見出し画像

藤子・F・不二雄先生、生誕90年記念に、『T・Pぼん』アニメ化スタート。2024年にNetflixにて2シーズンが配信!

N EWS
藤子・F・不二雄といえば国民漫画として、没後も今も新作が作られる『ドラえもん』の作者として揺るぎない人気を誇っているが、生誕90年となる2023年、様々な企画が世に出て、新たなる評価を得ている。
『SFマガジン』では、藤子・F・不二雄のSF短編を特集し、あの恐怖SF『ヒョンヒョロ』を再録、『男の隠れ家』でも藤子特集を組み、『ひとりぼっちの宇宙戦争』を再録している。
 またNHKではSF短編の中からチョイスされた原作を元にした実写ドラマを放映した。藤子短編黄金時代の傑作にして、冒頭から血飛沫が飛ぶ『流血鬼』(リチャード・マシスンの『地球最後の男』を大胆に脚色)を前後編でオンエアし、藤子フリークを驚かせた。
 そして生誕90年最大の目玉が告知された。藤子・F・不二雄のSF長編の3本柱の一つ『TPぼん』が2シーズン、2024年にNetflixから配信されるのだ。これは大変なことだ。

『TPぼん』は『未知との遭遇』、そして1年間待たされた『スター・ウォーズ』公開で一気に熱を帯びたSFブームの影響もあり、1978年に『少年ワールド』で14話を、その後版元を変えて『コミックトム」で21話が1986年まで連載された。平凡な中学生の波平凡(ぼん)が事故で友人を団地の窓から突き飛ばして殺してしまう(このコマで飛び散る血の生々しさ!)。愕然とするぼんの前に不思議な乗り物に乗った少女が現れ、時間を巻き戻して、友人は落下死することもなく、いつもの通りだ。
 この異常事態に混乱するぼんに対して救世主となった少女リーム・ストリームは自分がタイム・パトロールとして戦争や災厄で命を落とした「その後も歴史に影響を与えない人を助けている」と自己紹介し、この組織の存在を知ったぼんを「消す」という。ぼんの両親が結婚しなければ、この世にぼんという存在はなかったことになるのだ。この発想、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』より6年早い。抵抗するぼんは、実は自分が生きていないと歴史が変わってしまう存在であることが判明し、リームのもとで見習いタイム・パトロールとして時空を超えた冒険に飛び出していくというストーリー。
 藤子・F・不二雄は『ドラえもん』はじめ時間改変SFを得意とするが、『TPぼん』ではその後の歴史に影響を与えない人しか救えないというシリアスな設定が効いている。『少年ワールド』連載時の「戦場の美少女」では沖縄激戦の中、特攻隊でたった1人しか救えないという戦争の残酷を描いた。ぼんがリームとチームを組む『少年ワールド』編で2人は未来に飛ばされ、そこで謎の失踪を遂げた作家アンブローズ・ピアースと遭遇する。この危険なミッションをクリアしたぼんは一人前のタイム・パトロールとして、通り魔事件で殺された少女・安川ユミ子を救出。その際にユミ子に正体を知られてしまい、彼女を見習いとして雇う羽目になる。
『コミックトム』で連載されたユミ子編では源平合戦で海に身を投げる平家一族(の一部)や脱走奴隷を救うといった活躍があり、後期最高傑作「十字軍の少年騎士」もここで描かれる。
 藤子・F・不二雄のSF魂と世界史の知識(人の命を救うのだから、戦争や魔女狩りといったマス・ヒステリア、そして古代文明への注目)が見事に合致した『TPぼん』は今も熱心な読者を獲得しており、そうした意味でも今回のNetflixでのアニメ化の企画はレベルが高いものになったと思う。現時点で発表されているのは、監督に安藤真裕、音楽に大島ミチル、声の出演でぼんは若山晃久、リームは種崎敦美が担当する。アニメーション制作は『交響詩エウレカセブン』などを手がけてきたボンズがこれあたる。
 2シーズンを配信するとも説明されているが、全話を作品化するとなると『少年ワールド』でのタイムパトロール見習い編でいっぱいになってしまう可能性がある。『コミックトム』連載分までをアニメ化するとすれば、場合によってはエピソードの選択がされるかもしれない。この点、注目すべき点になる。藤子ファンとしては全エピソードのアニメ化(これを現在配信中の『ワンピース』のような実写でやるとするとCGをいくら注ぎ込んでも破格な製作費がかかってしまう)を望むところなのだが、果たしてどう出るか。2024年のNetflixの動向に注目したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?