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【振り飛車殺し】(桜花式)爆撃向かい飛車【新戦法】



はじめに

振り飛車対策の、振り飛車戦法

「居飛車(主に雁木)を使いたいけど、角道を止めてから振り飛車にされると困る」
「振り飛車を使ってるけど、相振りでの戦い方が難しい」


こんな方も、結構いるのではないだろうか?
私自身も雁木使いなのだが、振り飛車対策に困っていた。

そこで編み出した戦法が、「爆撃向かい飛車」である。
現状、私以外でこの作戦・陣形を組んでいる方はいないので、「桜花式向かい飛車」と呼んでいただいても構わない。(ってか、そう呼ばれたいなー)

雁木模様に組んだ際に、相手が飛車を振ってきた場面で、AI(水匠)がどんな指し回しをするのか。
その候補手が毎回、3つぐらい提示されるが、その中で最も分かりやすく、アグレッシブな手を選択し続けた戦法である。

AIの最善・次善手の組み合わせで作っているので、アグレッシブな戦法ながら、無理攻めにならないのが大きなポイント。
現状はまだ整備中だが、より研究が進めば高段位帯でも通用するのではないだろうか。
もっとも、現状でも相当強いので、級位者の方にもオススメできる戦法だ。



AI評価値の暴力で攻め倒す

こちらの香交換に応じただけで、既に評価値が+660ある。

早速だが、上の画像を見てほしい。
相手はごく普通の四間飛車であり、駒組みに不審な点は無い。
それなのに、こちらの香交換に応じただけで大損してしまう。
評価値+660といえば、桂を一枚ボロ儲けしたぐらいの形勢である。

こちらの▲95角に対して、△91香→△98香成というカウンターがチラつくが、これが大悪手になるのも驚愕の点だ。

いかにも良さそうな△98香成には、▲99歩のカウンターがある。
形勢は必勝クラス。(評価値+1150)
その後、相手が奪った桂で逆襲してきても、ガン無視して香をベタに並べる。
玉頭攻めが速い。
(評価値+1600)

この戦法では、香の価値が非常に高いのだ。
△98香成と飛び込むのは、こちらに香を渡す自殺手になってしまう。
玉頭に駒を足す、POWER!!プレイが狙いで、「(玉頭)爆撃向かい飛車」という名前の由来である。
【定期】玉頭爆撃!!

▲95角には、△94歩と追い返すのが最善だが、これでは消極的で苦しい。

△94歩▲77角とした後は、▲86香と設置した後、銀を上がって継ぎ歩攻めをするのが良いだろう。(評価値+1240)
相手の△19角成は、完全に無視して良い。
▲65歩として、角交換を迫る手もあり、これからの発展に期待である。

いずれにせよ、相手はこちらの香交換を受けてはいけないのだ。
△93歩とするのが最善だが、それでも評価値は+330を保っている。

最善に受けても、相手の劣勢は変わらない。(評価値+330)
今度は、相手が打った93の歩を狙って、桂を跳ねる。
攻撃の手を緩めない。(評価値+310)
相手の端を食い破り、香と桂を入手する。(評価値+750)
道中で評価値を損ねるが、プラスであることに変わりはない。(+100点ぐらい)
ここでは、攻めの分かりやすさを優先している。
局面が進めば、結局は元の評価値に戻る。
こちらの狙いを分かりやすくするため、相手の攻めを少し緩めている。
香と桂を奪った後は、▲86香→▲75桂で、玉頭を爆撃する。
この時点で、既に評価値は+1700を超えており、勝勢だ。
実戦では、相手の攻めをいなしながら、これを間に合わせる。

従来の対振り向かい飛車と違い、香と桂の軽い攻めで数押しするのが特徴だ。
銀と角が出遅れているように見えるが、銀は四枚美濃として防御に働いている。
角は、頃合いを見て、▲95角と覗いて使う。
駒が遊んでいるように見えて、実は遊んでいないのだ。




具体的な戦い方

実戦譜を参照する

戦法の流れを解説するには、やはり実戦譜を用いるのが良い。
どんな駒組みをして、どのタイミングで仕掛けるか。
どの振り飛車相手でも使える戦法なので、汎用性という面でも優秀だ。
この戦法では、相手の囲いの頭上を吹き飛ばすため、どこに相手の飛車が居ようが、全く関係ない。

これから、私の実戦譜を見せていく。
「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」の恐ろしさを、目の当たりにすることになるだろう。



怪しげな端歩

このタイミングで、左端の歩を突く。
相振り飛車が確定する前なので、受けるのが普通である。
右端の歩を突いたのは、私のプレミ。
戦法を開拓したてで、まだ慣れていなかった。

以下、後手番の符号で解説する。
こちらの手を▲、相手の手を△として表す
ので、混乱しないように。
AI解析画面では、先手番の符号の方が見やすく、評価値がプラスで表示されるため、このような書き方にする。
(後手番にすると、評価値マイナスが優勢を意味するため、ややこしくなる)


相手が振り飛車にした(しそうになった)ら、早々に▲96歩と突く。
▲88飛を決める前に突くことで、「相振り飛車なら端歩を受けない」という相手にも、端歩を受けさせられる。
端の位を取られて居飛車にされたら、囲いの差が響いてしまうからだ。

これにより、▲95歩の仕掛けがスピードアップする。
相手が居飛車だったとしても、雁木に組めば、この端歩は手損にならない。
ちなみに、端歩を放置されても、▲96歩→▲95歩→▲97桂→▲85桂→▲93桂成で、強引に端を突破する。
ただ、手損になるので、できれば端歩を受けてほしいのだ。



相手が飛車を振ってきたら、正体を現す

相手が飛車を振ってきたタイミングで、向かい飛車に組む。
先に▲86歩を突いてしまったのは、こちらのプレミ。

相手に居飛車をやられると、面倒なことになる。
向かい飛車にする理由は、AIが推奨するからである。
AIの狙いも玉頭攻めであり、「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」は、それに沿った戦法だ。

向かい飛車にする理由は、なにも私が好きだからではない。
相手が振り飛車にした時、AIは向かい飛車を推奨してくるのだ。
これは、相手が四間飛車でも三間飛車でも変わらない。

その目的は玉頭攻めであり、この後にAI同士で対戦させると、端を絡めた玉頭攻めをする。
驚くことに、盤面編集で三間飛車などを強要した相手側も、向かい飛車に振り直したことがあった。(何度か対戦させた)

今後のトレンドは分からないが、「相振りにするなら、向かい飛車に振る」というセオリーが誕生するかもしれない。
「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」は、こうしたAIの傾向をもとに、振り飛車を咎めるのを目的とした戦法だ。



囲いは、39玉型の美濃囲い

飛車を振ったら、金無双ではなく美濃に組む。
玉は28まで行かず、39に留まる。
手拍子で▲38玉としてしまうと、囲えなくなるので注意。
AIの最善手では、まだ囲わないらしい。
ただ、いずれは▲38銀として囲うことになる。
39まで玉を囲ったら、攻めの準備を始めている。
玉を28まで囲う手は推奨していない。

相振り飛車の時は、金無双の囲いも有力だと言われているが、「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」では美濃囲いに組む。
39に玉がいるのがポイントで、相手の玉頭攻めから遠ざかりつつ、△55角からのコビン攻めのラインからも逸れている。

この形が妙に硬く、攻め合いになった時に一手勝ちできるケースが多い。
玉が遠い囲いは想像以上に寄りづらく、相手の攻めを二手ほど遅らせられる。
終盤の二手は非常に大きく、勝率を大きく向上させられる。



何気ない飛車先交換が、開戦の合図

一見すると、ただの飛車先交換。
相手の△45銀→△56歩の方が速そうだが、果たしてそうだろうか?
△83歩に対して、▲87飛と引くのがポイント。
AI的には、86・87・88のどこでも良いらしいが、その中で最も攻撃的なのが▲87飛だった。
相手の△45銀に対して、こちらから▲95歩と先攻する。
流石に、▲94歩と取り込まれる訳にはいかず、こちらが主導権を握った。
AIでの解析結果。(評価値+490)
やはり、この時点で優勢になっていた。
普通に駒組みしているだけで劣勢になるのでは、相手は振り飛車を使う甲斐がない。

角も銀も使えてないが、ここで飛車先を交換するのが開戦の合図。
相手の△83歩に対して、▲87飛と引くのがポイント。
この地点に引くことで、最も攻撃的な布陣を築けるのだ。

AI的には、86・87・88のどこでも良いらしいが、▲86飛では端角が使えなくなり、▲95歩の仕掛けが消えてしまう。
▲88飛は手堅い手だが、将来的に角でいじめられる展開になりやすく、強い戦いに踏み込みづらい。
▲87飛と引いた位置が絶妙に狙われにくく、反動を恐れずに攻めることができる。

飛車先を交換したら、即座に端歩を突いて戦いを始める。
こちらの攻めは遅そうに見えて、想像以上に速いのだ。



香交換を拒否されても、強行突破する

こちらの攻めの香と、相手の守りの香が交換になってはいけない。
相手は△93歩で香交換を拒否するが、「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」はそれを許さない。
▲97桂→▲85桂と跳ねて、相手が打った93の歩を狙い撃つ。
相手は中央への殺到に期待しているが、41の金が浮いており、強い戦いができない。
相手陣は43の地点がガラ空きなので、△42金は仕方のない手。
ここで桂を雑に捨てて、攻撃開始。
端の枚数は足りていないが、構わず食いちぎっていく。
GO MOVE!!!

従来の対振り向かい飛車では、66に角を据えて端を攻めるのだが、
角が相手の銀にいじめられやすいため、強い戦いに踏み込めない。
「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」では、角を銀で守りつつ、低く構えて端を爆撃する。
AIでの解析結果。(評価値+660)
AIは桂を雑に捨てる傾向にあり、こうした手が肯定されやすい。
低く構えて、桂を犠牲に敵陣を荒らすのは、現代調の指し回しである。
相手の桂を引きずり出して、▲94歩で仕留める。
これで駒損を回復し、攻めの香桂を捌き切った。

相当な無理攻めに見えるが、AIに評価される立派な端攻めだ。
気付けば、こちらの攻めの香桂が、相手の守りの香桂と交換になっている。
この交換は当然ながら、こちらにとって有利である。

とはいえ、相手も△92歩と打って、控えの歩で攻めを押さえ込んだ。
これで一息つければ、△56歩からの攻めが楽しみ…なのだが。



第二の爆撃タイム

▲86香と打って、露骨に玉頭を狙う。
△84香と打つのは、▲85歩と打って香を捕獲できる。
△94桂・△74桂と打つのは、▲85香と上がっておいて、次に歩で桂を捕獲できる。
相手は、この香打ちが意外と受からない。
相手は、たまらず△91桂と受けてきた。
こちらは手を緩めることなく、▲75桂と駒を足して、強引に突破を狙う。
相手は、ようやく念願の△56歩を実現できた。
39の地点に馬ができたが、87に居る飛車には当たらない。
もし、序盤に▲88飛と引いていたら、こうはならなかった。
▲87飛と引くことで、角でいじめられる展開を予防している。

馬を成った手が空成りに過ぎないので、ここで▲83桂成を決行。
「お手を拝借!!」

また数が足りていないが、相手の足した駒が桂なのを見越している。
玉頭をいきなり爆撃して、相手の陣形は崩壊寸前だ。
全清算して、▲84歩と打った手が厳しい。
△71桂と受けても、▲83歩成△同桂▲84歩として、おかわりが効く。
△72金と受けるのは、▲61銀で意味がない。
桂は受け駒として適しておらず、こうなると収拾がつかない。

9筋の爆撃が終わったら、今度は▲86香→▲75桂からの8筋爆撃が待っている。
執拗に83の地点を狙って、延々とおかわりを繰り返せば、徐々に受けが無くなっていく。
最終的に、相手は玉を早逃げさせるしかないが…



突如として現れる刺客

相手は、△72玉から早逃げしてきた。
ここで、眠っていた角が動き出す。
いきなり馬を作る手を見せられて、一気に玉の寿命が縮まった。
相手は馬で飛車に当ててきたが、もうそんな時間ではない。
と金を押し売りして、王手飛車に持ち込んだ。
これを逃げていては、▲83飛成で敗勢。
相手はと金を取って、下駄を預けてきた。
これは、▲83飛成△54玉(64玉)▲65銀で即詰み。
…相手は、成す術もない。

玉が早逃げしそうになったら、すかさず▲95角と覗く。
竜だけでなく馬まで作れば、寄せあぐねる心配は無い。
終盤力に自信が無くても、安心である。

こちらは竜・角・銀・桂の4枚の攻めで、切れることは無い。
自陣も四枚美濃が硬く、しばらくは寄らない。
「硬い、攻めてる、切れない」という、将棋の必勝態勢を築くことができた。




「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」の長所

AI評価値に裏打ちされた、安心の性能

一見すると無理攻めだが、立派に攻めとして成り立っている。
感覚的には、「へなちょこ急戦」に近い印象だ。
「玉頭を攻める」という行為は想像以上に強く、軽い攻めでも大打撃を負わせることができる。

角も銀も進出せずに、いきなり端から香桂だけで突っ込んでいくのは、革命的な戦法なのではないだろうか。
まだ未整備の部分も多いが、振り飛車にとって脅威に成り得る、ポテンシャルを感じる戦法だ。



序盤・中盤・終盤の全てが簡単

これが非常に大きく、初心者でも指しこなしやすい。
というのも、相手がどこに飛車を振ろうが、やることが変わらないのだ。
以下、やることを順番に載せる。


①相手が振り飛車にしたのを確認したら、左の端歩を早々に突く(1つだけ)
向かい飛車に振って、飛車先を伸ばす
③玉を右に囲って、39玉型の美濃囲いに組む (右の端歩は突かない)
飛車先を交換して、飛車を87の地点に引く

⑤▲95歩と突いて、香交換を迫る
もし、相手が香交換を受けてきたら、▲86香と設置して、▲75歩→▲76銀→▲84歩→▲85歩の継ぎ歩から、棒銀で攻める
(相手が香交換を受けるのは悪手で、評価値+600の優勢になる)

⑥相手は香交換を拒否して、△93歩と受けてくるのが最善。
その場合、▲97桂→▲85桂→▲93桂成で端を食い破る
⑦端のやりとりが終わり、香と桂を入手したら、▲86香→▲75桂と設置する
※順序が逆だと、桂を歩で取られるので注意
83の地点に殺到して、一気に食い破る
⑨相手が玉を早逃げしてきたら、▲95角と覗いて、馬を作りに行く
これで、飛車・角・銀+桂(が取れるはず)の4枚以上の攻めになり、切れる心配がなくなる
⑩ここまで来れば、「硬い・攻めてる・切れない」の三大原則を満たし、必勝態勢になる(後は、普通に寄せるだけ)


ここまで見て分かると思うが、相手の手による分岐が「香交換を受けるかどうか」ぐらいしか無い。
つまり、この手順を丸暗記するだけでも、結構勝てるということだ。
それで勝てなかったら、己のPOWER(棋力)が足りなかった証。
初心者でも指しやすい戦法なので、級位者にもオススメできる。



急戦なのに、玉が硬い

今まで、振り飛車対策は居飛車で行われていた。
それが当たり前だったが、冷静に考えれば、わざわざ居飛車に拘る義理は無い。
振り飛車対策を、振り飛車でやっても、何の問題もないのだ。
相手が振り飛車にしてきた時だけ、自分も振れば、居飛車党でも使える。

そして、振り飛車には「美濃囲い」という、コンパクトで硬い囲いがある。
急戦では、素早く囲って攻めることが肝要だが、美濃囲いはそれにピッタリなのだ。
同じ手数でも、舟囲いと美濃囲いでは、硬さが段違いである。
そのため、攻めまくった反動を気にすることなく、存分に攻めることができる。




「爆撃向かい飛車(桜花式向かい飛車)」のまとめ

新戦法デビューなるか

いかがだっただろうか。
私は既に何度か使っており、勝てる時は徹底的に潰せる戦法なのが分かっている。
ただ、軽い攻めではあるので、食い止められるとジリ貧になってしまう。

場合によっては、▲65歩と角道を空ける手もあるようなので(AI曰く)、そこら辺も組み合わせると、さらに強い戦法になるかもしれない。
これからの発展が楽しみだ。


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