいいと思います。というか、一般的に使用されているAI翻訳ツールであればどれでもいいというのが正直なところです。

これは私がAIツールにそこまで詳しくないというのもあるかもしれませんが、そこまで難しく複雑な文章の翻訳をしようとしない限り、一般的なAI翻訳ツールの精度は申し分なく高いです。むしろスマブラに関して言うと、翻訳ツールではどうしようもない専門用語の部分をどう手動でカバーするかの方が翻訳精度への影響は大きいかと思うので、ChatGPT、Claude、Gemini、DeepLなど、使いやすいものを使用していただければと思います。

ただ、ChatGPTをはじめとした生成AIは命令文の自由度が高く、応用が効きやすいのでおすすめです。

詳しい翻訳ツールの比較についてはいろいろと記事が出ているので、興味があれば読んでみてください。


まとめ

いかかでしたか?今回はスマブラに関する文章を日本語から英語に翻訳するための翻訳ツールを使い方を解説しました。以下が今日のまとめです!

☆スマブラにおける機械翻訳の難しさ

  • 日本語は「空気を読む」ハイコンテクスト言語
    →文脈を重視するので、機械翻訳との相性が悪い

  • 専門用語が多い
    →専門用語は直訳できないことが多く、機械翻訳が機能しない

  • インターネット上のコミュニケーションがほとんど
    →カジュアルすぎる言い回しやネットスラングは翻訳しづらい

☆スマブラにおける翻訳ソフト活用のコツ

  • とにかくシンプルに
    →短い文章、直接的な表現、一般的な言い回しを使う

  • 主語と目的語を意識
    →しつこいくらいに主語と目的語を足す

  • 専門用語は手動で翻訳
    →スマブラ用語の英訳を調べて機械翻訳を修正する

  • 翻訳後のチェック
    →逆翻訳、複数ツールの併用、バイリンガルの添削

  • おすすめ翻訳ソフト
    →ChatGPTなど使いやすいものでOK

以上となります!今回の記事をきっかけにみなさんが英語を使ってコミュニケーションを取ってくれたらとても嬉しいです!

それではまた次の記事をお楽しみに!

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