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笑って泣けるというエンタメ性ってそういうことなのか?という疑問【ファーストキス 1ST KISS(2月7日公開)】
2月7日公開予定、塚原あゆ子監督「ファーストキス 1ST KISS」を試写で鑑賞。
結婚して15年、冷え切った関係の相手との結婚生活を終えようとしていた矢先、夫を事故で亡くした妻。彼女が偶然にも、二人が出会った日へとタイムトラベルする方法を見つけ、なんとかして未来の夫の死を回避しようとする姿を描くラブストーリー。
数日前に慌てて予習した塚原監督作品「コーヒーが冷めないうちに」に続き、奇しくもまたもやタイムスリップもの。
「恋はデジャ・ブ」形式(主人公が過去の一日をやり直し、正しい行いをするまでタイムループを繰り返すもの)という手垢のついた設定だが、本作はこれに新しいひねりを加えている。
それは、主人公のモチベーションが関係の冷え切った結婚15年目の相手の命を救うためにあるという点。
自らがタイムループを抜けるためや、愛する誰かの命を救うために主人公が何度も過去をやり直す、という作品は映画史上、枚挙にいとまがないが、もはや愛してるかもわからず、離婚届を役所に出す寸前に命を落とした相手を救うために過去に戻っている内に、失っていた相手への愛を取り戻していくという設定が面白い。
おそらくこの映画のメインターゲット層は既婚者、特に女性だと思うが、映画前半は「あの頃の私たちは初々しく愛し合っていたのに…」という多くの既婚女性が抱えるあるあるをくすぐり、観客の「もう一度、あの頃のドキドキを…」という純粋な要求に無邪気に答えるラブコメディタッチで進む。
この「関係の冷え切った結婚相手との生活」、そして「あの頃のドキドキ」という部分で、脚本担当の坂元裕二が「花束みたいな恋をした」で発揮した繊細なあるある描写も活きてくる。
ただ、この繊細すぎるほどの脚本描写が、先の「コーヒーが冷めないうちに」の感想でも書いた、塚原監督の大味な演出と役者の演技スタイルにうまく噛み合っておらず、序盤からところどころで没入感が削がれてしまう。
塚原監督作を2本見て感じたことだが、監督はドラマチックに見せたいシーンになるとスローモーションを多用して誤魔化す手癖があるように見える。
作品のテーマとしては十分納得でき、終盤に主人公が至る結論と過度な演出をなくしたラストシーンには胸を打つものもあったが、「笑って泣ける」のようなエンタメ性を意識しすぎた作りにより、要所要所で白けるような演出のコメディシーンが挟み込まれるのは、個人的なマイナスポイント。
友情出演のように挟み込まれる著名人タレントのちょい役起用(特にYOUはYOUそのものだった)も、気が散るだけで誰も得をしてないのではないか。
そういえばネタバレになるので書けないが、映画の結末に関して「こういう結末の方がもっと感動するだろ!」というものを勝手に思いついたので、ネタバレ解禁後どこかで喋りたくて仕方がない。