ゴジラ-1.0 / GODZILLA MINUS ONE(2023年11月3日劇場公開)
『ゴジラ』の第1作目が公開されたのが1954年11月3日。それから69年後にゴジラ七〇周年記念作品として公開。
本作のゴジラの造形、演出に関しては楽しめました。特に泳ぐゴジラはメガロドンを超える映画的恐怖に満ちていてそれらの場面には満足です。
ただ問題だと思うのが、感動創出の装置として用意された元特攻隊員、敷島浩一(神木隆之介)の物語です。
その物語には終戦直前に大戸島で出会った海軍航空隊の整備士の橘宗作(青木崇高)が関わってきます。指摘したいのは”特攻”の美化という批判に対する山崎貴監督の煮え切らなさです。
敷島は以下のトラウマを抱えていることが、劇中はっきりと表現されます:
ー特攻から逃げて来たことに対する後ろめたさ
ー大戸島で機関砲を打てなかったため、多くの整備士を死なせてしまった責任
ー東京が焼け野原になったことの責任
それらのトラウマにより毎晩ゴジラの出てくる悪夢に苛まれる人生に決着をつけようとしてある作戦を利用して”特攻”を試みるという物語の展開になるのです。そこまでは感動のお膳立てとしてはまあいいと思います。
かなり強引なやり方で橘を引っ張り出してきて、観客にはわからないように脱出装置を仕込むところが示唆され、さあ作戦実行段階で”特攻”は成功し、”脱出”も成功するという大変都合のいい結末を迎えるのを観て、結局敷島のトラウマは何にも解決されていないと思いました。
山崎貴監督はそんなトラウマの後引きを描くこともなく、さらに都合のいい大石典子(浜辺美波)を巡る後出しジャンケンが描かれて、ゴジラについてもホラー映画的なオチがつくという批判されて然るべきストーリー展開でした。
あと、IMAXですがイマーシヴになることもなくいわゆる額縁上映(黒い部分が額縁のようにスクリーンに残る)でした。念の為。