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ベテランスタントマンと愛馬と愛娘の物語 『ライド・オン』

5月31日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 ルオ・ジーロンは命がけのアクションで数多くの映画を彩ってきたベテランのスタントマン。だが最近は一線を退き、撮影所の観光コースでエキストラスッフのアルバイトをする日々。相棒は生まれた時から世話をしてきた馬のチートゥ。返済の滞る借金のカタに馬を寄こせという者もいるが、ルオは決してチートゥを手放そうとしない。

 だが問題が発生する。チートゥの最初の持ち主だった企業経営者の会社が買収され、買収先企業の弁護士が、チートゥを会社資産として引き渡せと命じてきたのだ。ルオは法律に暗く、書類を見ても何が何だかさっぱりわからない。弁護士の助けが必要だ。だが弁護士を雇う金がない。

 ルオは長年疎遠になっていた娘のシャオバオを頼る。彼女は大学で法律を学ぶ学生で、ルオよりずっと法律に詳しい。恋人のルーは新米の弁護士だ。最初は父を冷たくあしらったシャオバオだが、ルオの自分への変わらぬ愛情を知って助けることを決意する。

■感想・レビュー

 ジャッキー・チェンの主演最新作だが、映画としてのデキは正直あまり良くないと思う。物語の軸が何かわからないまま方向が二転三転し、着地点は一応ハッピーエンドだが、それまでの蛇行運転が響いてカタルシスには乏しい。

 本作にはいくつもの物語が埋め込まれている。仕事人間だったことから離婚し、子供と疎遠になっていた男が、子供と和解する話。生まれたときから世話してきた馬を取り上げられそうになった男が、裁判で馬を取り戻す話。怪我で引退して借金まみれになったベテランスタントマンが、大作映画の主演に抜擢されて再起する話。しかしこうした話にあれこれ目移りしたあげく、映画は散漫に空中分解していく。

 二兎を追う者は一兎をも得ずや、アブハチ取らずということわざがある。この映画はまさにそれだ。二兎どころか三兎も四兎も追いかけて息切れし、アブハチのついでにトンボやバッタまで取ろうと大騒ぎして、結果は獲物ゼロだったような話。行き当たりばったりにエピソードをつないでいくからこうなる。昔の香港映画には時々こういうものがあったが、それを久しぶりに見せられた気分だ。

 主人公ルオのキャラクターを一言でいえば、成功しなかったジャッキー・チェンだ。体当たりのアクションで数多くの映画に出演していたが(出演作の中にはジャッキーの代表作が多数含まれているのだ)、仕事が忙しすぎて家庭は破綻し、子供とは疎遠に。撮影中の大ケガで長期入院を余儀なくされ、会社は潰れて借金まみれになる。

 アクション俳優としてのジャッキーも、何度か大ケガをして引退を覚悟したことがあるだろうし、家庭が二の次になって息子のジェイシー・チャンは父親より母親に懐くようになった。ルオ・ジーロンはジャッキー・チェンの形を変えた自画像だろうし、映画を観る人もそれがわかった上で映画を観ている。

 現実と映画の虚実皮膜。しかし映画としては、やはり面白くないと思うのだよな……。

(原題:龍馬精神 Ride On)

ユナイテッド・シネマ豊洲(スクリーン11)にて 
配給:ツイン 
2023年|2時間6分|中国|カラー 
公式HP:https://ride-on-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt15430628/

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