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荒唐無稽で奇想天外なSFコメディ 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』

7月26日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 2020年。世界的なコロナ禍の中、日本では総理大臣以下閣僚たちが大量感染死。この未曾有の危機を救うため、日本は最新テクノロジーを駆使して歴史上の異人たちを蘇らせ、前代未聞の「偉人内閣」に1年限定の政権運営を託した。

 総理大臣は徳川家康。財務大臣は豊臣秀吉。経済産業大臣に織田信長。この三英傑に加えて、マスコミとのパイプ役である内閣官房長官に坂本龍馬。外務大臣に足利義満。法務大臣が聖徳太子。文部科学大臣に紫式部。総務大臣に北条政子。江戸幕府からは五代将軍の綱吉が厚生労働大臣、八代将軍吉宗が農林水産大臣として入閣した。他にも財務副大臣に石田三成、警備隊指揮官に土方歳三、ワクチン開発担当に緒方洪庵など、時代を超越した超豪華な顔ぶれだ。

 最初は色物扱いされていた偉人内閣だったが、その実績とカリスマ性からみるみるうちに支持率を上げていく。テレビ局政治部記者の西村理沙は、内閣を取材していたのだが……。

■感想・レビュー

 眞邊明人による同名SF小説を、『翔んで埼玉』シリーズ(2019、2023)の徳永 友一脚本と武内英樹監督のコンビで映画化。ヌルくてユルい部分は多々あれど、アイデアの奇抜さとストーリーの奇想天外さに、最後まで面白く観られる映画に仕上がっていると思う。

 最後の着地点は多少説教くさくいが、わかりやすい落とし所だろう。ストーリー自体はハチャメチャなので、最後はこのぐらい白々しく、お行儀の良い決着にした方が、映画全体のまとまりが良くなる。もちろん最後までハチャメチャなまま振り切ってしまう方法もあるのだろうが、残念ながらこの映画にそこまでの勢いはない。熱くないのだ。あくまでも生ぬるい。

 映画の良かった点は、これが現代日本の文明批評・文化批評になっていることだろう。政治に文句を言うくせに、自分からは何も提案しない野党的な態度。強権的なリーダーシップを発揮されると、それに心酔して批判精神を失ってしまう与党礼賛な態度。この二つの立場を容易に移動して恥じないのが、小籔千豊が演じる情報バラエティー番組の司会者。一方、人々の生死に直結する政治の問題を、コンテンツとして他人事のように消費していくマスコミの態度を、梶原善扮するテレビ局員が象徴しているのだ。

 しかしこの映画、いかにも軽すぎるし安っぽすぎる。同じ内容でも、もう少し細部にこだわるだけで、よりリアルで社会風刺としても毒の強いものになっただろうに。

 例えば新型コロナのパンデミック期に、世の中で何が起きていたのか? この映画ではマスク不足の騒動は描かれても、登場人物たちはほとんど誰もマスクをしていない。テレビでさんざん見たソーシャルディスタンスも、リモート出演も出てこない。あちこちに設置されたアクリル板の衝立てや、ビニル製の仕切りも出てこない。こうした現実世界を描くことができれば、3DCGで作られた偉人たちの特殊性が引き立ったと思うのだけれど。

ユナイテッド・シネマ豊洲(3スクリーン)にて 
配給:東宝 
2024年|1時間50分|日本|カラー 
公式HP:https://moshi-toku.toho.co.jp/
IMDb:https://m.imdb.com/title/tt33048502/

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