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主演俳優が実際に50キロ減量して役作り 『YOLO 百元の恋』

7月5日(金)公開 丸の内TOEI、新宿バルト9ほか全国ロードショー

■あらすじ

 せっかく大学を卒業したのに、働きもせず実家に引きこもっている32歳のドゥ・ローイン。親が甘やかしてそれを放置してきた結果でもあるのだが、妹が離婚して出戻ってきたことから、家族からの風当たりが強くなる。

 妹と衝突して家を飛び出したローインは安アパートを借り、近くの飲食店で働き始める。そんな中で知り合ったのが、ボクシングジムのインストラクターをしているハオ・クン。彼はジムの新会員募集ノルマのためローインに声をかけ、ローインはボクシングに情熱を傾ける彼に近づくために入会を決めた。

 いつしか男女の仲になってしまうローインとハオ・クン。だが久しぶりの試合で彼が八百長を請け負ったことをローインは知り、試合に負けたハオ・クンはジムを辞めた。

 何もかも失ったローインはジムに残り、会長に向かって「試合に出たい」と宣言。ボクシング選手のライセンスを取得するため、死にもの狂いのトレーニングがスタートする……。

■感想・レビュー

 2014年の日本映画『百円の恋』の中国版リメイクだが、物語の筋立てをそっくりそのまま借りながら、よりコミカルな方向に物語を引っ張って拡張している。監督・主演は中国の人気タレント、ジア・リン。

 日本版では安藤サクラが自堕落にたるみきった身体から引き締まったボクサー体型に変身して観客を驚かせたが、驚きの度合いならこのリメイク版はオリジナル版を凌駕している。もともと80キロ超えのポッチャリ体型だったジア・リンが、役作りのためまず20キロの増量。そこから物語の展開に合わせて50キロ減量し、腹筋の割れた筋肉質のボクサー体型に変身したのだ。

 同レベルの変身をハリウッド映画なら特殊メイクで行うところだが、それをトリック抜きで本当に減量して見せたのがすごい。減量の推移は映画のエンドタイトルに克明に紹介されているが、こうした本物の減量体験が、映画に異様な迫力を生み出していると思う。(ただしボクシング選手の養成として、この減量に現実味があるかどうかはまた別の話だと思うのだが……。)

 日本版との最大の違いは、主人公のドゥ・ローインをはじめ、登場人物たちの特徴がより個性たっぷりに、鮮明に描かれていることだと思う。日本版はどの人物たちももっと曖昧に描かれていて、それが人物造形のリアリティになっていたのだが、中国ではもっと明快な人物造形が好まれるのか、それともコメディよりに演出し直した結果なのか、どの人物も造形の輪郭が明瞭なのだ。

 この個性的な人物の中で、一番煮え切らない態度を取っているのが主人公のローイン。それがどん詰まりまで追い詰められて、ひたむきにボクシングに打ち込む輪郭明快なヒロインに生まれ変わるのだ。

 映画終盤の試合シーンは壮絶で感動的。あれほど努力して必死に練習を積み重ねたのに、試合になるとその成果がまったく発揮できないまま打たれっぱなしになる残酷な現実。それでも映画のラストは爽やかだ。

(原題:熱辣滾燙 Yolo)

丸の内TOEI 2にて 
配給:東映ビデオ 
2024年|2時間9分|中国|カラー 
公式HP:https://yolo100gennokoi.com/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt28151876/

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