「有田屋千三郎」第3話(全23話)

シーン3 制作会社

制作会社の扉が開き、岩田が怪訝な顔で入ってくる。

熊谷
「どうでした?打ち合わせ?今日最終打ち合わせですよね?」

岩田
「んーなんか急に修正が出てきちゃって。なんか急に方針変わったみたい。コンテも結構直されちゃった。ほら」

熊谷
「あんなに頑張って書いたのに直前にひっくり返すとか、、、ひどいやつらっすね」

岩田
「いや、より良いものにするためだからね。そんなこと言ったらダメだよ。」

熊谷
「そんなもんなんですかね、、、いやでも、むちゃくちゃ真っ当な赤字ですね。てかこないだ言わなかったのはなんでだろ」

岩田
「何度もいろんな見方をしてるんじゃないかな。それでその視点が見つかったとか。もっと死ぬ気で考えろ!とかプレッシャーかけられたし」

熊谷
「パワハラですよ!パワハラ!!」

岩田
「いやいや、ハッパかけてるだけだって。よっしゃ頑張らないと」

熊谷
「そんなもんなんですかね、、、てか言われた通りに直すんですか?」

岩田
「そりゃそうでしょ。赤字入れられてるんだし」

熊谷
「明日クライアントプレゼンですよね?このまま行きませんか?」

岩田
「ちょっとちょっと何言い出すんだよ」

熊谷
「だって、この案って岩田さんが死ぬ気で考えまくった企画じゃないですか。それを今更僕でもわかるような赤字だなんて、これ試されてるんじゃないですか」

岩田
「どうゆうこと?」

熊谷
「こんな安直な赤字に屈するかどうか試してるんですよ。すんなり帰ってきて、今ごろきっと失望しているかもしれません」

岩田
「そんなバカな。」

熊谷
「そうじゃなくても、岩田さん、自信あるんですよね?これ一か八か、一世一代の勝負ですよ!やってやりましょうよ!!」

岩田
「しかしなあ、僕たち弱小制作会社だぞ、、、謙虚にやるべきじゃ、、、」

熊谷
「売れてる売れてないに引っ張られるのはもうやめませんか」

岩田
「え!」

熊谷
「岩田さん!!僕たちが売れてないのは環境のせいなんですよ!気づいてますか?それにこの仕事は、クソみたいな環境でも腐らずやってきた岩田さんの最後のチャンスでもあるんですよ!!自分で自分を信じなきゃ、ほかに誰が信じてくれるんだ!」

岩田
「そうか、そうだな!!」

シーン3B オーディション

YAZAWA役のオーディションに臨む売れない俳優有田屋千三郎。
*観客にはオーディション風景ではないと思わせる。

有田屋
「僕はそれでもいいんですよ。でもね、有田がそれを許すかな?」


第4話に続く


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