(バスケ)2023.12.30_B1_川崎ブレイブサンダース×名古屋ダイヤモンドドルフィンズ@とどろき
introduction
2023年も残すところ僅かとなり、年越しが迫る中、個人的に1つだけ年内にやり残していたことがあった。Bリーグの現地観戦である。我らが名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、この12月に関東でのアウェイゲームが多く組まれており、茨城ロボッツ、横浜ビー・コルセアーズ、アルバルク東京、そして川崎ブレイブサンダースといずれもアウェイで2試合ずつ戦うスケジュールだったのだが、なかなか家庭の都合が付かず、観戦を見送ってきた。しかし年内最後のゲームとなる12/30の予定が空き、川崎とのGame2を観戦できることが決定。チケットも幸いにして1階席を確保することができた。
試合会場である川崎市とどろきアリーナの最寄りは、南武線の武蔵中原駅である。ここ近年で沿線人口が急増したこともあり、休日の日中帯でも恒常的に混雑している印象がある南武線だが、今日に関しては自分が利用した快速電車ですら空席がちらほら見えるほど。これも年末ならではの光景か。武蔵中原で下車してからは、住宅街を抜けて現地へ向かう。サッカー観戦で等々力陸上競技場へ向かうルートよりも難解であり、このルート自体久しぶりに歩くので、若干判断に迷い遠回りもしてしまったが、結果的には無事とどろきアリーナに到着することができた。
今夏に行われたFIBAワールドカップでの日本代表の活躍もあり、今季のBリーグは人気沸騰中。特にB1は早い段階で完売の出る試合が続出しており、今日のこの試合もチケットはソールドアウトだ。バスケの注目度が上がっているのは素直に嬉しいが、直前までなかなか予定が固まらない自分にとっては気軽に観に来ることのできないコンテンツとなっており、もっとお客さんを入れられるアリーナ会場が増えてほしいと思う。川崎も既に川崎駅近くの自動車学校の跡地にアリーナを新設する計画が進んでいると聞くので、オープンが今から楽しみだ。
B1の現況について整理しておきたい。我らが名古屋ダイヤモンドドルフィンズは今季も西地区の所属となっており、現在は19勝6敗で地区2位。首位を走る琉球ゴールデンキングスを2.5ゲーム差で追う状況である。一方、3位の島根スサノオマジックが1.5ゲーム差で追走しておきており、ドルフィンズとしては現在のポジションを堅持していきたいところだが、現在、チームではPGのファーストチョイスでもある齋藤が負傷のため戦列を離れており、今節もチームには帯同せず。更に今季千葉ジェッツから補強した佐藤や、負傷中の張本もチームには帯同しているがロスターからは外れている状況だ。シーズン開幕当初の怪我で負傷者リストに入っていたエサトンがやっと戻ってきたとはいえ、選手のやりくりに非常に苦しんでいるのが現状だ。
対する川崎は、ドルフィンズと並ぶ19勝6敗で現在中地区の2位。シーズンの立ち上がりは順調で、10,11月は12勝2敗という見事なスタートを切ったが、中断期間明けの12月は一転して4勝7敗と苦戦中。上位直接対決の敗戦だけでなく、下位に沈むレバンガ北海道や富山グラウジーズにも立て続けに敗れており、川崎らしくない一ヶ月となっている。とはいえ、昨日のGame1では3Qまでドルフィンズにリードを許しながらも、4Qに逆転して83-77と勝利。光明が見えつつある状況だ。今季は東芝時代からチームに在籍し、日本国籍も取得したファジーカスが現役引退を表明。川崎だけでなく、日本バスケ界にとってレジェンドのひとりといえる男のラストシーズンで、2016年のNBLファイナルシーズン以来となる王座奪還を果たしたい。
1st/2nd quarter
この試合最初のポイントはドルフィンズ。この試合最初のオフェンスでエサトンが自らのショットのリバウンドを拾ってしぶとくねじ込み、0-2とポイントを先取。幸先良い出だしかと思いきや、2-2の同点で迎えた8:14、川崎は藤井がこの試合最初のスリーポイントを決めて5-2とリード。その後は一進一退の攻防で得点を奪い合う展開となるが、ドルフィンズは5:27に坂本が早くも2つめのパーソナルファウルを取られベンチに下がる。川崎は5:17に篠山、4:32に藤井が1Qだけで3本目となるスリーポイントを成功させて13-7となり、ドルフィンズのベンチはタイムアウト。我慢のしどころだ。
15-9で迎えた3:32、ドルフィンズは外でゲームを組み立てるフランクスがマークに付かれながらも強引にスリーポイントを狙い、このタフショットが決まって15-12。これで流れが来るか?と思ったのも束の間、川崎は次のオフェンスでファジーカスがエンドワンを奪い、再び18-12と引き離す。1:23には24秒のクロックギリギリでフランクスがショットを沈めて22-16とした直後に、ファジーカスがドルフィンズコート内で待つヒースへのロングパスを通すファストブレイクを完成させて24-16。スコアが26-18と変わって迎えた終盤には川崎ベンチから先ほど(1:23)のフランクスのショットが24秒を過ぎているのではないかというリクエストがあり、ビデオ判定の結果、フランクスのポイントが取り消しに。自動的にスコアが10点差に開き、このまま26-16で1Q終了。ドルフィンズにとっては守備で川崎に揺さぶられ、得点の取り消しなどもあってポジティブ要素が少ない1Qだった。
なんとか踏ん張りたい2Q、ドルフィンズが先に仕掛ける。守備をマンツーマンからゾーンに切り替えたのだ。インサイドをスミス・エサトン・中東の3枚で固めるドルフィンズに対し、川崎は当然ながらアウトサイドからスリーポイントを狙いに行くが、これが決まらず、逆にドルフィンズは8:36に須田がこの日最初のスリーポイントを沈めて28-21。ここで川崎もすかさずタイムアウトを取ってくる。傷口が深くなる前に流れを切ろうとしてくるところはさすがの判断だが、この後も川崎の拙攻が続き、6:50には須田が2本目のスリーポイントを決めて30-25。2ポゼッション差に食い下がる。
32-25で迎えたオフィシャルタイムアウトの後は、川崎のファジーカスが魅せる。まずは4:38にこの日2本目となるヒースへのファストブレイクを決めて34-27とすると、3:31にはスリーポイントも決めて37-29。今季限りで引退するとは思えない精度の高さだ。1:39には長谷川がコーナースリーを決めて40-30となり、いよいよスコアは10点差にまで広がるが、ドルフィンズも食い下がり、エサトンがポイントを集中的に決めて42-36で2Q終了。依然として川崎が圧倒的に支配しているゲームだが、それで2ポゼッション差は決して悪くない点差だ。願わくば後半、流れを変えるきっかけが欲しい。
3rd/final quarter
そして後半、先に流れを掴んだのはホームの川崎だった。3Q最初のポイントこそドルフィンズが奪い42-38とするものの、その後のドルフィンズのスリーポイント攻勢がことごとく落ちる一方、川崎はターンオーバーからの反撃で着実に加点。7:35に藤井が難しいフェイダウェイからのロングツ―を決めて49-38となったところでドルフィンズがタイムアウト。これ以上点差を離されると相当苦しくなってくる。
川崎はインサイドを固めて中に侵入させない守備を敷き、ドルフィンズは外から様子を窺うが、川崎の守備の出足が良く、味方へのパスをカットされてターンオーバーとなる場面が頻発。そのたびに川崎が着実に加点し、どんどんスコアを引き離していく。せめて1本でもショットが入れば流れを切れるのだが、ドルフィンズのショットはまるで呪いでもかけられたのかと思うレベルで決まらない。気が付けば42-38の状況から川崎が怒涛の14-0のラン。3:57に納見のスリーポイントが決まり、56-38と18点差がついたところでドルフィンズが後半2回目のタイムアウト。もはや致し方なく、というベンチの判断だろう。試合の勝敗については、残念ながらほぼ「決まり」といって良いスコアだ。
その後も中を固める川崎に対し、ドルフィンズは菊池をコーナーに立たせて再びスリーポイント攻勢をかけるが、これも決まらず。1:40には自陣での守備で菊池の顔にファジーカスの肘が入るような形となり、菊池がコートに倒れこむ。ファジーカスの行為が故意に当たるかどうかでビデオ判定となり、ビジョンに映し出された映像に対し、ドルファミの陣取る一角から大きなアピールの声が上がる。「なんでもいいから流れを変えるきっかけがほしい」という悲痛な叫びだったが、レフェリーは故意の行為とは認定せず。結局ドルフィンズの3Qの得点は僅か6ポイントに終わり、58-42で3Q終了。
最終の4Qに入り、ドルフィンズは中東のスリーポイントなどでようやく加点できるようになったものの、巻き返すにはいかんせん点差が大きい。3Q途中からメンバーを入れ替えて戦っていた川崎は、インサイドで待つヒースにボールを集めていく。ドルフィンズとしてはオフェンスに全振りするしかないので致し方ないが、川崎はインサイドがぽっかり空いているところにボールを集めてからのイージーなショットが多く、差が埋まらない。その後も川崎が加点するたびにアリーナが大きく沸き立ち、ドルフィンズは「タコ殴り」に近い状態が続いた。結局、その後も大きく流れが変わるような出来事が起きないまま、77-55で試合終了。川崎がこのカード2連勝を飾り、年内最後のゲームを終えている。
impressions
川崎の快勝といえるゲームだった。試合全体を通じて、内容面でドルフィンズを明らかに上回っていた。ドルフィンズも前半までは粘りを見せて食い下がり、勝敗への興味を繋いではいたが、後半になって川崎が守備を見直してからは一方的なゲームとなってしまった。ドルフィンズはこれで12月は5勝7敗と負け越し。前節のアルバルク東京との対戦では、Game1を落としながらもGame2で守備を立て直して勝利しているだけに、今日もその再現を期待していたが、残念ながら期待どおりの結果とはならなかった。
川崎は試合全体を通してトランジションの早さが際立っていた。特に守備から攻撃に転じる際の切り替えは見事。ドルフィンズの守備が整うよりも早くフィニッシュまで持っていくことができていたし、その上でフィニッシュの精度も高かった。1Qでスリーポイントを3本決めた藤井や、安定してスコアを積み重ねるファジーカスを筆頭に、今日はロスター12人全員がプレータイムを確保して、そのうち10人が得点を記録。守備でも3Qにインサイドをがっちり固めつつ、バックコートでも圧力をかけてターンオーバーを何度も誘発していた。ほぼ狙いどおりに事が運んだ40分間だった。
ドルフィンズは前半は悪くなかった。前述したとおり、1Qから川崎の切り替えの早さに苦しんではいたが、ドルフィンズもある程度攻撃で持ち味を出すことはできていたし、2Qに入ってからゾーンディフェンスを採用し、まずは守備を立て直す采配に切り替えたのは的確だった。川崎のロングレンジのショットが落ちるようになってきたのを後目に、須田のスリーポイントや、エサトン、スミスのレイアップで食い下がり、それなりのスコアにまとめて前半を終えることができた。川崎のショットがそれなりに外れていたという背景はあるにせよ、セットした状態での守備がある程度運用できていたのは、この試合における数少ない収穫のひとつだと考える。
しかし後半、3Qに入ってから川崎の守備を攻略できず、攻撃が手詰まりになった。細かく観ていたわけではないが、川崎もドルフィンズに対抗してゾーンを敷いて守っていたように見えた。中を固められた以上はロングレンジのショットを狙うのは致し方ないとしても、この3Qに限ってスリーポイントの成功率0%(0/7)というのが致命的。川崎に傾いた流れを食い止めることができず、14-0のランでスコアを突き放され、全てが決してしまった。試合を通じてもスリーポイントの成功率は20.7%(6/29)と苦しんだ。ターンオーバーの数についても、川崎の「9」に対し、ドルフィンズは「22」にも上った。これでは勝利するのは難しいと言わざるを得ないだろう。
試合単体の出来以外でドルフィンズにエクスキューズがあるとするならば、やはり負傷者が多すぎることだろう。やはりゲームをコントロールすることのできる齋藤の不在は痛い。今日に関しては坂本がPGで起用されたが、実務的にはフランクスがコントロールする局面が多かったように見えた。プロ2年目でようやくまとまったプレータイムを与えられている坂本だが、1人で全てを回すにはさすがに荷が重いか。味方との連携でまだ合わない部分もある坂本ではあるが、泥臭くリバウンドを取りにいく姿勢なども含め、個人的には好きな選手。今は我慢の時期かもしれない。
個人的には、年内最後のスポーツ観戦で残念な結果に終わったが、年に最低でも1試合はドルフィンズの試合を現地で観ておきたいと考えているので、ひとまずその目標を達成することができたのは良かったと思っている。またワールドカップの影響もあってBリーグの注目度も高まっている中、その熱気を体感することができたのも良かった。もともと川崎のホームゲームはお客さんが入る方で、満員になること自体は特に驚きではないが、アリーナの盛り上がりは以前にも増して熱いものになっていたように感じた。少しばかりバスケ観戦とは疎遠になっていたが、1年の締めくくりにBリーグを選んだのは正解だった。2024年もそれほど多くは会場に足を運べないかもしれないが、競技に関係無く、良い試合をたくさん現地で観たい。